第11話 丸見え女子こと、予想外にも笑い飛ばす女子
文字数 1,783文字
先日新宿の某大手書店に行き、その後韓流街のど真ん中に有る熱帯魚屋さんに行こうと新大久保へ出向いた時の事。
何とも幸運に恵まれた。
否、幸運と言うのは不謹慎かも知れないが、少なくとも不運ではない。
まあ、滅多に見れる物ではない事は確かだ。
何も私の為にそうしたのではないだろうが、眼の前で信号待ちをして居る女性が大変な事になっていたのである。
女性、と、言うか、恐らく10代後半か20代前半の女性なので、女性と言うより女子だ。
その女子はこの寒い中、ボトムスが黒のフェイクレザーのショートパンツだったのである。
しかも上からコートこそ羽織っているようだったが、タイツ等履かずに脚を露わにして。
が、何と驚く事なかれ、右側のショートパンツの裾から、お尻のかなりの部分が喰み出ているのだ。
一見レースのフリルでも付いているデザインなのかと思いきや、良く見るとそれは明らかに「おパンツ」であり、実際はショートパンツの裾が捲れ上がっている事が判明。
スーツが黒で「おパンツ」が白なので、一見モノトーンの色使いなのか、と、言えなくもないが、そんな事になっているのは右側だけなのである。
まさか左右で違うデザインなの?
と、まぁ、んな訳ないわなあ、と、再び眼を凝らすと、やはりそれは明らかに「おパンツ」なのである。
とは言え当の本人は気付いていない様子。
これは事故或いは事件の類いと言えよう。
誰かこの件を彼女に伝えてあげれる人は居ないものか、と、辺りを見廻してみたが、居るのは私と小学生と思しき子供達だけだ。
どうしよう。
子供達は気付いていないようだ。
ふざけ合っている様子が見て取れる。
小学生の中には女の子もいるが、しかしこの状況を眼前の事故に見舞われている彼女に伝えるよう、女子小学生に頼んだとする。
と、もし私の事を勘違いされて、ランドセルに付属の防犯ブザーの紐を引っ張られでもしたらどうする。
人助けをするつもりが、一転犯罪者だ。
それに彼女に「おパンツ」の事を直接耳打ちしたとして、変な眼で見られる可能性もある。
変質者扱いされるのは心外だ。
ここはこの場を立ち去るしかないか。
しかしこのまま捨て置く訳には・・・・・。
と、そこへ、突然救世主か現れた。
キャスターの付いた買い物カートを押しながら、ゆっくりとマスク越しにも70代〜80代と思しきお婆ちゃんが、私の直ぐ横まで歩いて来たのだ。
信号はまだ変っていない。
これは僥倖だ。
僥倖と言わずして何と言う。
私はすかさずお婆ちゃんの耳元で告げた。
「あの、僕の代わりに前の女性に伝えて貰えませんか。多分ああなっていることをお気付きになられていないのか、と」
私がそう言うとお婆ちゃんは「あら、ま、大変。私にまかせて」、と、言って「おパンツ」の彼女の肩をトントンとやり、耳打ちした。
私はその隙を逃さず「おパンツ」の彼女の一歩前へ。
しかしその直後の事である。
予測に反し、「おパンツ」の彼女は声を立てて笑ったのだ。
「あっ、嫌だ本当。ありがとう」、と。
そう言うやショートパンツの裾をパンパンと手で払い、何事もなかったかのようにお尻を振りながら颯爽と信号を渡り始めた。
「これって唯の取り越し苦労じゃんよ!」
と、私は一瞬思ったが、次の刹那、否、しかし待てよ、と、思い直した。
ひょっとしたらその場は笑うしかなく、後でさめざめと泣くのかも知れない。
本当は凄くショックなのかも。
強がってみても所詮は女の子だからなあ。
何か悪い事したなあ、と、思っていると、直後電話が有ったのか、前を行く彼女がスマホを耳に宛てながら立ち止まった。
スマホ越しに泣くのかも知れない。
自分のせいでは無いにしても・・・・・。
何とも遣り切れない気分になった。
と、私が俯いて彼女を追い越した時の事だ。
1人感慨に耽る私を嘲笑うかのように、やがて彼女はケタケタと声を立てて笑った。
と、間もなく背中で彼女がスマホに吹き込んだ言葉を聴いた。
その言葉はマスク越しにも、私の耳にはっきりと聴こえた。
「マジ、ウケる。
わたしパンツ見せて道歩いてたし!
