第39話 自然に元に戻った男こと、ズレてる男

文字数 872文字

 先日新宿に生活必需品を買いに100円ショップへと出向いた時の事、買い物をしている男性の髪に違和感を感じ、思わず立ち止まってしまったのである。
 後ろ姿なのだが何かがおかしいのだ。
 襟足は白髪混じりなのに、トップの方は黒々としている。
 ん?
 これって〜、と、思って、前に回り込むとやはりそうだった。
 しかもそれがズレているのである。
 そうなのだ。
 ウィッグと言うか男性用鬘と言うか、兎に角その「ヅラ」が微妙にズレているのである。
 マスク越しではあるが、50代〜60代と思しき目元であった。
 以前職場の同僚にも同じような事が起こったのだが、ズレている事は疎かその同僚がヅラである事さえ触れずに居た。
 況してや赤の他人である。
 私が知らせる事等出来ようか。
 と、思っていたのだが、その後彼にもその事を知るチャンスがやって来た。
 買い物を済ませレジに並んだ時の事彼は私から二人程前に居たのだが、レジ横に姿見大の鏡があり、列に並んでいると自然と自身の姿を映してくれるのだ。
 あぁ〜良かった。
 と、思いきや、何と彼が彼自身を確認した時には、さっき迄ズレていたヅラが本来乗っかっていて然るべき位置に戻っていたのである。
 私が「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄もないのだが、果たしてそれは頭上で一周廻って来て元に戻ったのか、或いは彼が動いた反動か何かで元に戻ったのか。
 もしくは彼が気付いて手ずから直したのか。
 うーん。
 全くの謎、と、思いきや、分かったのだ。
 やはり偶然元の位置に戻ったらしい。
 と、言うのも、彼が一旦レジ待ちの列を外れた後再び私の後ろに並んだのだが、何とその時鏡に映った彼のズラは再びズレていたのだ。
 流石に彼も気付いたようで、今度は頭を掻くようにして直していた。
 やはり先程は偶然元に戻っただけなのだ。
 これで謎は解けた、と、思いきや、頭上で一周廻って来て元に戻ったのか、或いは彼が動いた反動か何かで元に戻ったのか。
 その戻り方については全くの謎だ。
 ま、本人が気付いたので、良しとする。
 しかし何とも悩ましいズラズレ事件だった。
 
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み