第64話 6枚切りの「関西のおばちゃん」こと、フォーションのおばちゃん
文字数 1,395文字
今日何時もの百貨店にお弁当と食パンを買いに行った処、パン屋さんで関西弁が聴こえて来たのである。
「あんたこんな薄うに切ったん買うたん。
これ8枚切りやないのん?
せめて6枚切りにせんと。
子供等にこんな薄いのん食べさされへんでしょう」、と。
今日は昨日と違って20代の関西女子ではなく、恐らく60代後半から~70代の自他ともに認める「関西のおばちゃん」である。
孫と嫁を連れているらしく、何か他の買い物をしていた「関西のおばちゃん」が、嫁に食パンのスライスのオーダーを任せたらしい。
こうしたトラブルは良く有る話なのだ。
ご存知の方もいらっしゃるかと思うが関西では食パンを5〜6枚切りするのが主流で、関東で主流の8枚切りは薄過ぎると言う事になる。
別の角度からその事について述べると、関西では特に女性に於いては食パンを1食1枚食べるのが主流で、関東みたいに8枚切りの食パンを2枚食べると言う感覚が無いのだ。
まぁ、良く良く考えてみると、関西の方が少食と言う事になる。
何となれば8分の2枚(4分の1)>6分の1枚なのだから。
と、言う事で、その「関西のおばちゃん」は食パン=5〜6枚切であり、尚且つ1食1枚だけ食べるとしか考えられないのである。
やがてその後「関西のおばちゃん」は、お嫁さんにゴネ出してしまった。
「まぁ、食パンが薄いのんはしゃあないとして、この子等に美味しい菓子パン買うたげたいんやけど、何や大阪のパン屋と勝手が違うよってにねぇ。
田舎もんは東京へ来ると辛いわぁ」、と。
こうなると「関西のおばちゃん」と言うのは、手が付けられない。
お嫁さんは凄く困っている様子。
が、しかし私は知っていた。
こちらでは三越伊勢丹が上だが、関西では高島屋と大丸がトップに君臨する。
私は関西のおばちゃんが、東京で売っていると最も喜ぶと思うパン屋を知っているのだ。
ここは私が助けるしかあるまい。
と、余計なお世話かも知らないが、つい口を出してしまった私。
「あのフォション(FAUCHON)のパン屋さんなら、こことは反対側なんですけど、新宿南口の高島屋さんの地下に入ってますよ。
自分学生時代関西に居たんで、フォションは良く買いに行きましたから」
と、マスク越しにも目尻を下げた「関西のおばちゃん」は、満面の笑みと見受けた。
「いやぁ、ほんまに!
ええこと聴いたわぁ。
フォーション(関西のおばちゃんはフォションとは言わない。否、言えないのかも。私の知っている限り、皆フォーと伸ばして発音する)
が有るやなんて。
お兄ちゃん関西の人かいな?」
兎に角一度言っても同じ事を言わすのが、「関西のおばちゃん」である。
「いえ、学生時代に関西に・・・・・」
再び私から同じ言葉を聴いて、頻りに肯く「関西のおばちゃん」であった。
「あぁ、そやったなぁ。
ほんまおおきにやで、お兄ちゃん。
ほなおばちゃん高島屋へ行ってくるわ!」
お嫁さんお孫さん達に礼を言われ恐縮している私をよそに、一旦踵を返そうとした「関西のおばちゃん」であったが、彼女は決して裏切らなかった。
そうなのである。
一人振り返った彼女はマスクの上の目元を綻ばせながら私の許へ戻って来ると、「兄ちゃん、ほれ。飴ちゃんあげよ」、と言ってくれたのであった。
今、その飴ちゃんを舐めながら、このエピソードを執筆している私なのであった。
明日に続く。
「あんたこんな薄うに切ったん買うたん。
これ8枚切りやないのん?
せめて6枚切りにせんと。
子供等にこんな薄いのん食べさされへんでしょう」、と。
今日は昨日と違って20代の関西女子ではなく、恐らく60代後半から~70代の自他ともに認める「関西のおばちゃん」である。
孫と嫁を連れているらしく、何か他の買い物をしていた「関西のおばちゃん」が、嫁に食パンのスライスのオーダーを任せたらしい。
こうしたトラブルは良く有る話なのだ。
ご存知の方もいらっしゃるかと思うが関西では食パンを5〜6枚切りするのが主流で、関東で主流の8枚切りは薄過ぎると言う事になる。
別の角度からその事について述べると、関西では特に女性に於いては食パンを1食1枚食べるのが主流で、関東みたいに8枚切りの食パンを2枚食べると言う感覚が無いのだ。
まぁ、良く良く考えてみると、関西の方が少食と言う事になる。
何となれば8分の2枚(4分の1)>6分の1枚なのだから。
と、言う事で、その「関西のおばちゃん」は食パン=5〜6枚切であり、尚且つ1食1枚だけ食べるとしか考えられないのである。
やがてその後「関西のおばちゃん」は、お嫁さんにゴネ出してしまった。
「まぁ、食パンが薄いのんはしゃあないとして、この子等に美味しい菓子パン買うたげたいんやけど、何や大阪のパン屋と勝手が違うよってにねぇ。
田舎もんは東京へ来ると辛いわぁ」、と。
こうなると「関西のおばちゃん」と言うのは、手が付けられない。
お嫁さんは凄く困っている様子。
が、しかし私は知っていた。
こちらでは三越伊勢丹が上だが、関西では高島屋と大丸がトップに君臨する。
私は関西のおばちゃんが、東京で売っていると最も喜ぶと思うパン屋を知っているのだ。
ここは私が助けるしかあるまい。
と、余計なお世話かも知らないが、つい口を出してしまった私。
「あのフォション(FAUCHON)のパン屋さんなら、こことは反対側なんですけど、新宿南口の高島屋さんの地下に入ってますよ。
自分学生時代関西に居たんで、フォションは良く買いに行きましたから」
と、マスク越しにも目尻を下げた「関西のおばちゃん」は、満面の笑みと見受けた。
「いやぁ、ほんまに!
ええこと聴いたわぁ。
フォーション(関西のおばちゃんはフォションとは言わない。否、言えないのかも。私の知っている限り、皆フォーと伸ばして発音する)
が有るやなんて。
お兄ちゃん関西の人かいな?」
兎に角一度言っても同じ事を言わすのが、「関西のおばちゃん」である。
「いえ、学生時代に関西に・・・・・」
再び私から同じ言葉を聴いて、頻りに肯く「関西のおばちゃん」であった。
「あぁ、そやったなぁ。
ほんまおおきにやで、お兄ちゃん。
ほなおばちゃん高島屋へ行ってくるわ!」
お嫁さんお孫さん達に礼を言われ恐縮している私をよそに、一旦踵を返そうとした「関西のおばちゃん」であったが、彼女は決して裏切らなかった。
そうなのである。
一人振り返った彼女はマスクの上の目元を綻ばせながら私の許へ戻って来ると、「兄ちゃん、ほれ。飴ちゃんあげよ」、と言ってくれたのであった。
今、その飴ちゃんを舐めながら、このエピソードを執筆している私なのであった。
明日に続く。