第122話 網タイツの女子の彼こと、気さくな彼

文字数 1,256文字

 昨日の夕方の事である。
 我が家で飼っている熱帯魚君の濾過フィルターを買う為、新宿へと出向いた。
 ところが新宿の地下街に在る行き付けの店が、この緊急事態宣言で休んでいたのだ。
 やはり地下街と言うのは、都とか区の管轄になるのだろう。
 お店としては都のお達しには素直に従うしかない、と、言った処か。

 そこで新大久保の熱帯魚屋さんへ。
 と、新大久保に着くや独特の熱と匂い。
 しかし何と言うか、新大久保の街と言うのは或る種の治外法権と言うか、率直に、「此処本当に日本?」、と、行く度に思ってしまう。
 殊に最近は、「韓流街」と言うより、「謎のアジア街」とでも言うべき様相を呈している。
 例えば、「謎のハラールショップ」に「謎のアジア系リサイクルショップ」、或いは「謎のアジア系食堂」に「謎のアジア系スーパー」、等々だ。
 そうして「韓国系」は元より、有りとあらゆる「謎のアジア系の店」が有る。
 無論新大久保に出入りする人達も、有りとあらゆるアジア系の人種に及ぶ。
 コロナで帰国もしくは出国出来なくなったりした人も多数居るだろう。
 しかし何はともあれ、新大久保のアジア人の店員は気さくだ。
 一度「謎のアジア系の用品店」で「謎のアジア人」の店員にマスクの値段を訊いてみたが、「良かったらもっと安くしますよ」、と、言ってくれた。
 まぁ、マスク自体が「謎のメーカー」の製品だったんで止めたが、代わりに「謎のスマホカバー」を買った。
 結構丈夫で未だに使っている。

 そんな新大久保なのだが、昨日網タイツにショートパンツの10代後半~20代前半と思しき女子と、金髪の彼のカップルに出会った。
 横断歩道の向こう側に立っていたので詳細は不明たが、恐らくは「謎のアジア人」だ。
 しかし日本人と違って、たとえ謎でもアジア人は気さくなのである。
 と、カップルの女子の網タイツが凄く特殊な柄だったので、ついつい見入ってしまった。
 近付くにつれ鮮明になる網タイツの柄なのだが、何と言うか蛇柄の網タイツ・・・・・。

 ん?
 否、ではないぞ!
 こ、こ、これは、網タイツではなくタトゥーではないかぁ!
 マジかぁ。
 両足に蛇のタトゥー。
 と、その時、タトゥー女子の横を歩いていたB(ヒップホップ・Bボーイズ)系の彼と眼が合いそうになった私は、咄嗟に視線を避けてスマホに眼を落とし、ナビに従って歩いているフリをした。
 何となれば一瞥した際彼の首には金のチェーンが輝いていたし、マスク越しにも金髪の怖い系の人で間違い無いからである。
 それにどうやら日本人のようなのだ。
 アジア人は気さくでも、日本人はどうか分からないてはないか。
 と、擦れ違いざま彼が彼女に、「何かさぁ、甘いもん食い行こうよぉ」、と、言ったのが聴こえた。
 うーん。
 見た目と違い甘いもんを食うとは、しかも怖い系なのに声迄甘い彼であった。

 と、ここで一つ。
 新大久保の「謎のアジア人」は気さくなので怖がる必要は無いし、また「謎の日本人」も気さくなので怖がる必要は無い、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み