第12話 お姉さんこと、笑顔の奥さんか或いはおばさん?
文字数 1,625文字
昨日私はとことん「お姉さん」、と、言う呼称の多様性について痛感した。
重ねて歌舞伎町に居るキャッチのお兄さんが何故女性なら誰彼構わずに、「お姉さん」、と、言って近寄って行くのかも理解が出来た。
とは言え昨日或る体験をする迄の私は、「奥さん」がオールラウンダーで、「お姉さん」は限定的だと思っていたのである。
つまり昨日迄「奥さん」は「お姉さん」に勝ると考えていたのだ。
たとえば落とし物をした女性にその事を知らせたりする際、見知らぬ女性に対してはどう声を掛ければ良いのかも、昨日迄の私の認識の中では以下のように分類されていた。
1・お嬢ちゃん 小学生以下
2・お嬢さん 中・高生
3・お姉さん 女子大生以上
〜せいぜい30代前半
4・奥さん 新妻・おばさん世代〜
おばあちゃん世代迄
オールラウンダー
しかし昨日上記のうち私の「お姉さん」、と、「奥さん」の認識が完全に入れ替わっている事が判明。
昨日の事である。
或る女性がコートのウエストを結んでいたもの(コートと同じ生地)、と、思しきベルトを私の眼の前て落下させた。
私はたまたまその女性の後ろを歩いていたのだが、気が付いたので持主に返してあげるべくベルトを拾った。
後ろ姿なのではっきりとは分からないが、その女性の年の頃は恐らく40代かそれ以上。
服装の感じから20代でない事だけは確か。
そこで私は無難に、「あの、すいません」
と、声を掛けたが前を歩く女性の耳には届いていないようで、もう1度今度は、「あの、奥さん、すいません」、と、昨日迄はオールラウンダーだと思っていた呼称で呼んでみた。
しかしまたまた気付いてくれない。
それなら何と声を掛け直すべきか?
再考した結果「おばさん」では失礼だし、さすがに「お嬢さん」には無理がある。
まさか肩を叩いたり身体に触れる訳にもいかないから、やはりここは「奥さん」、と、声を掛けるしかない。
そう確信した。
が、しかし、他を試してみるべきかも。
と、そう思い直した。
それにそう呼んでも怒られはしないと思う。
そこで今度は横に並ぶ処まで行って、少し無理はあるかも知れないが、マスク越しなので思い切って声を張って言ってみた。
「あの、お姉さん!」、と。
するとその女性がマスク越しにも眼を微笑ませながら、「はい」、と、こちらを見返して来るではないか。
直後「落とし物ですよ」、と、私が返すと、女性は恐縮しながら私の手からウエストベルトを受け取り、「ありがとうございます」、と、笑顔で応じてくれた。
次いで私は「いえ」、と、だけ返し平静を装ってその場を離れた。
その女性は何か凄く機嫌が良さそうだった。
ここで既にお分かりの方もいらっしゃるだろうが、その女性は当初の私の予測通りマスク越しにではあるが、どう見ても「奥さん」か、或いは「おばさん」なのである。
綺麗な人だったが、明らかに私の昨日迄の認識に於ける「お姉さん」ではない。
恐らく私の当初の予測通り、40代かひょっとすると50代も有る。
しかし彼女の認識の中で、自身は「お姉さん」なのである。
幾ら声を張っても、「奥さん」では気付いてくれない筈だ。
やはり「お姉さん」は強い。
斯くも「お姉さん」がオールラウンドだったとは、終ぞ知らなかった。
歌舞伎町のキャッチのお兄さんは、それ等の事を総て理解した上で、「お姉さん」、と、呼んでいたのである。
それに考えてみれば仮にそれがミステークであっても、それは全然オッケーなミステイクで、むしろ喜ばれるのだ。
これからも迷ったら「お姉さん」で行く。
と、その時或る事が脳裏を過ぎった。
一体女性は何歳迄お姉さんなのだろう、と。
限界に挑戦する意味で、今度70代以上のお婆ちゃんに話し掛ける機会があれば、言ってみる事にする。
