第132話 大きめマスクにオーバーサイズシャツの女子こと、溜息を吐かされた女子

文字数 1,407文字

 昨日の朝シャンプーが切れ掛けけていたので、自宅近辺の行き付けのドラッグストアへ。
 店に着いた私がシャンプーを物色していると、マスク越しにも美形の女子が入って来た。
 20代と思しきロングヘアの女子である。
 オーバーサイズシャツを上手くコーデしているお洒落女子なのだ。

 と、ん?

 何だろうこの違和感は、と、思って、もう一度彼女の方を見遣ると、彼女の着けているマスクがかなり大きいのである。
 顔一面がマスクで覆われている感じがする。
 しかも黒マスクなのに。
 お洒落女子なら女子用のちっちゃ目サイズの筈なのに、黒マスクの小顔効果が台無しだ。

 どう言う事だろう?

 と、怪訝に思っていると、彼女の背後から背の高いイケメン風20代男性の登場。
 彼が背後からピタリと彼女にくっ付いた直後、彼女も彼の方に首を巡らし、勢い良くぶら下がるようにして自身の腕を彼の腕に絡めた。
 彼は隣接するスーパーか、或いは100円ショップにでも行って戻って来たのだろう。
 レジ袋を提げていた。
 彼がそのレジ袋の中身を彼女に見せると、「うん、それでいい。今日の分だけで大丈夫。流石に明日は帰らないと」、と、答えた彼女。
 その時点で、何とな~く、疑問が解けそうな気がしたのだが、先ずは2人に近付き彼女の手にしていた買い物籠の中を一瞥してチェック。
 すると以下の商品が入っていた。

 1・お泊まり用メイクセット
 2・お泊まり用シャンプーリンスセット
 3・化粧用コットン
 4・ちっちゃ目サイズのマスク

 以上のモノを購入予定であると言う事と、先程の彼と彼女の遣り取りから、私は或る仮説を立てた。
 否、仮説、と、言うよりそれが正解たろう。

 先ずはオーバーサイズシャツコーデであるが、それはコーデではなく彼女が単に彼のシャツを借りただけなのに、如何にもオーバーサイズシャツコーデのようにして着ていたのだ。
 言うならば彼のシャツコーデである。
 次に大きめの黒マスクであるが、これも彼女が彼に借りたのだろう。
 因ってサイズが大きいのは当たり前で、だからこそ自分用のちっちゃ目マスクを、ドラッグストアで買い直そうとしていたのだ。

 以上の事から前夜は彼の部屋で、彼と彼女は一夜を共に明かしたのであろうと推察する。
 しかも同棲しているとかでは無く、前夜彼女は初めて彼の部屋に泊まったのである。
 思うに彼の部屋にはレディースが一切無く、着替え用に彼のシャツを彼女が借りたのだ。
 黒マスクも然り。
 それにその他お泊まりセット等々を購入している処から見て、彼女は前夜に続いてその日も彼の部屋に泊まる予定なのである。

 と、2人の前夜からの一連の行動を把握した刹那、私は大きく一つ溜め息を吐いた。
 やはり朝からそう言うのを見ると、独り暮らしの親爺にはきついのである。
 その後自宅に帰り着いた時、自宅アパート前で私が再び溜息を吐いた事は言う迄も無い。
 一昨日朝の高校生に溜息を吐いてたOLさんの行動が、まるでフラッシュバックしたかのような私の昨日朝の行動であった。

 と、ここで一つ。
 ちなみに自宅前で再び溜息を吐く寸前、やはり溜息は良くないと思って溜息を呑み込もうとしたのだが、馴れない事をした為咳き込んでしまい、結局その後我知らず溜息を吐いてしまっていた事を、包み隠さず恐惶謹言させて戴く。
 溜息は飲み込んだ方が良いのか、或いはそのまま吐いた方が良いのか、悩ましい処である。
 かしこ。
 
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