第38話 泣き顔から笑顔の女子こと、それって計算?な女子

文字数 789文字

 昨日の事新宿の地下街でカップルの女子の方が、泣きながら相手の男の胸を叩いていた。
 また何事か大声で叫んでいる模様。
 無論赤の他人の私は、何故そんな事になったのかなど知る由もない。
 唯、余りにも酷い泣き方をしており、マスク越しではあっても、その女子のアイメークに限って言えば既に上野のパンダ状態だったのだ。
 私ならずとも目を惹いた筈。
 私なんぞは一瞥と言わず、立ち止まり遠巻きに暫くその様子を眺めていた程だ。
 私は胸中で、「あれは別れるなぁ」、と、呟いてその場を去った。
 
 その後百貨店でタイムセールのお弁当を購入し帰路に就いた私は、さっきの喧嘩しているカップルの居た場所を通った。
 しかし既にその姿は無く、二人の別れを確信したのである。

 あぁ、男女の仲と言うものは儚いものだ。
 金ではどうにもならんのが女心なのだな。

 と、感慨に耽っていた私だったのだが、熱帯魚屋さんに寄る用を思い出したので、踵を返して再び新宿三丁目方面へ。
 すると何とあの別れを確信させたカップルが、泣いていた場所からかなり離れた場所なのに、手を繋ぎ笑顔で歩いているではないか。
 マスク越しではあったが、服装等を再確認してみても間違いは無い。
 紛う事無き先程のカップルだ。
 しかも彼女の肩からは、「と或る高級ブランド」のペーパーバッグが・・・・・。

 お主やるな!
 と、私が思った事は言う迄も無い。
 してみるとあの泣きじゃくった事も、男の胸を頻りに叩いていた事も、或いは大声で叫んでいた事も、総ては計算?
 なのかどうかは分からないが、私が以下のように思った事だけはお伝えしておく。

 あぁ、男女の仲と言うものは儚いものだ。
 金ではどうにもならんのが女心なのかも知れないが、しかし「と或る高級ブランド」ならどうにかなるのかも知れない、と。

 この言葉を総ての彼女の居る男性に、恐惶謹言させて戴く事とする。
 かしこ。


 
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