第113話 夜叉VSまめヤッコ
文字数 2,264文字
「こっちから妙な音波を感じます。もしかしたら時空の歪かもしれません」
西王母が、加藤やハーデースたちを案内していると
ドピュー
と、西王母の両耳から血が吹き出した。
「間違いありません。あそこに時空の歪があります」
西王母が指さす方向に、微かに空間が歪んでいるのが見える。
ドボドボドボ
突然、西王母が大量の鼻血を吹き出した。
「あそこから鬼の匂いがします」
「わかりました。っていうか、西王母さん大丈夫ですか?ムッチャ血が出てますけど」
ヘスティアが心配して聞いた。
「だっ大丈夫ですよ。ううっ、何故か頭がクラクラする」
バタッ
血を大量に出しすぎて、西王母は倒れ込んだ。
「どうやら私はココまでのようです。みなさんは早く時空の歪に行って下さい」
「でも、西王母さん。アナタは死にかけているじゃありませんか」
「私の使命は終わりました。私のことは気にせずに行って下さい」
死にそうになりながらも、西王母は皆んなに行くように促す。
「西王母の犠牲を無駄にしてはいかん、行くぞ皆んな」
ハーデースの声掛けで、全員が時空の歪に向かって歩きだした。
すると
「ちょっと、その柴犬は置いて行きなさい」
倒れている西王母が、犬を置いて行くように言って来た。
「なぜです?」
なにか理由があるのかと思い、加藤が尋ねた。
「その犬は可愛いから、私が飼います」
「飼いますって、アナタは死にかけてますやん」
加藤は西王母を心配するが
「死にかけてはいますが、どうしても飼いたいので。早くその犬を渡しなさい」
「おいハーデース、その犬を渡してやれ。ケルベロスじゃないんだから良いだろ」
ポセイドンが面倒くさそうに言った。
「まあ良いけど。この西王母、大丈夫なのか?」
ハーデースは、心配しながらも柴犬を繋いでいるリードを西王母に渡す。
西王母は柴犬を受けとると
「これで、この犬は私の物です。さっそく名前をつけましょう、柴犬なので柴崎コウにしましょう」
嬉しそうに柴犬を撫でる西王母。
その様子を見ながら
「あの人、本当に死にかけてるのかな」
と、不信がっているハーデース。
「ほっとけ。俺たちは今から、白鬼と殺し合いに行くんだぞ」
ポセイドンは、それどころじゃ無いといった態度で、先に進んで行く。
「なんか損した気分だけど、仕方ない」
ハーデースも時空の歪に向かって行った。
夜叉の手刀が小太郎の首に触れる瞬間、何者かに手首を掴まれた。
「誰や!」
小太郎の処刑を邪魔されて、怒鳴る夜叉。
「拙者どすえ」
なんとか間に合った、まめヤッコであった。
「お前は、例の小娘」
と言いながら手首から、まめヤッコの手を振りほどこうとする夜叉であったが
「うおっ、なんて凄いパワーや」
あまりにも強い力で握られているため、振り解けない。
グシャ!
ついには、夜叉の手首が握りつぶされた。
「バカな、この俺が力負けするとは」
驚く夜叉。
「姉さん、来てくてたんや」
小太郎は、まめヤッコの姿を見ると元気が出たようで、立ち上がって再び刀を構え直した。
「お嬢ちゃん、気をつけるッス。この男の強さは異常ッスよ」
武蔵が忠告するが、負けずに小太郎が
「異常さなら姉さんも負けてまへんで」
と、言い張った。
「拙者の異常さは、FBIから24時間、監視されている程の異常さどすえ」
「さすが姉さん。何言ってるのか意味が全然わからへんし、相手するのもウザい異常者でんなぁ」
2人はゲラゲラと笑い出した。
「おのれら許さん」
腕を再生して修復し終えた夜叉は、魔導波動砲の構えをとる。
「あの技は、ヤバいッスよ」
武蔵が警戒する。
「大丈夫どすえ」
まめヤッコは、素早く夜叉の両手を掴んだ。
「離さんか、小娘!」
技を封じられた夜叉は、まめヤッコを振りほどこうとする。
「無駄どすえ。拙者のパワーは年会費100万円どすえ」
まめヤッコは、パワーの自慢をするが
「パワーの単位が間違っとるし、値段も高すぎやないかい!」
と、夜叉に突っ込まれた。
「いいえ。動画が見放題で、次回来店時には10%OFFとか、いろんな特典があるので、お得どすえ」
「うわっ、この娘。言ってる事が全然わからん」
戸惑う夜叉。
「そろそろ死んでもらうどすえ」
まめヤッコは夜叉の両手を掴みながら、呪文を唱え出した。
すると夜叉の身体が、勢いよく燃えだした。
「地獄の業火に焼かれて死ぬどすえ」
強大な炎に包まれて行く夜叉。
「おおっ、この娘、鬼神を圧倒しとる」
ボルデ本山は大喜びしている。
「さすが姉さんは無敵ですわ」
小太郎も安堵して喜んでいる。
「いや、みんな甘いッスよ。鬼神はこの程度では倒せないッス」
武蔵だけは警戒を解いていない。
「何言ってるんや武蔵。あれだけ燃えれば鬼神も死ぬやろ、って何じゃあれは!」
小太郎が驚くのも無理はなく、燃えさかる炎の中から、3メートル近くある黒い巨人が現れた。
巨人の頭部には2本の大きな角が生えており、口から鋭い牙がはみ出している。
「奴は死んで無かったのか。しかし、あの姿はまさに悪魔だ」
ボルデ本山が恐怖している。
「あれが鬼神の本来の姿ッス」
武蔵は一歩下がった。
「顔が怖いどすえ」
まめヤッコも怯えて後退して行く。
「おのれら、全員、生かして返さん」
夜叉は、怒りながら、ゆっくりと向かって来る。
DSPのメンバーは、最大のピンチを迎えていた。
が、その時。
「ちょっと待て!」
という声と共に助っ人が現れた。
「みなさん。この、妖怪尻ふきが来たからには安心して下さい」
妖怪尻ふきはDSPのメンバーに、そう言うと、夜叉に向かって行くのであった。
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