第94話 オーバーサイズシャツのギャル寄り孫女子こと、結果的にはちゃっかり女子
文字数 2,068文字
昨日雨の中ではあるが、何時ものでは無く、タイムセールでもなく、高級弁当を購入すべく、新宿の行き慣れない百貨店へと出向いた。
2日続いたラーメンですっかり腹を下した私は、さすがにこれ以上お腹の調子を崩す訳には行かないので、思い切って高級弁当を購入する事に決めたのである。
何時もの4倍近く高い弁当を購入し早速食べるべく、いざ部屋に帰ろうかと思った昼ちょっと過ぎの事。
急に雨脚が激しくなった。
時間の余裕も有ったので、暫し百貨店の玄関口で雨宿りをする事にした。
と、流石は高級百貨店である。
何時もの百貨店とは顧客の筋が違う。
仕立ての服だろうか見るからに高そうなシルクのブラウスに、複雑な織り柄の淡いベージュのスーツを着たマダムが、凛として玄関口に。
何とクロコのバッグを手にしていた。
ケリーバッグと思しきバッグだが、まるでエコバッグを手にしているように馴染んでいる。
口元はマスクで見えないが、キリッとした目許で立姿の美しいマダムだ。
世の中にはこんなに恵まれたマダムが居ると言うのに、私の人生は一体何なのだろうか。
等と嘆いていると、マダムに手を振りながら近寄ってくる、10代後半〜20代前半と思しき女子が現れた。
JKか或いは女子大生か、と、言った処か。
お孫さんなのだろう。
しかしマダムのお孫さんにしては、随分とギャル寄りな女子。
バーバリー製であろうか、オーバーサイズのシャツをジャケット代わりにして、革のミニスカートにハーフブーツと言う出で立ち。
マスク越しにも目許が愛らしい女子だ。
ギャル寄りではあっても、何処となく気品が在る処はマダム譲りか。
と、マダムがギャル寄りの孫女子を見るなり、厳しい口調で言い放った。
「私も貴女の年頃の時には色々とあったけど、でもお相手から借りたシャツを着たまま外に出た事はないわ。
欲しい服を買ってあげるから、直ぐにクリーニングに出してそれはお相手に返しなさい」
マダムの言葉を聴いて、私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
マダムは本気で勘違いしている。
と、気付いたのは、私だけなのだろうか。
マダムの言っている事の意図を、今一把握し切れていないギャル寄りの孫女子曰く。
「ん?
お相手って、これ元はパパのだよ。
着ないで仕舞ってあったから、貰ったの。
バーバリーだし、可愛いでしょ」
話が噛み合っていない。
何とギャル寄りの孫女子は、マダムの「お相手」、と、言う言い回しを「友人」もしくは
「仲間」、と、取ったようで、マダムの意図している「彼」もしくは「男女の関係の相手」、と、取っていないのである。
「嘘仰い。
お相手の部屋にお泊りして、着替えが無いからその人に借りたんでしょ。
で、どんな人なの?
お父さんにもお母さんにも、言えない人?
お婆ちゃんが何とかしたげるから、本当の事を言いなさい」
私は間に入るべきかどうか戸惑った。
とは言え赤の他人の、しかも立ち聴きをしている私である。
入れよう筈も無い。
どうしたものかと一人焦燥に駆られていると、そこに来て漸くギャル寄りの孫女子もそうした事に気付いたらしく、腹を捩って爆笑しながら掌を左右に振って応じた。
「否々、お婆ちゃんスンゴぃ勘違いしてる。
これってオーバーサイズシャツコーデっつって、こうやって、わざと、大きめのシャツを着るコーデなの!」
オーバーサイズシャツを肩片の手で摘んで見せながら、もう片方の手でマスク越しにも口元も抑えながら笑うギャル寄りの孫女子。
その態度が余計にマダムを煽り。
一向にギャル寄りの孫女子の言う事を信用しないマダム。
その後何度か遣り取りを繰り返した後、ギャル寄りの孫女子が最終手段に打って出た。
「あっ、パパ、私。
お婆ちゃんに代わるから、頼むね」
どうやらギャル寄りの孫女子は、実の父であり、マダムの実の息子である「パパ」に電話。
そうしてギャル寄りの孫女子からスマホを受け取ったマダムは、暫くして漸く事態を把握したらしく、頬をほんのり赤く染めた。
何やら電話の向こうで「パパ」は爆笑しているらしく、マダムは、「笑うんじゃないの。私は孫が心配で言ったんだから!」、と、少々逆切れ気味だった。
私は、ホッ、と、安堵の溜息を小さく吐き出し、背中で2人の会話を聴きながらその場を立ち去った。
「本当なのね、お婆ちゃんが悪かった。
でも、幾ら流行りかも知れないけど、私の孫にそう言う服を着て欲しくはありません。
兎に角まともな服を買いに行きましょ」
そうしてマダムの言葉の後に、ギャル寄りの孫女子が言った。
「はぃ、あざぁす。
じゃない、大変ありがとうございますお婆ちゃま」、と。
ここで一つ。
オーバーシャツコーデは可愛いし私も個人的には好きなのだが、マダムの前では控えるようにした方が良いのでは、・・・・・否々、ちょっと待てよ。
