第53話 犬やうさぎのぬいぐるみストラップの女性こと、歩きスマホの女性
文字数 1,600文字
昨年の秋口だったと思う。
所要で新宿迄出掛けた時の事私の直ぐ前を行く女性が列から外れて横に寄るでも無く、スマホを一瞥して仕舞うでもなく、単に歩調を緩めて歩きスマホをし始めたのだ。
迷惑したのは後続の私だけではない。
そのせいで歩調を緩めなければならなくなった私は、直ぐ後ろから来た女性と衝突寸前になり、不本意にもその後続の女性に私が謝罪する羽目になったのである。
直後列から外れて歩きスマホの女性の方を見遣ると、私の事等何処吹く風で尚も歩きスマホを続けているではないか。
空いた口が塞がらないとはこの事。
どんな女なのか顔が見てみたい、と、彼女の横から追い付き追い越すと、或る特徴を発見。
勿論マスク越しで顔は見えなかったのだが、その女性は背負っていたリュックに犬のぬいぐるみストラップを付け、また胸に大きなうさぎのぬいぐるみを貼り付けたセーターを着ていたのである。
それ以来私は人混みを歩いていて、前を行く女性が犬やうさぎのぬいぐるみストラップを付けていた場合、必ず避ける事にしている。
加えてセーターに、犬やうさぎのぬいぐるみを貼り付いていた場合もだ。
年が明けて正月を過ぎた頃だったと思う。
私の前を行く女性のバッグに、うさぎのぬいぐるみストラップが付けられていた。
発見した私が直ぐに列から外れ横に避けた事は言う迄も無い。
と、直後の事である。
果たせるかなうさぎのぬいぐるみストラップの女性が、歩きスマホを始めた。
歩調が緩んだ彼女は後から来た女性と衝突。
やはり私の発見した法則は正しい。
胸中にそう呟いた私は歩道の端の邪魔にならない処で立ち止まり、振り返ってその後の2人の様子を見守った。
と、互いが互いに謝まっているではないか。
ん?
後続の人が謝罪する必要有るか。
と、思ったのだが、何と、良く良く見ると、後続の女性も歩きスマホをしていたようで、手にはスマホをバッグには犬のぬいぐるみストラップを付けていたのだ。
そりゃ、2人衝突するわな。
と、その日はこの法則に感謝したものだ。
ところが昨日の事である。
私の前を行く女性が何となく流れに乗れておらず、歩用もしっかりとしていない感じで、一瞬避けようかとも思った。
しかし犬やうさぎのぬいぐるみストラップ等付けていないようだし、後ろから見た限りでは服装にもそうした気配は見られない。
因って法則上は大丈夫。
そう思ってそのまま進んだ。
と、その女性がいきなり歩調を緩め、歩きスマホをし始めたのだ。
直ぐ後ろに居た私は対処出来よう筈もない。
堪らずぶつかってしまった。
すると前の女性は振り返り、「あ、ごめんなさい」、と、謝ってくれたのだが、その刹那私は法則が間違っていない事を悟ったのである。
見切れなかったのは私の方だった。
何となれば小さくて確認し難いとは言え、その女性がうさぎのぬいぐるみピアスをしていたからだ。
その時の私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
どうせならもうちょっと分かり易い処にサイン出してよ、と、胸中に呟いた私。
と、同時に、法則は絶対だと確信を深めた。
しかし花のストラップを付けたり、花柄の服やスカーフの女性も多いが、何故かその人達にはこの法則が当て嵌らない。
犬やうさぎのぬいぐるみストラップやセーターの人に限って当て嵌るのだから、不思議だ。
思うにそうした愛玩動物のぬいぐるみを身に付ける女性は、動物を愛する事の出来る寛容な性格の持主なのだと思う。
しかし反面周囲の人の流れや、或いは空気を読む事が苦手なのかも知れない。
言える事は犬やうさぎのぬいぐるみを身に付けている女性は絶対に歩きスマホをしない事。
また犬やうさぎのぬいぐるみを身に付けている女性が自身の前を歩いている時は、必ず横に避ける事である。
そしてこの法則は夢々疑うことなかれ、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。
