第114話 「何ちゃってJK」に扮した「JK」達こと、理解不能な「JK」達

文字数 1,988文字

 実はこのゴールデンウィーク期間中新宿の某大手書店では、「ポイント2倍キャンペーン」を開催していたのである。
 私はこうしたポイントキャンペーンには滅法敏感で、必ず参加するタイプなのだ。

 例に漏れずその書店へと出掛けた昨日の事。
 夕方地下街を歩いていたのだが、淡いピンクのカーディガンを羽織った「JK」と思しき女子と、隣には淡いブルーのカーディガンを羽織った少しちっちゃ目のこれまた「JK」と思しき女子が、私の少し前を歩いていた。
 左側を歩いていた淡いピンクのカーディガンの方がゴールド掛かった髪色で、右側の淡いブルーのカーディガンの方が黒髪ストレートでどちらもセミロング。
 2人共チェックのミニスカートを履いていたのだが、後ろ姿しか分からないので、「コスプレJK」か、もしくは「何ちゃってJK」なのかも知れない。
 何と言っても昨日はみどりの日。
 学校が遣っていよう筈も無いのである。

 しかし近頃は「JK」で無い世代の人の「コスプレJK」よりも、本物の「JK」達に拠る「何ちゃってJK」が流行っているらしい。
 殊に休みの日浦安に在る「鼠御殿」や、或いは「鼠の海」等のテーマパークに出掛ける際、本物の「JK」達が「何ちゃってJK」に扮するのが最早慣例のようになっているのだとか。
 何ともややこしい話なのだが、例えば私服の高校に通っている「JK」達に多く、私服で良いのにわざわざ好みの制服を着るらしい。
 何でも自身が正真正銘の「JK」で有ると言う自負を満たす為の、最も有効な表現方法であるからだとか。
 まぁ、早い話が自分は「JK」なのだ、と、手っ取り早く周囲に分からせたいのである。

 何れにせよ私の眼の前を歩いていたのは、2人の「コスプレJK」、もしくは「なんちゃってJK」だ。
 またまるでカップルのように左側の「JK」女子が、右側の「JK」女子の腰を抱くようにして歩いていた。
 すると何とした事か、左側を歩いていた「JK」女子が、右側の「JK」女子のお尻を触ったのだ。
 しかもスカートの中に手を突っ込んで、だ。
 私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
 一瞬立ち止まり棒立ちとなった。  
 それなのに触られた方の右側の「JK」女子は、微動だにしないのである。

 これってどう言う事?

 と、私が思うよりも早く、左側の「JK」女子が微笑みながらこちらを振り返った。
 先程のヒップタッチを後ろに居る私に見られたかどうか、確認する為なのであろうか。
 何れにしても肌艶からして、少なくとも振り返った彼女は本物の「JK」で、どうやら「何ちゃってJK」に扮しているようである。
 と、そこで、良く良く考えるとその地下街を私達の進行方向に進んだ先には、「新宿二丁目」が在る事を思い出した。

 これで疑問は解決。

 してみると彼女達は同性愛者の所謂「ビアン」と呼ばれる女性達なのか、それともどちらかの女性もしくは両者共LGBTのカップルなのか。
 とは言え私の勘違いの可能性も有る。
 単に悪戯けしただけだったのかも知れない。
 しかしどちらにせよ私は少し先の書店の下辺りで、左に折れて上りエスカレーターに乗る。
 そこで彼女達とはお別れだ。
 と、思いきや、何と彼女達が私の目的地と同じ書店へと通じる上りエスカレーターに、左に折れるや一足先に乗ったのである。

 まさか彼女達も書店へ行くのか、と、思っていると、何とそのまさかであった。
 ここで既に「新宿二丁目」へ向かう説は崩れ去った。
 と、なると、さっきのあの行為は単なる悪戯けだったのか。
 そうして例の「JK」女子達は地上階に着くと、一階を素通りしてコミックや文庫本の置いてある2階へと向かうエスカレーターに乗り換えた。
 私は少し距離を置いて後を追ったのだが、やはり、と、言うべきか、然も有りなん、と、言うべきか、彼女達はコミックのコーナーへ。

 そうかぁ、少女漫画かぁ。

 そう思っていたのだが、何と2人の「JK」女子達は「BLコミック」のコーナーへ。
 そこで私が再び、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
 2人共黒マスクを着けており、表情は目許しか見えないものの幸せそうに微笑んでいた。

 話を整理すると、「何ちゃってJK」に扮した「JK」が、連れの「何ちゃってJK」に扮した「JK」のお尻を触り、お尻を触った方も触られた方も、2人共連れだって「BLコミック」コーナーへ行くような、腐女子だったと言う事である。
 うーん。
 単なるジェネレーションギャップで片付けられる問題では無いと思うのだが、何れにしても
到底理解出ない。
 
 と、ここで一つ。
 そうした「何ちゃってJK」に纏わる椿事に秘められた真意を、単なる親爺である私が理解出来なくて良かったのだ、と、皆様方に恐惶謹言させて戴く。
 何となれば理解出来るとなると、その方が問題だからだ。
 かしこ。
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