第128話 羅刹との戦い
文字数 2,545文字
加藤は武蔵とボルデ本山と共に、羅刹と戦っていた。
やはり、羅刹は強くコチラの攻撃は、ほとんど通用しない。
「このままでは、ラチがあかん。式神を召喚しよう」
加藤は御札を取出し、呪文を唱えたが
ボッ
と、御札が燃えてしまった。
「羅刹が出している強い妖気で、式神が出せないんスよ」
武蔵が言うとおり、羅刹が出す凄まじい妖気のせいで、式神が封じられているようだ。
「おのれ、羅刹のアホ野郎」
悔しがる加藤。
「ならば、吾輩が魔法で、強力な妖精を呼び出そう」
式神は無理でも、妖精ならば呼び出せるかもしれない。
ボルデ本山が、杖を振りかざすと
ポン!
という音と共に、一人の妖精が現れた。
「お久しぶりでございます旦那様」
「お前は、邪妖精ケヴィン!なんと、羅刹の妖気に影響されて邪妖精を召喚してしまった」
邪妖精とは、妖精とは名ばかりで、非常に邪悪で強い魔力を持つ魔族の一種である。
「心配いりません旦那様。私めが望み通りの者を殺してまいります」
邪妖精ケヴィンはボルデ本山の前で、ひざまずいている。
「なかなか頼もしい事を言う妖精じゃないか。じゃ、羅刹を殺っくれよ」
と、加藤が言うと。
「テメエには聞いて無いんだよ、黙っとけや糞ジジイ!」
加藤はケヴィンに怒られてしまった。
「うわっ。口の悪い妖精じゃな」
どうやら邪妖精ケヴィンは、ボルデ本山の言うことしか聞かないようだ。
「あの羅刹という鬼を殺るのじゃ」
ボルデ本山が羅刹を指さしながら、ケヴィンに指示する。
「あれは、なかなか強そうな鬼ですな旦那様」
ケヴィンはタバコを吸いながら、のんびりと羅刹を眺めている。
「早く殺って来いよ」
いらついた加藤が、ケヴィンを急かすが
「黙っとれ死にぞこない。お前こそ早く死ねや!」
と、口汚く罵られてしまった。
「おい、ボルデ本山。コイツは口が悪すぎるぞ、早く羅刹を殺らせろ」
ボルデ本山に催促する加藤。
「そんな事を言われても、邪妖精は、そう簡単に言うことを聞かないのだ。基本的には邪悪な者だからな」
「大丈夫でございますよ旦那様。あんな鬼など、さっさと殺して来ます」
そう言うとケヴィンは、くわえタバコで羅刹に向かって行く。
「あいつ余裕を見せているが、そんなに強いのか?」
加藤がボルデ本山に尋ねた。
「ケヴィンは、かつて一人で魔法界の軍隊と戦ったほど高い戦闘能力を持っている。もしかしたら勝てるかもしれん」
「一人で軍隊と戦うとは凄い奴だな。それで、勝ったのか?」
「惜しかったのだが、結局は負けて捕らえられたところを吾輩が助けてやったんだ」
スタッ
ケヴィンは、高く跳躍すると
「ケヴィン・ストロング・キック!」
と、技の名前を言いながら、羅刹に蹴りをいれる。
ドシッ!
両手で防御する羅刹。
ーーなんと重たい蹴りだ、防御しなければ危なかった。こやつ、とんでもなく強いーー
「ほう、なかなかの攻撃力だ。貴様らの中にも骨のある男がいるな」
羅刹は腕をさすりながら、敵であるケヴィンを褒めた。
「俺様は邪妖精ケヴィン。いずれ、この世界を支配する者だ」
ケヴィンは、大きな声で世界征服を宣言した。
その頃、小太郎は、まだ虎之助から逃げまわっていた。
すぐ後ろには、怒っている虎之助が追いかけて来ている。
ーークソッ、あの悪魔から逃げる方法は無いんかーー
やみくもに逃げているうちに、いつの間にか元にいた場所まで戻って来てしまった。
ーーあれっ、見た事ない変な奴がいる、新たな敵が現れたんやな。よっしゃ、姉さん共ども始末したれーー
小太郎は走りながら邪妖精ケヴィンの首を掴むと、全力で虎之助に投げつけた。
「くらえ、必殺、敵弾頭ロケット投げや!」
その時、投げられた勢いで、ケヴィンのズボンと靴が脱げた。
「うわっ!変なのが飛んで来たでござる」
驚いた虎之助は、邪妖精ケヴィンを受け止めると、ドッチボールのように、かんぱつ入れず投げ返した。
その時、投げられた勢いで、ケヴィンのパンツと靴下が脱げた。
「クソッ、あの悪魔め、投げ返してきよった。しょうがない、鬼だけでも殺っとくか」
小太郎は邪妖精ケヴィンをキャッチすると、今度は素早く羅刹に向かって投げつける。
その時、投げられた勢いで、ケヴィンの上着とシャツが脱げた。
ボゴッ!
ケヴィンは羅刹に直撃した。
羅刹は、戻って来た小太郎と虎之助の様子を見ていたのだが、虎之助に投げ返すと思っていたケヴィンが、意外にもコチラに飛んで来たので、反応が遅れ、まともに直撃してしまった。
「おのれ、許さん!」
思わぬ攻撃を受けてしまった為、怒った羅刹は、ケヴィンの首根っこを掴むと、全力で小太郎に投げつけた。
その時、投げられた勢いで、ケヴィンのズラがとれた。
「やべえ」
とっさに避ける小太郎。
「うわっ!」
小太郎が避けたので、虎之助に向かってハゲで全裸のケヴィンが飛んで来た。
間一髪でケヴィンを避けると
「あのクソ鬼、ブッ殺すでござる」
怒り狂った虎之助は、全力で暗黒闘気を羅刹に向けて放った。
ーー拙者に、全裸の男を投げつけて来るとは、許さないでござるーー
「なんだぁ、もの凄い暗黒闘気がこっちに来る」
羅刹は咄嗟に妖気をまとい防御する。
ドガッ!
暗黒闘気が妖気にぶつかり、辺りに爆音が響きわたった。
ーー羅刹が防御にまわっている。いまッスーー
好機とみて、武蔵が背後から、二刀流で羅刹に斬りかかる。
ズバズバ!
羅刹の右腕と首が切り落とされた。
ボトッ
地面に首と腕が落ちる音がする。
「殺ったか」
加藤とボルデ本山が近づいて来た。
首と右腕が無く、暗黒闘気で真っ黒になった羅刹が立っている。
「死んでいるようだが、念のためだ」
加藤は羅刹の胸を刀で刺そうとしたが
「待て、加藤」
と、ボルデ本山に止められた。
「ムッ、なぜ止める?」
羅刹の身体が徐々に大きくなって来ている。
「下がるんだ、加藤」
ボルデ本山は、加藤を引っ張っりながら後方へと下がった。
バキバキ
異様な音と共に、羅刹の首と右腕が再生されていく。
頭部には巨大な角が左右から生えており、身長も膨張して3メートルを超える巨体となっている。
「この姿になるのは千年ぶりだ。貴様ら、もう生きては帰れんぞ」
恐ろしい姿で巨大化した羅刹は、口から妖気を吹き出しながら、太い声で言った。
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