第100話 壺に封印するでござる
文字数 2,107文字
鬼塚が、お菓子を食べながら、まめヤッコとチェルノボーグ戦いを見ていると
「クソっ、あの野郎」
チェルノボーグにノックアウトされていたラスプーチンが、意識を取り戻した。
「やっと気がついたんか、お菓子でも食べるか?」
鬼塚がラスプーチンに『不潔ジジイのネチャネチャ焼き』を差し出す。
「そんな、気持ちの悪いもんが食えるか!」
ラスプーチンは、気が立っている。
「よく噛んで味わったら、意外と美味いで」
ネチャネチャと鬼塚は食べ続けている。
「舞妓さんが一人で戦っているというのに、お前らは何してんだ!」
まめヤッコとチェルノボーグの死闘を見て、ラスプーチンは、鬼塚とボルデ本山の2人を怒鳴りつけた。
「あわてるな、吾輩には奥の手がある」
ボルデ本山は、懐から壺を取り出しながら
「吾輩の魔力を見せてやるわ」
と、自信ありげに言った。
「お前、ただの舞妓じゃないな」
チェルノボーグは、まめヤッコの強さに気づいて驚いている。
「いいえ、ごく普通の舞妓どすえ」
と言いながらも、まめヤッコはドス黒い暗黒剣を振り回して、チェルノボーグに襲いかかる。
「そんな剣を振り回す舞妓がいるか!」
チェルノボーグが突っ込む。
「京都に行けば、たくさん居るどすえ」
デタラメを言いながら、剣での攻撃を続ける、まめヤッコ。
ブスッ
まめヤッコの剣がチェルノボーグの右手に刺さった。
「痛いなぁ」
と言いながらも、刺された所からは血も出ず、チェルノボーグには、ほとんどがダメージが無い。
「チェルノボーグには、なかなかダメージを与えられないようだな」
ボルデ本山は、壺に向かって呪文を唱えだした。
「何をしてるんだ」
と、ラスプーチンが尋ねた。
「吾輩の魔力で奴を、この壺に封印するのだ」
そう言うと、ボルデ本山は両手から封印エネルギー波を、チェルノボーグに向かって放った。
「なるほど。倒さなくても封印してしまえば良いわけか」
ーーもしかしたら上手く行くかもしれないーー
ラスプーチンは、微かに期待をよせた。
しかし、チェルノボーグは封印エネルギー波に気づき、素早く移動すると、まめヤッコの背後にまわりこむ。
「何してはるんどすか?」
何をしているのか良くわかっていない、まめヤッコ。
パシュー
エネルギー波が盾にされた、まめヤッコに直撃する。
「あれ〜、なんか体が引っ張られるどすえ」
まめヤッコは壺に吸い込まれて行く。
「お前は、俺の代わりに封印されるんだ」
チェルノボーグが面倒くさそうに言った。
「ヤバい。チェルノボーグの奴め、舞妓さんを身代わりにして防ぎやがった」
あせるボルデ本山。
「何とかならんのか?」
ラスプーチンは心配そうに聞いた。
「封印は嫌どす〜」
叫び声が響き渡り、まめヤッコが壺に吸い込まれてしまった。
ポン
壺のフタが閉まった。
「舞妓さんが封印されてしまった」
焦るボルデ本山。
「おい、早く出してやれよ」
壺を見ながら、ラスプーチンが促す。
「それが、この壺は一度封印すると100年は出せないんだ」
「なんだと!じゃ、あの娘はどうなるんだ?」
「なにか方法を考えるから待ってくれ」
ボルデ本山は寒空の下、大量の汗をかきながら考え出した。
「おい、お前ら。チェルノボーグがこっち向かって来てるで。舞妓さんを助ける前に、俺らが殺られてまう」
鬼塚の言うとおり、チェルノボーグが、こちらに歩いて来ている。
ラスプーチンたちは、絶体絶命のピンチを迎えていた。
大阪市の高層ビルの最上階では、大阪鬼連合団体の定例カンファレンスが行われていた。
「今日は悪いニュースがあります」
不在の鬼塚に代わって、議長は川島である。
「どんなニュースですか」
中年のメンバーが聞いた。
「我らの代表である鬼塚社長が、ロシアに行って消息を絶ちました」
「なるほど、それは仕方がないですね。では、あの男のことは諦めて、新しい代表を決めましょう」
古株のメンバーが提案する。
「あきらめが早いな」
残念そうに川島が言った。
「さっさと次の代表を決めましょ。そうだ、川島さんがやってくれませんか」
若手のメンバーも鬼塚には、まったく執着していない。
「しかし、鬼塚社長は京都の鬼神から指名された代表だし、簡単に変えることは出来んだろう」
川島は一人で反対するが
「なら、あの男は死んだ事にしましょう」
「て、言うか。もう死んでるでしょ」
カンファレンス参加者たちは、鬼塚に死んでいて欲しいようだ。
「鬼塚社長は、必ず帰って来る。別の者が代表になってたら、帰って来た時に揉めるだろう」
川島だけが鬼塚の生還を望んでいる。
「じゃ。もし帰って来たら、殺しましょう」
「そうだ、殺そう」
「私が殺します」
「いえ、私に殺させて下さい」
「いえいえ、どうしても私が殺したいです」
参加者からは、鬼塚の死を望む声が多い。というより、殺したがっている者が多かった。
「いや、殺しちゃダメだろ!」
川島が止める。
ーーまさか、これほど鬼塚社長に人望が無かったとは。だが私には、彼を鬼神に成長させるという使命がある。なんとしても帰って来てもらわねばーー
川島は悩んだ。
悩みながら考えて
ーー私もロシアに行くしかないかーー
と、決意するのであった。
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