ではなく、孫女子の皆様方には怒られる事を覚悟し服を買って貰う事を計算の上なら、オーバーシャツコーデも有りである、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。
2日続いたラーメンですっかり腹を下した私は、さすがにこれ以上お腹の調子を崩す訳には行かないので、思い切って高級弁当を購入する事に決めたのである。
何時もの4倍近く高い弁当を購入し早速食べるべく、いざ部屋に帰ろうかと思った昼ちょっと過ぎの事。
急に雨脚が激しくなった。
時間の余裕も有ったので、暫し百貨店の玄関口で雨宿りをする事にした。
と、流石は高級百貨店である。
何時もの百貨店とは顧客の筋が違う。
仕立ての服だろうか見るからに高そうなシルクのブラウスに、複雑な織り柄の淡いベージュのスーツを着たマダムが、凛として玄関口に。
何とクロコのバッグを手にしていた。
ケリーバッグと思しきバッグだが、まるでエコバッグを手にしているように馴染んでいる。
口元はマスクで見えないが、キリッとした目許で立姿の美しいマダムだ。
世の中にはこんなに恵まれたマダムが居ると言うのに、私の人生は一体何なのだろうか。
等と嘆いていると、マダムに手を振りながら近寄ってくる、10代後半〜20代前半と思しき女子が現れた。
JKか或いは女子大生か、と、言った処か。
お孫さんなのだろう。
しかしマダムのお孫さんにしては、随分とギャル寄りな女子。
バーバリー製であろうか、オーバーサイズのシャツをジャケット代わりにして、革のミニスカートにハーフブーツと言う出で立ち。
マスク越しにも目許が愛らしい女子だ。
ギャル寄りではあっても、何処となく気品が在る処はマダム譲りか。
と、マダムがギャル寄りの孫女子を見るなり、厳しい口調で言い放った。
「私も貴女の年頃の時には色々とあったけど、でもお相手から借りたシャツを着たまま外に出た事はないわ。
欲しい服を買ってあげるから、直ぐにクリーニングに出してそれはお相手に返しなさい」
マダムの言葉を聴いて、私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
マダムは本気で勘違いしている。
と、気付いたのは、私だけなのだろうか。
マダムの言っている事の意図を、今一把握し切れていないギャル寄りの孫女子曰く。
「ん?
お相手って、これ元はパパのだよ。
着ないで仕舞ってあったから、貰ったの。
バーバリーだし、可愛いでしょ」
話が噛み合っていない。
何とギャル寄りの孫女子は、マダムの「お相手」、と、言う言い回しを「友人」もしくは
「仲間」、と、取ったようで、マダムの意図している「彼」もしくは「男女の関係の相手」、と、取っていないのである。
「嘘仰い。
お相手の部屋にお泊りして、着替えが無いからその人に借りたんでしょ。
で、どんな人なの?
お父さんにもお母さんにも、言えない人?
お婆ちゃんが何とかしたげるから、本当の事を言いなさい」
私は間に入るべきかどうか戸惑った。
とは言え赤の他人の、しかも立ち聴きをしている私である。
入れよう筈も無い。
どうしたものかと一人焦燥に駆られていると、そこに来て漸くギャル寄りの孫女子もそうした事に気付いたらしく、腹を捩って爆笑しながら掌を左右に振って応じた。
「否々、お婆ちゃんスンゴぃ勘違いしてる。
これってオーバーサイズシャツコーデっつって、こうやって、わざと、大きめのシャツを着るコーデなの!」
オーバーサイズシャツを肩片の手で摘んで見せながら、もう片方の手でマスク越しにも口元も抑えながら笑うギャル寄りの孫女子。
その態度が余計にマダムを煽り。
一向にギャル寄りの孫女子の言う事を信用しないマダム。
その後何度か遣り取りを繰り返した後、ギャル寄りの孫女子が最終手段に打って出た。
「あっ、パパ、私。
お婆ちゃんに代わるから、頼むね」
どうやらギャル寄りの孫女子は、実の父であり、マダムの実の息子である「パパ」に電話。
そうしてギャル寄りの孫女子からスマホを受け取ったマダムは、暫くして漸く事態を把握したらしく、頬をほんのり赤く染めた。
何やら電話の向こうで「パパ」は爆笑しているらしく、マダムは、「笑うんじゃないの。私は孫が心配で言ったんだから!」、と、少々逆切れ気味だった。
私は、ホッ、と、安堵の溜息を小さく吐き出し、背中で2人の会話を聴きながらその場を立ち去った。
「本当なのね、お婆ちゃんが悪かった。
でも、幾ら流行りかも知れないけど、私の孫にそう言う服を着て欲しくはありません。
兎に角まともな服を買いに行きましょ」
そうしてマダムの言葉の後に、ギャル寄りの孫女子が言った。
「はぃ、あざぁす。
じゃない、大変ありがとうございますお婆ちゃま」、と。
ここで一つ。
オーバーシャツコーデは可愛いし私も個人的には好きなのだが、マダムの前では控えるようにした方が良いのでは、・・・・・否々、ちょっと待てよ。
ではなく、孫女子の皆様方には怒られる事を覚悟し服を買って貰う事を計算の上なら、オーバーシャツコーデも有りである、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。