第125話  けしからん男こと、謎のワードの男

文字数 1,057文字

 昨日の早朝久し振りに朝食をファストフード店で摂ろうと、新宿へと向かうべく自宅アパートを出たその駅迄の通り道での事。
 車一台が漸く通り抜けれる程度の一方通行の道にタクシーが停車したかと思うや、運転手さんが開けたドアを手で持って、わざわざ客をお見送りしているのである。
 余程の人物が乗っているのだろうと思って、擦れ違いざま一瞥すると、何とそのお客の男性が今迄車中で眠っていたのか、寝起きのような寝惚け眼で運転手さんを見上げていた。

 恐らく20代男性であろう寝起きの客曰く。
「うんれんひゅはん、ふいまへぇん」

 これを解説すると恐らく、(運転手さんすいません)である。
 泥酔状態である事は言う迄も無い。
 運転手さんはマスクを着けているが、その酔っ払い男たるや完全に顎マスクになっている。
 全くけしからん男だ。
 と、その後に続けた彼の言葉で、何とも理解に苦しむ処があった。

 続いて彼の運転手さんに曰く。
「ほれはら、ほぉいえちりにも、あやまっといれね~。
 おさけのんれ、すいまふぇんて。
 ほぉいえちりにおこはれるぅー」

 そう言いながら同乗していた素面(しらふ)の男性に、引き摺られるようにして眼前のマンションの中へと入って行った酔っ払い男。
 ここでその酔っ払い男の言葉を解説すると、(それから◯◯◯◯にも謝っといてね~。お酒飲んですいませんて。◯◯◯◯に怒られる~)であろうが、この◯◯◯◯=ほぉいえちり、が、どうにも理解出来ず、恐らくは人物名が入るのだが、外国人なのだろうか、或いは(ほぉいえ)が(大家・おおいえ)で、(ちり)だから千里もしくは千里の、大家千里か大家千里子なのだろうか。
 全く謎であった。
 しかし何と言ってもこの緊急事態宣言下に泥酔して朝帰りとは、けしからん事この上無い。
 彼は誰かに叱られるべきである。
 全く何と言う馬鹿な奴だ。

 そうして一時はかなり憤慨したのだが、朝食を摂った後自宅アパートに戻り、全く酔っ払い男の事を忘れていた私。
 その後帰宅した私はテレビを見ていたのだが、と或るニュース番組で都内の深刻な感染状況に関して、自宅で自粛を呼び掛ける「小池知事」の姿が写し出されたのである。
 と、私は咄嗟に朝のけしからん酔っ払い男の事を思い出した。
 そうなのである・・・・・。
 
 ここで一つ。
 皆様方既にお分かりの方もいらっしゃると思うが、◯◯◯◯の(ほぉいえへちり)は大家千里でも大家千里子でも無く、「小池知事」だったのである、と、恐惶謹言させて戴く。
 全くあの男小池知事に叱って貰わないと!
 かしこ。
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