第26話 コカ・コーラ男子こと、実はコカ・コーラじゃない男子

文字数 1,384文字

 昨日「東京マーケットワイド」での椿事を笑ってしまったのが仇となり、今日株価が切り返してしまうと言う罰が当たってしまった私。
 やはり因果応報と言うものは有るものだな。
 と、感慨頻りに部屋を出たのだが、落ち込む余り大した水分も取らなかった上に、お茶のペットボトルを持参するのさえ忘れてしまった。
 そこでコンビニを見付けたので、お茶のペットボトルを買おうとその店に入った。
 適当に日本茶のペットボトルを選びレジへと進んだのだが、その時金曜の「東京マーケットワイド」同様の椿事に再び出会したのである。
 私の1つ前に並んでいた学生であろうか10代後半〜20代前半の男子が、赤のウインドブレーカーを着ていたのだ。
 胸と背中の両方に、「COCA - COLA」、と、大きく書かれたもの、を、である。
 ところがその男子が買って行ったのは、何と驚く事なかれ、「ペプシコーラ」だった。
 多分その男子はウインドブレーカーの事を意識していないのだろうし、またコカ・コーラの会社の人でもなく、単にファッションでヴィンテージの古着か何かを着ていたのだと思う。
 店員さんは忙しさの余り全くその事に意識が及んでいない様子だし、ご本人も無意識で、私1人が、「ゲッ、マジで」、と、思っていたのではないだろうか。
 何れにしてもその時の私は、それが今日の序章にしか過ぎないのだとは思いもしなかった。
 そんな風にコンビニで椿事に出会した私であったが、少し歩いた時またゾロ買い忘れた物がある事に気付いたのである。
 マスクの予備だ。
 何処で買おうかと思っていたら、少し先にドラッグストアのチェーン店が有る事を思い出したので、暫く歩いてその店に入った。
 マスクを数パック程取ってレジへと進むと、またまた先程のコカ・コーラのウインドブレーカーを着た男子が2人程前に居るではないか。
 チラと見ると、リポビタンDを2ケース程買っているのが見えた。
 ん?
 リポビタンDは確か大正製薬の商品の筈。
 それにコカ・コーラのエナジードリンクと言えば、リアルゴールドがあるではないか。
 コカ・コーラのウインドブレーカーを着ているのに、とことんコカ・コーラの商品は飲まないんだなぁ、と、彼が店から出て行くのを感慨深く見送った私であったが、まさか最後に駄目押しの再会が有るとは思ってもいなかった。
 そのドラッグストアを出て直ぐの処に彼のスクーターが停めてあって、そのお洒落系の真っ赤なスクーターに、調度彼が乗り込もうとしているところに再び出会した私。
 してみると、彼はスクーターの色にウインドブレーカーの色を合わせたのか。
 改めて納得した私。
 ん?
 と、ふと見ると、「Dr.Pepper(ドクターペッパー)」のステッカーが彼のスクーターに貼られているではないか。
 うーん。
 流石にそこ迄とは。
 真っ赤なコカ・コーラのウインドブレーカーを着ていると言うのに、それ程迄に終始一貫してコカ・コーラの製品を退けるとは、やはり彼は只者ではない
 私も相場では終始一貫して弱気で行こう。
 今日相場が切り返しはしたが、夢々強気にはならぬぞ。
 と、気合を引き締めた。
 が、その後彼のお蔭でコカ・コーラが恋しくなり、ドラッグストアに引き返しコカ・コーラのペットボトルを買った。
 美味かったなぁ。
 とは言え、彼にはその事を伝えず仕舞いでいる今日の私であった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み