第86話 地元東京美人のOLこと、イアクッチのオタフクソース美人

文字数 1,817文字

 今日の夕方の事だが何時ものディスカウントスーパーではなく、ミドルクラスのスーパーに
食糧の買い出しに出掛けた。
 やはりミドルクラスだけあって、買い物客が何時ものディスカウントスーパーとは違う。
 殊に女性陣が違う。
 一人暮らしと思しき女性から若奥様或いはマダムに到る迄、美人率がかなりの確率で上がるのだ。
 無論マスク越しではあるが充分眼の保養になるので、私は月の内何回かはそのミドルクラスのスーパーに行く。
 何と言ってもディスカウントスーパーなら顧客の中心となる、ジャージ姿の女性客が一人も居ないのだ。
 今日も私は眼の保養をすべくそのミドルクラスのスーパーへ、と、出陣。

 と、やはり、と、言うか、待ってました、と、言うか、眼の保養になる仕事終わりのOLさんがやって来た。
 関西で流行中のイアクッチのトートバッグにグレーのスーツと言う出で立ちで、サラサラの髪の毛に抜群のスタイルと言ういい女っぷり。
 とは言え恐らく地元東京の美人な筈。
 何故なら私の住むその辺りの地域は、仮に出張等で東京に来ていたとしても買い物に来る地域てはないし、何よりこう言ったスマートでエレガントなOLさんが関西人で有る訳が無い。
 それに単に関西で流行しているイアクッチを持っていると言うだけで、イアクッチは関東でも流通しているのだから、絶対東京美人の筈。
 今日は買い物を始めた早々から幸先の良いスタートを切った。
 無論彼女の顔はマスク越しに見ただけだが、却ってその方が妄想を膨らませるのに都合が良いと言うもの。

 余りジロジロ見るのも失礼なので、一眼見た後はその女性から離れて買い物をした。
 一通り買い物を済ませた私はレジ待ちの列へと進んだのだが、何と私の直ぐ前に先程の地元東京美人の彼女が居るではないか。
 私は1日に2度も眼の保養が出来た。
 今日はツイてる、と。
 するとその地元東京美人の彼女が、調度私の横辺りにディスプレイされているソースの棚に手を伸ばそうとしていた。
 どうしても届かない様子で、それを取るには列を外れるしかない。

 そこで見兼ねた私は訊いてみた。 
「どれですか、取りますよ?」、と。 
 すると地元東京美人の彼女が応じた。
「あっ、助かります〜、すんませぇん。
 その『オタフクソース』なんですぅ、そのオレンジのラベルのやつです。
 ほんま助かりますぅ」
 と、地元東京美人の筈の彼女が応じたのだ。

 私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
 そうなのである。
 コテコテの関西弁だったのだ。
 私は彼女が関西人だった衝撃をおくびにも出さず、何とか彼女にリクエストされた「オタフクソース」を手渡した。
 その際彼女の提げていた買い物籠の中を一瞥すると、有ろう事か「関西風お好み焼きの素」が入っていた。
 と、すると、「オタフクソース」は何の事は無い、「お好み焼き」の為だったのである。

 その後「オタフクソースの美人」がマスクを着け直す瞬間を、偶然にもレジで精算している際に見逃さなかった私。
 やはり飛び切りの美人であった。
 
 そうして偶然と言うか、必然と言うか、今夜の私の夕食はお好み焼きと白米の、何と人生初の「お好み焼き定食」になったのだ。
 と、言っても、冷凍食品だが。
 そうなのである。
 こうも関西人が美人なら、自分も食ってみる他あるまい、と、炭水化物に炭水化物の無謀な組み合わせにチャレンジする事にしたのだ。
 北川景子に吉岡里帆に中條あやみ、或いは黒谷友香等、数え上げればキリがない関西美人。
 
 私は「お好み焼き定食」を見事克服し、何としても関西美人の気持ちを知るべきなのだ。
 と、一口だけトライしたが、やはり横浜出身の私にはその意図が分からなかった。 
 お好み焼きと白米を食い合わせる必要が無いし、何ならソース掛け御飯で良くないか、と、思ったのである。
 何となればお好み焼きと白米を同時に食べても、ソースの味しかしないからだ。 

 やはり私には無理だ。

 しかしお好み焼きはお好み焼きとして美味しく戴き、残った白米は納豆と共に掻き込んだ。
 やはり私に関西美人は荷が重い。
 してみると今般有吉弘行氏が関西美人の夏目三久と結婚出来たのは、彼が広島出身でお好み焼き定食慣れしているからなのかも知れない。

 と、ここで1つ。
 皆様方には「愛」は関西と関東の壁を越えれるかも知れないが、「お好み焼き定食」はそうした壁を越え難い、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
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