所要で新宿迄出掛けた時の事私の直ぐ前を行く女性が列から外れて横に寄るでも無く、スマホを一瞥して仕舞うでもなく、単に歩調を緩めて歩きスマホをし始めたのだ。
迷惑したのは後続の私だけではない。
そのせいで歩調を緩めなければならなくなった私は、直ぐ後ろから来た女性と衝突寸前になり、不本意にもその後続の女性に私が謝罪する羽目になったのである。
直後列から外れて歩きスマホの女性の方を見遣ると、私の事等何処吹く風で尚も歩きスマホを続けているではないか。
空いた口が塞がらないとはこの事。
どんな女なのか顔が見てみたい、と、彼女の横から追い付き追い越すと、或る特徴を発見。
勿論マスク越しで顔は見えなかったのだが、その女性は背負っていたリュックに犬のぬいぐるみストラップを付け、また胸に大きなうさぎのぬいぐるみを貼り付けたセーターを着ていたのである。
それ以来私は人混みを歩いていて、前を行く女性が犬やうさぎのぬいぐるみストラップを付けていた場合、必ず避ける事にしている。
加えてセーターに、犬やうさぎのぬいぐるみを貼り付いていた場合もだ。
年が明けて正月を過ぎた頃だったと思う。
私の前を行く女性のバッグに、うさぎのぬいぐるみストラップが付けられていた。
発見した私が直ぐに列から外れ横に避けた事は言う迄も無い。
と、直後の事である。
果たせるかなうさぎのぬいぐるみストラップの女性が、歩きスマホを始めた。
歩調が緩んだ彼女は後から来た女性と衝突。
やはり私の発見した法則は正しい。
胸中にそう呟いた私は歩道の端の邪魔にならない処で立ち止まり、振り返ってその後の2人の様子を見守った。
と、互いが互いに謝まっているではないか。
ん?
後続の人が謝罪する必要有るか。
と、思ったのだが、何と、良く良く見ると、後続の女性も歩きスマホをしていたようで、手にはスマホをバッグには犬のぬいぐるみストラップを付けていたのだ。
そりゃ、2人衝突するわな。
と、その日はこの法則に感謝したものだ。
ところが昨日の事である。
私の前を行く女性が何となく流れに乗れておらず、歩用もしっかりとしていない感じで、一瞬避けようかとも思った。
しかし犬やうさぎのぬいぐるみストラップ等付けていないようだし、後ろから見た限りでは服装にもそうした気配は見られない。
因って法則上は大丈夫。
そう思ってそのまま進んだ。
と、その女性がいきなり歩調を緩め、歩きスマホをし始めたのだ。
直ぐ後ろに居た私は対処出来よう筈もない。
堪らずぶつかってしまった。
すると前の女性は振り返り、「あ、ごめんなさい」、と、謝ってくれたのだが、その刹那私は法則が間違っていない事を悟ったのである。
見切れなかったのは私の方だった。
何となれば小さくて確認し難いとは言え、その女性がうさぎのぬいぐるみピアスをしていたからだ。
その時の私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
どうせならもうちょっと分かり易い処にサイン出してよ、と、胸中に呟いた私。
と、同時に、法則は絶対だと確信を深めた。
しかし花のストラップを付けたり、花柄の服やスカーフの女性も多いが、何故かその人達にはこの法則が当て嵌らない。
犬やうさぎのぬいぐるみストラップやセーターの人に限って当て嵌るのだから、不思議だ。
思うにそうした愛玩動物のぬいぐるみを身に付ける女性は、動物を愛する事の出来る寛容な性格の持主なのだと思う。
しかし反面周囲の人の流れや、或いは空気を読む事が苦手なのかも知れない。
言える事は犬やうさぎのぬいぐるみを身に付けている女性は絶対に歩きスマホをしない事。
また犬やうさぎのぬいぐるみを身に付けている女性が自身の前を歩いている時は、必ず横に避ける事である。
そしてこの法則は夢々疑うことなかれ、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。