第111話 常に立ち続ける女子達こと、「助平親爺」ホイホイの女子達

文字数 1,277文字

 新宿のと或る大通り沿いに、昼であろうが、夜であろうが、常にその前に10代後半~20代と思しき女子が立っている雑居ビルが在る。
 その女子達とはガールズバーの「ガールズ」であり、また呼び込みでもある。
 但し呼び込み、と、言っても、声を掛ける訳ではない。
 単に立っているだけなのである。
 それだけで給料が貰えるんだったら良いよなぁ、と、思うかも知れない。
 が、これがどうして、寒い時期にもダウンを着てずっと立っていなければならないのだから、大して楽な仕事とは言え無い。
 スマホを弄るのは自由なようだが、座ってはいけないようである。
 そうして彼女達からは声を掛ける事も無く、ずっと立ち続けているのだ。
 恐らく声を掛けると通行妨害と取られたり、キャッチ行為と取られたりするからだろう。
 畢竟お客に声を掛けられる迄、立ち続けていなければならないのである。
 そう言う意味ではその女子達も大変である。

 と、まぁ、一年中人が変わっても、兎に角ビルの前に女子を立たせている店なのだ。
 それはたとえ緊急事態宣言が出ようが、雨が降ろうが、槍が降ろうがである。
 そんな事を緊急事態宣言下の今も尚続けていられると言う事は、その店に客が来ると言う事であり、またその店の経営が成り立っていると言う事になる。
 ところが私はお客がそのビルに入って行く処を、つい最近迄見た事が無かったのだ。
 しかし昨日の夜、遂にその瞬間を見た。

 その時正に「助平親爺」とでも言うべき、脚許の覚束無いホロ酔い加減のオジさんが、そこの女子達に話し掛けていたのだ。
 頭にはキャップを被り、マスクをしているにはしているが、顎マスクのオジさんであった。
 3人程の女子が居て、「助平親爺」を取り囲むようにしていたのである。
 マスク越しで可愛いかどうか釈然としないにも拘わらず、「助平親爺」は楽しそうである。
 と、そこへ黒服の男性従業員がやって来て、ほぼ連行するようにしてビルの中へ。  
 してみるとビルの前に立たせていた3人の女子達は、「助平親爺」に対する「餌」なのだ。
 で、女子を見てホイホイ話し掛けて来た「助平親爺」を、男性従業員が絡め取る。
 そう言うシステムになっているのだろう。

 まぁ、取って喰われる訳でも無かろうし、金を剥ぎ取られたとしても命迄は取られまい。
 それに何よりこの緊急事態宣言下の夜に、酔っ払って歩いていた「助平親爺」である。
 禁を破って営業をしている店に連れ込まれたからと言っても、彼に同情の余地は無い。
 そう思い定めてその場を後にした私。
 しかし心残りなのはその店のシステムを何処かで見掛けた気がするのだが、どうにもそれを思い出せ無かった事である。
 一体何のシステムだったか?

 と、部屋に戻り、ふと台所の下に置かれた或る物を見て、私は1人声を上げた。

「そうだよ。あれって、ゴキ◯リホイホイのシステムだよ!」、と。
 
 ここで一つ。
 各家庭に設置の「ゴキ○リホイホイ」に「ゴキ◯リ」が良く掛かるように、「助平親爺ホイホイ」にも「助平親爺」は良く掛かるようである、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
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