第115話 空き巣に間違えられた母娘3代こと、思わず立ち止まった母娘3代

文字数 851文字

 昨日の夜スーパーに買い出しに行ったのだが、その時私は比較的人通りの少ない場所に立つアパート群の前を歩いていた。
 するとと或るアパート1階のと或る1室のバルコニーの前に立って、じっと室内を見入っている3人の人影を発見。
 カーテンが引かれている事からも、家主が留守なのは明らか。

 まさか・・・・・ひょっとしたら、と。

 私は空き巣3人組の可能性に怯えながらも、
歩調を緩め何時でも通報出来るようにスマホのスイッチをオンにして、電話の画面を出した。
 近付くにつれ3人の人物像が露になる。
 すると1人は小学生と思しき女の子。
 もう1人はお母さんと思しき30代~40代の女性で、残る1人は60代~70代と思しきマダムであった。

 ん? 

 まさか母娘3代で空き巣でもあるまい。
 と、私が彼女達に後数mの処迄近付くと、逆に3人の方が私から遠ざかって行ったのだ。
 3人共マスク越しにも心無しか笑顔のよう。
 何事かと彼女達が見入っていた部屋の前迄来ると、何と引かれたカーテンとガラス窓の間に挟まるようにして、こちらを見詰める猫の姿が有るではないか。

 恐らくマンチカンである。
 滅茶苦茶に可愛い。
 ご主人様を待っているのだろうか。
 何ともモフモフな感じが堪らない。

 そうしてブラウンのモフモフを身に纏ったマンチカン君を観ていたのだが、母娘3代に代わって私も結構な時間を浪費した筈。
 気が付くと私の遣って来たのと同じ方向に、1組のカップルの姿が在った。
 マスク越しにも私の事を訝しがっているのが分かる。
 してみると私も私に対するカップルと同じ眼を、母娘3代に向けていたのではないか。
 直後私はその場を去ったのだが、入れ替わるようにしてカップルがマンチカン君の前へ。
 その時だった。
 カップルの女性の方の声が聴こえたのは。

 「可愛ぃ~」、と。

 ここで一つ。
 母娘3代から私へ、そして私からカップルへと移行した連鎖は、マンチカン君が部屋の奥に引っ込むか、或いはご主人が帰宅する迄永遠に続くであろう、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み