第97話 下半身だけ和装の女性こと、和装の女性に焦がれる余り見間違えた人

文字数 1,180文字

 先日所要で新宿に出向いた時の事である。
 着物の着付け教室か何かの講師だと思う。
 4月だと言う事もあって新入生を出迎える為に、プラカードを持った和服姿の女性が路上に2人で立っていた。
 恐らくその周辺のビルの階上に教室が在るのだろう。
 無論私は生徒でも何でも無いのだが、良い眼の保養をさせて貰った。

 日本人女性の和服姿を観ると、それだけで心が洗われる気持ちになる。
 新年会に成人式、或いは卒業式に謝恩会と、
一通りの和装の祭典が取り止めになった今年。
 況してや初日の出フライトに搭乗する機会にも恵まれなった私なのだから、和服姿のアテンダントにさえ遭遇出来てない。
 今年に入ってからと言うもの、辛うじて家族と卒業写真の撮影帰りであろう、袴姿の卒業生を街で一度見掛けたきりだ。
 今後アフターコロナを迎えたとしても、これからは益々和装の女性を観る機会が減るだろう事は想像に難くない。
 何となれば銀座や六本木のクラブ等夜の世界でも、相継ぐ自粛で多数の店舗が閉店を余儀なくされているからだ。 
 してみると先日和装の女性を観られた事は、何事にも替え難い僥倖であった。
 
 然るに再び今日、和装の女性に遭遇する機会を得たのである。
 と、言っても、上半身だけのコスプレだったのだが、それでもやはりそれは僥倖と言うべき出来事と言えよう。
 恐らくアニメやオンラインゲーム等のキャラクターを模したコスプレなのだろうが、街で和装の女性を観掛けるのは悪くない。
 その上ちりめんの着物の生地で作ったマスク迄着用する周到さであった。
 しかもちっちゃ可愛い女子だったので、尚更の事良い。

 と、その後家路に就いた時の事、またまた和装の女性を見掛けた。

 ん?

 しかし前回は上半身たけであったが、今回は下半身だけが着物なのだ。
 しかも異様に背が高い事と、女性にしてはどうにもがたいが良過ぎるのが気になる。
 とは言え後ろ姿だけではあったが、確かにロングの髪を靡かせてはいる。
 ひょっとするとお姉か?
 それに下半身だけ着物とはどう言う事なのだろうと、私は早歩きして彼女だか彼だかの前に廻り込んでみた。
 すると着物ではなく、履いていたのは巻きスカートだった。
 それに巻きスカートの中はパンツ姿。
 黒マスクを着け目許はメイクをしていたのでお姉なのかも知れないが、或いはジェンダーレスな男子なのかも知れない。

 何れにしても巻きスカートと着物を間違えるとは、私も余程和装の女性に飢えているのか。
 その後そのまま家路に就くのが納得出来ない私は、1人しゃぶしゃぶの店に行く事にした。
 何となればその店では、和装の女性が接客してくれるからである。

 と、ここで一つ。
 もし街で下半身だけ和装の人を見掛けたら、皆様方にはそれは巻きスカートである、と、恐惶謹言させて戴く。  
 流石に巻きスカートでは癒されない。
 かしこ。
 

 
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