大きな声で「お姉さん」、と。
重ねて歌舞伎町に居るキャッチのお兄さんが何故女性なら誰彼構わずに、「お姉さん」、と、言って近寄って行くのかも理解が出来た。
とは言え昨日或る体験をする迄の私は、「奥さん」がオールラウンダーで、「お姉さん」は限定的だと思っていたのである。
つまり昨日迄「奥さん」は「お姉さん」に勝ると考えていたのだ。
たとえば落とし物をした女性にその事を知らせたりする際、見知らぬ女性に対してはどう声を掛ければ良いのかも、昨日迄の私の認識の中では以下のように分類されていた。
1・お嬢ちゃん 小学生以下
2・お嬢さん 中・高生
3・お姉さん 女子大生以上
〜せいぜい30代前半
4・奥さん 新妻・おばさん世代〜
おばあちゃん世代迄
オールラウンダー
しかし昨日上記のうち私の「お姉さん」、と、「奥さん」の認識が完全に入れ替わっている事が判明。
昨日の事である。
或る女性がコートのウエストを結んでいたもの(コートと同じ生地)、と、思しきベルトを私の眼の前て落下させた。
私はたまたまその女性の後ろを歩いていたのだが、気が付いたので持主に返してあげるべくベルトを拾った。
後ろ姿なのではっきりとは分からないが、その女性の年の頃は恐らく40代かそれ以上。
服装の感じから20代でない事だけは確か。
そこで私は無難に、「あの、すいません」
と、声を掛けたが前を歩く女性の耳には届いていないようで、もう1度今度は、「あの、奥さん、すいません」、と、昨日迄はオールラウンダーだと思っていた呼称で呼んでみた。
しかしまたまた気付いてくれない。
それなら何と声を掛け直すべきか?
再考した結果「おばさん」では失礼だし、さすがに「お嬢さん」には無理がある。
まさか肩を叩いたり身体に触れる訳にもいかないから、やはりここは「奥さん」、と、声を掛けるしかない。
そう確信した。
が、しかし、他を試してみるべきかも。
と、そう思い直した。
それにそう呼んでも怒られはしないと思う。
そこで今度は横に並ぶ処まで行って、少し無理はあるかも知れないが、マスク越しなので思い切って声を張って言ってみた。
「あの、お姉さん!」、と。
するとその女性がマスク越しにも眼を微笑ませながら、「はい」、と、こちらを見返して来るではないか。
直後「落とし物ですよ」、と、私が返すと、女性は恐縮しながら私の手からウエストベルトを受け取り、「ありがとうございます」、と、笑顔で応じてくれた。
次いで私は「いえ」、と、だけ返し平静を装ってその場を離れた。
その女性は何か凄く機嫌が良さそうだった。
ここで既にお分かりの方もいらっしゃるだろうが、その女性は当初の私の予測通りマスク越しにではあるが、どう見ても「奥さん」か、或いは「おばさん」なのである。
綺麗な人だったが、明らかに私の昨日迄の認識に於ける「お姉さん」ではない。
恐らく私の当初の予測通り、40代かひょっとすると50代も有る。
しかし彼女の認識の中で、自身は「お姉さん」なのである。
幾ら声を張っても、「奥さん」では気付いてくれない筈だ。
やはり「お姉さん」は強い。
斯くも「お姉さん」がオールラウンドだったとは、終ぞ知らなかった。
歌舞伎町のキャッチのお兄さんは、それ等の事を総て理解した上で、「お姉さん」、と、呼んでいたのである。
それに考えてみれば仮にそれがミステークであっても、それは全然オッケーなミステイクで、むしろ喜ばれるのだ。
これからも迷ったら「お姉さん」で行く。
と、その時或る事が脳裏を過ぎった。
一体女性は何歳迄お姉さんなのだろう、と。
限界に挑戦する意味で、今度70代以上のお婆ちゃんに話し掛ける機会があれば、言ってみる事にする。
大きな声で「お姉さん」、と。