第78話 イメージを決定付けられた「先生」こと、実際そうではないかもな「先生」

文字数 1,051文字

 今日の夕方新宿の百貨店に、タイムセールの弁当を買いに行こうとした時の事である。
 その往路新宿のと或る地域の歩道を歩いていると、黒塗りの高級ワゴン車が私をゆっくりと追い抜き少し前の車道の端に停車した。
 後部座席から降りて来たのは恰幅の良い男性と、秘書らしきグレーのスーツを着た女性。
 と、そこ迄は良く見掛ける光景である。

 凡そ4〜5m先でその二人が降車したので秘書らしき女性が恰幅の良い男性に、「先生」、と、呼んでいたのが自然と耳に入って来た。
 但し一概に「先生」と言っても、それが「政治家」なのか「医師」なのか、或いは「弁護士」なのか「会計士」なのか、その他数え上げればきりがない程の職業の人達が該当する「先生」なので、今私の眼前で降車した男性が何の「先生」なのかは全く特定出来ない。
 が、しかーし、である。

 その「先生」が全く小顔効果が出ていないにも拘らず黒いマスクを着け、その上顔だけならまだしも態度迄デカく、尚且つ扇子で顔を扇いでいたらどうだろう。
 職業はどうであれその人のイメージは?
 大体想像が付いたかと思うのだが、そのイメージを決定付けた要素は他にも有った。
 それはその「先生」を待って居た人の、その後話した言葉の種類であった。
 
「お久しぶりでんなぁ。
 待ってましたんやで〜、先生」、と。

 そうなのである。 
 ベタベタの関西弁だったのだ。
 嘘のような話だが本当の話なのである。
 それはそれはもう、「ザ・関西弁」以外の何物でも無い関西弁だったのだ。 
 勿論その場でその「先生」は言っていないのだが、例えばその後に「お主も悪よのう〜」、とか続けて言ったりすると、凄くしっくり来る感じなのだ。

 つまり何なのかは別にしてその先生の職業の前に、取り敢えず「悪徳」を付けてしまいたくなるのである。
 例えば「悪徳・政治家」だったり、「悪徳・医師」だったり、或いは「悪徳・弁護士」だったり、「悪徳・会計士」だったりと言う具合。
 但しその「先生」の名誉の為に言っておくが、その「先生」を「悪徳」だと特定する証拠や根拠は一切無い。 
 要するにイメージがそんな風になってしまったのだ。

 ここで「先生」と呼ばれる職業の方に一つ。
 これからの季節扇子で扇ぎたくなる事もあるだろうが、その場合出来るだけ態度がデカく見えるような扇ぎ方はお控え戴き、且つマスクは白にして戴き、重ねて周囲の人は出来るだけ関西弁を控えて戴くよう恐惶謹言させて戴く。
 それに因って「悪徳」のイメージが払拭出来る事請け合いである。  
 かしこ。
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