第84話 鼠御殿帰りのギャル二人組こと、ボンジュールなギャル達

文字数 2,132文字

 先日より「女性」並びに「お姉」3人組について書いて来たが、今日は「女性」2人組について考察した結果を披露したい。
 私の調査に於いて最も顕著に現れた事象は、「女性」2人組は概ね同じ物の考え方をする似た者同士の組み合わせが多い、と、言う事。
 また凄く親密な関係のペアが多いのだ。

 先ずは同じような服のセンスをしている。
 カジュアル系の服を着た女性は同様にカジュアル系の服を着た女性とペアを組み、ギャル系の服を着た女性はギャル系の服を着た女性とペアを組んでいる場合が多い、と、言う具合だ。
 例えば「下妻物語」、と、言っても公開は今から遥か17年前になるから、中高生を始めその辺りの若い世代には馴染みが無いかもだが、ヤンキーの女子とロリータ女子の物語である。
 ところが実際には、その「下妻物語」のような組み合わせの女子達は殆ど皆無に等しい。
 つまり2人だけの関係である以上は親密な関係を築くのだろうし、必然的に同じような価値観を持っている、と、言う事だ。

 先日も新宿の街を歩いていると、カジュアル系女子2人組とギャル系女子2人組のペア2組が、前から同時に歩いて来ていたのである。
 と、ギャル系女子達がわざわざ首を巡らせて迄熱い視線を贈っている人物が居た。
 興味津々でその方向に視線を向けてみると、そこにはやはりマスク越しにもイケメンと思しき男子が居た。
 なる程ギャル系2人の目に留まったのだ。
 が、しかし、カジュアル系女子達は2人共何処吹く風、と、シカト状態なのである。
 何とも象徴的ではないか。
 これはどう言う事か。
 ここで私なりにこの現象についてジャッジさせて戴くと、ギャル系女子達に取っては注目すべき男子であっても、カジュアル系女子達に取ってはチャラ過ぎる、もしくは派手に過ぎる、と、言った感触だったように見受ける。
 因って彼女達はスルーを決め込んだのだ。

 してみるとそれぞれのペアの女子達は同じタイプの男に興味を持つと同時に、興味を持たないタイプの男も同じだと言う事になる。
 つまり好きになる男がカブる可能性が高い。
 そう言えばドラマや映画で男がカブって血深泥の愛憎劇に発展する女友達の話も、3人組ではなく2人組ペアの女性の場合が多いような気がする。
 それも裏返せば価値観が共通する似た者同士だから起こる事と言えよう。
 その事を決定付ける出来事が、今日の派遣バイトからの復路に起こった。

 復路の電車の中で運良く座れた私は久し振りにゆったりとシートに座っていたのだが、次の駅で結構な数の乗客が乗り込んて来た。
 こっちは仕事帰りだと言うのに日曜だからなのか、あの浦安の鼠御殿のショッピングバッグを持っている乗客が目立つ。
 私は3人掛けの優先席に座っていたので、もしマダムが乗って来て席をお探しなら譲る気で居たのだが、有ろう子か私の隣席に身体を押し込んで来たのは、黒のミニスカワンピースの「JK」だか「JC」だかの2人組。
 例に漏れず二人して「シー」だか「ランド」だかの、鼠印のショッピングバッグを提げており、ご丁寧に鼠の耳を模したカチューシャ迄していた。
 それにマスク越しにもアイメイクがバッチリの、「ザ・ギャル」2人組である。

 別に聴き耳を立てた訳ではないのだが、自然と聴こえて来た2人の会話。

 言い出しっぺのギャルの曰く。
「言うの忘れてたんだけどぉ。
 さっきあんたがトイレ行ってる時さぁ、黒人に英語で話し掛けられてさぁ、怖くない?
 ボンジュールとかってさ、英語で言って来んだよ、ゴツい黒人がさぁ。
 凄ぇ怖かった」
 と、ここで皆様方既にお気付きの事と思うが、彼女の言った「ボンジュール=bonjour」は、勿論英語では無くフランス語である。
 私も聴いた直後は、「ゲッ、マジで」、と、思ったが、但しこれは飽く迄もペアの内1人が言った事であって、当然もう一人が突っ込むものだろうとばかり思っていた。
 が、もう一人のギャルが、以下の如く応じたのである。
「怖いよねぇ、つか、英語でこんにちわ言われてもねぇ」
 と、意味は合っているもう一人のギャル。
 次いでもう一人のギャルの言葉に感心する、言い出しっぺのギャル。
「へぇーっ、そうなんだ。
 英語でボンジュールってこんにちわなんだ」
 と、未だに気付いていない様子の言い出しっぺのギャルに、今度こそボンジュールがフランス語だと言及する筈のもう一人のギャル。
「確か英語でその意味の筈」
 と、私の期待を見事に裏切ってみせたもう一人のギャルの言葉に、押し被せるように駄目を押す言い出しっぺのギャル。
「あんた頭いいんじゃん」、と。

 皆様方にはもうお分かり戴けたかと思う。
 そうなのである。
 冒頭より私は2人組の女性は、概ね同じ物の考え方をする似た者同士の組み合わせが多い、と、言う持論を展開したが、正にその事を証明する会話を提供してくれた2人なのであった。

 ここで一つ。
 今夜のギャル2人組には、3人組になってみてはどうだろうかと提案したい。
 是非共ボンジュール=bonjourがフランス語だと突っ込みを入れてくれる、第3の友人を見付けて戴くよう恐惶謹言させて戴く。
 それだけで済む問題では無いかとも思うが、取り敢えずはそれで。
 かしこ。
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