第35話 階段3段飛ばし男子こと、柔道選手の男子

文字数 705文字

 先日の事であるが新宿の地下街で階段を下りている時、私の前に階段を下りている大学生と思しき男子が居た。
 その男子が階段を3段程飛ばしで下りていたのだが、それが何とも危なっかしくて何か嫌な予感がしたのである。 
 と、思った次の刹那、見事に予感は的中。
 後もう少しで階下に下り立つ、と、言う処で彼はステップを踏み外してしまったのだ。
 あ、ヤバイ。
 私がそう思った事は言う迄もない。  
 が、しかーしである。
 彼は階下でクルッ、と、1回転したかと思うとスック、と、立って見せた。
 まるで柔道とか合気道の受け身のように。
 と、ここ迄なら、武道やってて良かったよねえ、彼。
 それで終わってしまう話なのだが、ここからが彼の凄い処。

 何とその後彼は1人で柔道の乱取りと言うか打ち込み、と、言うか、シャドウボクシングならぬシャドウ柔道を始めたのである。
 宛らさっきコケたのも、それ等練習の一環だと言わんばかりに。 
 うーん。
 なる程そう言う訳か。
 彼は照れ隠しに、受け身からのシャドウ柔道と言う奇策に打って出たのである。
 その後何事も無かったように去って行った彼であったが、まぁ、兎に角無事で良かった。
 そう思ったと同時にそう言えば自分も以前に転んだ時、咄嗟に腕立て伏せをした事を思い出したのである。
 やはり転ぶと身体の無事よりも照れ隠しに走ってしまうのが、人情と言うものなのだろう。

 と、言う事で、このコロナ禍である。
 皆様方にはコロナに感染しないよう留意して戴くと共にくれぐれも転んで怪我をせぬよう、また照れ隠しをしなくて済むよう祈念する。
 やはり階段は3段飛ばしで下りてはならないのだ、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
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