第49話 胸キュン男子こと、セクハラと紙一重な男子

文字数 2,097文字

 昨夜はフジテレビの夜ドラ、「知ってるワイフ」、を見ていた。
 大倉忠義と広瀬アリスのダブル主演のドラマで、前の人生で建石澪(広瀬アリス)と夫婦だった剣崎元春(大倉忠義)が、やり直した人生で全く違う女性と結婚している、と、言う設定のドラマである。
 ストーリーやキャスティングの詳細は、フジテレビのホームページでチェックして欲しい。
 凄く面白いドラマで毎週欠かさずに観ているのだが、昨日以下のようなシーがあった。

○剣崎元春が主任として勤める銀行の同僚の女性行員に、年下の後輩行員が告白するシーン。
 銀行の社員用休憩スペースでの出来事。

 「123でキスするから、嫌なら避けて」
 そう言って後輩男子行員が女性行員にキスしようとするも、後輩男子行員は女性行員に「馬鹿じゃないの!」、と、言われ、挙げ句突き飛ばされてしまう。
 その後に後輩男性行員の曰く。
 「○○さんが好きだから。
  今言わないと後悔すると思ったから」
 
 と、まぁ、大体以上のような内容だったと思うが、セリフの細部が間違っていたらご勘弁願いたい。
 所謂「胸にキュンキュン来る」シーンで、或いは中高年世代の言い方をすると、「胸にグッと来る」シーン、と、言った処か。
 またそのシーンのラストで女性行員が休憩スペースからの去り際、「馬鹿じゃないの!」、と、言い放った直後の彼女の表情を観る限りでは、満更でも無い様子。
 しかーし、である。
 これは女性が満更でもなかったから通用する話であって、その女性が生理的に受け付けないタイプの男性からそれをされたらどうか。
 そんなものはセクハラ以外の何物でもない。

 つまり「胸キュン」、と、「セクハラ」は紙一重ではないのか、と、言う事。
 昔から「天才」と「狂人」は紙一重と言うが、その言葉の類語と言っても過言ではない。
 その事を表現するのに非常に良い例が、前述のドラマのワンシーンだったのである。
 然るに実社会でのその行為の実現は難しい。

 例えばちょっと前に一世を風靡した、「壁ドン」なる行為や、好きな男性に頭をポンポンとされる行為もその一種であろう。
 また前述のドラマの別のシーンに於いても、建石澪(広瀬アリス)が剣崎元春(大倉忠義)に頭をポンポンされてキュンキュン来るシーンが有るが、それは建石澪が剣崎元春に好意を寄せているから成り立つのだ。
 受け手の女性にしてみれば生理的に嫌いな相手からされる頭ポンポンは、気持ち悪いセクハラに他ならないだろうし、況してやそんな相手に壁ドンでもされようものなら、下手をすると性的暴力とも取られ兼ねない。
 そのようにとかく実社会では、「キュンキュン」するシチュエーション、と、言うものは実現し難い。
 とは言え現実的且つ平凡なアプローチの告白を俳優陣にさせても、恋愛ドラマが面白く無いのは自明である。

 だからこそドラマや二次元の世界では強く「胸キュン」を求められるのだろうし、また製作サイドもそれに応えようと、非日常的な男女の物語をこれでもかと言わんばかりに描く。
 ところが実社会では「○○ハラスメント」、と、言う脅威が付き纏う。
 残念だがそれが現実なのである。

 例えばドラえもんが居て、「満更でも無いセンサ〜! これさえあれば相手が満更でも無いかそうじゃ無いかが、直ぐに分かるんだぁ」、とか言って、四次元ポケットから、「満更でも無いセンサ〜」を取り出して来てくれるのなら話は別だ。 
 が、しかし、そんな物が実際に開発されるとして、それは何時の話になる。
 100年後の話ならいざ知らず、今を活きる我々には縁のない話だ。
 現実的に平凡なシチュエーションでの告白しか出来ないのか?
 実社会に於いては女性に夢を与える事は出来ないのか?  
 しかしそんな事は、〇〇ハラスメントが無ければ、と、言う前提の基になる。
 何とも夢の無い話である。
 
 それにしてもハラスメントの種類の多い事。
 ざっと思い付くだけでも、6つ。

 1・セクシャルハラスメント
 2・パワーハラスメント
 3・モラルハラスメント
 4・マタニティハラスメント
 5・アルコールハラスメント
 6・ジェンダーハラスメント  

 他にも色々有ってキリがない。
 そう言えば以前休業前に職場で、定年後嘱託でアルバイトしていたOBの先輩と話していた時の事、「今はさぁ、ちょっと言うとハラスメントとか言われてさぁ、やり難くてしゃあねえわなぁ。何だってハラスメントっつう事になっちまうんだからよぉ」、と、先輩。
 咄嗟に、「そうっすよねぇ。例えば鮭のハラスが喰えねぇ奴に無理矢理ハラス喰わせたら、ハラスハラスメントっつう事になっちまいますからねぇ。馬鹿らしくてしゃあないっすよねぇ」、と、私。
 直後先輩が吹き出して、「馬鹿野郎、面白ぇじゃねえかよ」、と、やたら大受けしたのを思い出した。

 と、言うことで、「ハラスハラスメント」なんかを気にするのも馬鹿馬鹿しい。
 確かにハラスメントはしてはいけない事だが、気にし過ぎては人生を愉しめない。
 時には愛する人の為に、危険を覚悟でサプライズを演出する事も必要なのでは、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。

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