超ウケるんだけどぉ」
彼女のその言葉を聴いてホッとしたと同時に、今度こそ思い直すのは止めた。
そして私は胸中に再び呟いたのである。
「これってやっぱ唯の取り越し苦労じゃんよ」
、と。
何とも幸運に恵まれた。
否、幸運と言うのは不謹慎かも知れないが、少なくとも不運ではない。
まあ、滅多に見れる物ではない事は確かだ。
何も私の為にそうしたのではないだろうが、眼の前で信号待ちをして居る女性が大変な事になっていたのである。
女性、と、言うか、恐らく10代後半か20代前半の女性なので、女性と言うより女子だ。
その女子はこの寒い中、ボトムスが黒のフェイクレザーのショートパンツだったのである。
しかも上からコートこそ羽織っているようだったが、タイツ等履かずに脚を露わにして。
が、何と驚く事なかれ、右側のショートパンツの裾から、お尻のかなりの部分が喰み出ているのだ。
一見レースのフリルでも付いているデザインなのかと思いきや、良く見るとそれは明らかに「おパンツ」であり、実際はショートパンツの裾が捲れ上がっている事が判明。
スーツが黒で「おパンツ」が白なので、一見モノトーンの色使いなのか、と、言えなくもないが、そんな事になっているのは右側だけなのである。
まさか左右で違うデザインなの?
と、まぁ、んな訳ないわなあ、と、再び眼を凝らすと、やはりそれは明らかに「おパンツ」なのである。
とは言え当の本人は気付いていない様子。
これは事故或いは事件の類いと言えよう。
誰かこの件を彼女に伝えてあげれる人は居ないものか、と、辺りを見廻してみたが、居るのは私と小学生と思しき子供達だけだ。
どうしよう。
子供達は気付いていないようだ。
ふざけ合っている様子が見て取れる。
小学生の中には女の子もいるが、しかしこの状況を眼前の事故に見舞われている彼女に伝えるよう、女子小学生に頼んだとする。
と、もし私の事を勘違いされて、ランドセルに付属の防犯ブザーの紐を引っ張られでもしたらどうする。
人助けをするつもりが、一転犯罪者だ。
それに彼女に「おパンツ」の事を直接耳打ちしたとして、変な眼で見られる可能性もある。
変質者扱いされるのは心外だ。
ここはこの場を立ち去るしかないか。
しかしこのまま捨て置く訳には・・・・・。
と、そこへ、突然救世主か現れた。
キャスターの付いた買い物カートを押しながら、ゆっくりとマスク越しにも70代〜80代と思しきお婆ちゃんが、私の直ぐ横まで歩いて来たのだ。
信号はまだ変っていない。
これは僥倖だ。
僥倖と言わずして何と言う。
私はすかさずお婆ちゃんの耳元で告げた。
「あの、僕の代わりに前の女性に伝えて貰えませんか。多分ああなっていることをお気付きになられていないのか、と」
私がそう言うとお婆ちゃんは「あら、ま、大変。私にまかせて」、と、言って「おパンツ」の彼女の肩をトントンとやり、耳打ちした。
私はその隙を逃さず「おパンツ」の彼女の一歩前へ。
しかしその直後の事である。
予測に反し、「おパンツ」の彼女は声を立てて笑ったのだ。
「あっ、嫌だ本当。ありがとう」、と。
そう言うやショートパンツの裾をパンパンと手で払い、何事もなかったかのようにお尻を振りながら颯爽と信号を渡り始めた。
「これって唯の取り越し苦労じゃんよ!」
と、私は一瞬思ったが、次の刹那、否、しかし待てよ、と、思い直した。
ひょっとしたらその場は笑うしかなく、後でさめざめと泣くのかも知れない。
本当は凄くショックなのかも。
強がってみても所詮は女の子だからなあ。
何か悪い事したなあ、と、思っていると、直後電話が有ったのか、前を行く彼女がスマホを耳に宛てながら立ち止まった。
スマホ越しに泣くのかも知れない。
自分のせいでは無いにしても・・・・・。
何とも遣り切れない気分になった。
と、私が俯いて彼女を追い越した時の事だ。
1人感慨に耽る私を嘲笑うかのように、やがて彼女はケタケタと声を立てて笑った。
と、間もなく背中で彼女がスマホに吹き込んだ言葉を聴いた。
その言葉はマスク越しにも、私の耳にはっきりと聴こえた。
「マジ、ウケる。
わたしパンツ見せて道歩いてたし!
超ウケるんだけどぉ」
彼女のその言葉を聴いてホッとしたと同時に、今度こそ思い直すのは止めた。
そして私は胸中に再び呟いたのである。
「これってやっぱ唯の取り越し苦労じゃんよ」
、と。