第103話 あの「まる子」そっくりの女性こと、私に「甘納豆」を買わせた女性

文字数 1,182文字

 緊急事態宣言が明後日から発令されるので、
念の為タイムセールで余分に弁当を購入し数日分を冷凍保存しようと決意。
 何時もの新宿の百貨店の地下へと向かう。
 昨夜午後7時くらいだったと思う。

 と、その前に、喉が乾いたので新宿の地下街に在るチェーン店のコーヒー屋さんへ。
 思い切ってアイスにした。
 そうして今年初のアイスコーヒーを楽しんでいると、私の隣席に居た女性の待ち人と思しき人が店に入って来た。
 その待ち人の女性を見た刹那、私は飲み掛けていたアイスコーヒーを危うく吐き掛けた。
 何となれば遣って来た女性が「ちびまる子ちゃん」の、あの「まる子」にそっくりだったからである。
 無論顔はマスクで半分以上見えないし、髪型
と眼許しか見えていないのだが、それでも何度見ても彼女は「まる子」なのだ。
 年の頃なら20代であろうか。

 ん?

 20代で小学生の「まる子」に似てるって?
 と、言われるかも知れないが、誰が何と言っても彼女は断然「まる子」なのだ。
 何度か見たが間違いない。
 あんな髪型は他に居ないのだ。

 かと言って、「あの~まる子ですよね?」、とか言える訳ないし、どうすればいいのか。

 既に私の脳裏には、あのメロディーが去来して止まない。

(ピーヒャラ、ピーヒャラ、パッパパラパー、ピーヒャラ、ピーヒャラ、パッパパラパー、ピーヒャラピー、お腹が減ったよ~)、と。

 そんな私だったのだが尿意を催しトイレへ。
 と、用を足して席に戻ると、私の隣席で待ち合わせをしていたあの「まる子」達が、何処にも居ないではないか。

 しまったぁ。

 私がトイレに行った隙に席を立ったのだ。
 何とした事か。
 私は後を付けるか、とも、思っていたのに。
 直後私も「まる子」達の後を追おうとコーヒー店を後にしたが、表に出てみても何処へ行ってしまったのかその痕跡すらない。
 しかし依然として私の脳裏には、あのメロディーが鳴り響いたままである。

(ピーヒャラ、ピーヒャラ、パッパパラパー、ピーヒャラ、ピーヒャラ、パッパパラパー、ピーヒャラピー、お腹が減ったよ~)、と。

 仕方無く百貨店の地下へと向かった私。
 先ず向かったのは和菓子のコーナー。
 勿論買いたかったのは、あの「まる子」の好物の「追分羊羹」である。
 しかしどうやらその百貨店を始め東京で「追分羊羹」は手に入らないならしく、諦めて「甘納豆」を買う事にした。

 今私はその「甘納豆」を頬張りながら、このエピソードを書いている。
 無論今も尚私の脳裏には、「ピーヒャラ」が鳴り響いたままだ。

 と、ここで一つ。
 皆様方がもし新宿の「まる子」を見掛けた際「追分羊羹」が欲しくなる事請け合いだが、東京には売っていないらしいので「甘納豆」にする事をお勧めする、と、恐惶謹言させて戴く。
 また脳裏に「ピーヒャラ」を響かせながら食べる「甘納豆」は、何とも美味であるとも。
 かしこ。
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