第83話 髭面スカート男こと、「なまはげスカート」

文字数 1,478文字

 先日昼過ぎの事公衆電話のボックスの中で、楽団の指揮者宜しく両手を振って猛アピールする髭面に帽子の男性が居たのである。
 無論両手を振って迄アピールしている相手は他でも無い、私からは見えない通話相手だ。
 そんな彼は物凄くがたいが良く、宛らプロレスラーのように良い体格をしていた。
 電話ボックスの中に居るからなのか、マスクを外しており見事なもみあげも見える。
 ところがふと彼の下半身を見ると、何と被っている帽子とお揃いのスカートを履いているではないか。

 私が「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無い。
 直後私は或るテレビCMを思い出した。
 赤城乳業「sof'(ソフ)」の、「なぜか上だけおっさんガール」、と、言うキャッチフレーズの、首から下がミニスカートの女子で、首から上が禿げのオジサンがダンスをするテレビCMである。
 それに以前放送されたドラマも思い出した。
 日テレの「俺のスカートどこいった」、だ。
 古田新太主演の学園コメディドラマである。
 古田新太演じる女装教師の主人公原田のぶおが巻き起こす、毎回の痛快ストーリーが肝のドラマだった。
 面白いドラマなので、毎週欠かさず観ていた事を思い出す。
 そんなドラマの主演古田新太を彷彿とさす、と、言うよりは、まだしも古田新太の方が観るに耐えれるのではないか。
 と、言うぐらい、電話ボックスの中の髭面スカートの彼のビジュアルは凄かった。
 否、凄いと言うよりは、怖い、と、言うべきであろうか。

 そうなのである。
 滅茶苦茶に怖いのだ。
 その怖さたるや以前私が「18R」と名付けた「プリキュア女装おじさん」よりも、「JK女装爆弾」と名付けた「野生爆弾クッキー似の女装おじさん」よりも、群を抜いて怖い。
 なので彼は、「なぜか上だけおっさんガール」や、「俺のスカートどこいった」、と、言う程コミカルなビジュアルではない。  
 そこで今後は彼の事を、「なまはげスカート」、と、呼ぶ事とする。
 秋田出身者ならずとも日本国民なら誰しもが知っている、あの、「泣ぐ子いねぇがぁ〜」でお馴染みの「なまはげ」こそ、彼に相応しい称号と言えよう。
 モジャモジャのもみあげの感じといい、身体のゴツさといい、スカートを藁のケラミノに見立てればそのまんま「なまはげ」だ。
 後は紙で作った包丁を持たすだけ、と、言った処か。
 余り長い間見ていると、「なまはげスカート」が私に気付かないとも限らない。
 と、そこで私は踵を返しその場を後にした。

 しかし彼の目的は何なのだろう?
 してみると仮に「なまはげスカート」が、「お姉」の類の「心は乙女系」な男だとしたら、少なくとも髭やもみあげは剃るだろうし、また彼が履いていたスカートはスコットランドの「キルト」のような、男性用のスカートでも無かった。
 彼が何故スカートを履いていたのか?
 やはりそれは全くの謎だ。
 しかし皆様方がもし新宿で、「なまはげスカート」を見付けたら、その人は絶対に私の見掛けた「なまはげスカート」と同一人物の筈。
 何故ならそんな人は彼以外にいないからだ。

 そこで皆様方には新宿にお出掛けの際、「なまはげスカート」には要注目である、と、恐惶謹言させて戴く。
 また「なまはげスカート」本人には、社会貢献の為、イジメをしている連中に喝を与えてやって欲しいと願う。
 別段何をしなくとも良い。
 顔を出すだけでイジメをしている連中は震え上がるだろうから。
 で、台詞は、「イジメっ子いねぇがぁ〜」で決まりである。
 是非共「なまはげスカート」には、社会貢献して戴くよう恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
 
 
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