第11話 寺子屋で勉学でござる
文字数 2,108文字
今日は、岩法師が開催する寺子屋の初日である。
岩法師は袈裟姿で、狂四郎と小太郎は、いつものラフな服装であるが、虎之助は、なぜか紺のブレザーに白いブラウス、グレンチェックのミニスカートを履いており、女子高生の姿で現れた。
「姉さん、本物の女子高生みたいですやん」
小太郎は、虎之助のファッションをガン見している。
「拙者は、何事もファッションから入るタイプでござる」
「さすが姉さんは、なに着ても似合いまんなぁ。でも、姉さんは確か、生徒じゃなくて名誉教授やったんとちゃいますか?そのカッコやったら女子高生ですやん」
「女子高生と見せかけて、実は名誉教授というコンセプトでござる」
ーーどんなコンセプトだよーー
狂四郎は、冷めた目で見ている。
「さすが姉さん、深いでんなぁ」
小太郎は、なぜか感心しているようだ。
岩法師は、黙ってニヤついている。声を掛けた者が全員、授業に出て来たので嬉しいのである。
「では、地理から教えようか。日本の都道府県から近くの駅や交番・役所の場所や、利用方法を勉強しよう」
小太郎と狂四郎は、真面目にノートとペンを出して、勉強をする準備をしている。
「では、拙者は、サブウェイの注文の仕方から教えるでござる」
虎之助も、前に出て岩法師と並び、授業を始めようとした。
「いや、同時に教えると覚えられないから、名誉教授である君は、オブザーバーとして控えていて欲しい」
「なるほど、承知したでござる」
「では、まず駅の場所から教えようか」
「では、拙者はキリギリスと、トノサマバッタの見わけ方を、教えるでござる」
「いや、だから名誉教授はオブザーバーだから、今は皆と一緒に授業を聴いていてくれたら良いんだよ」
「承知したでござる」
と、いう具合に、何度か虎之助に邪魔されながらも、なんとか岩法師は授業を進めて行くのであった。
梅田の高層ビルの最上階では、『大阪鬼連合団体』のカンファレンスが行われていた。
毎度のことながら、議長は鬼塚である。
「今日は良いニュースと、悪いニュースがあります」
「良いニュースから、お願いします」
若手の男性から要望が出た。
「アホか。こういう時は、悪い方から先に聞くんや!」
今日の鬼塚は、機嫌が悪い。
「では、悪いニュースを、お願いします」
ベテランのメンバーが言った。
「あの金鬼が、DSP[デビルスペシャルポリス]の小娘にやられて逃亡した」
「まさか。金鬼が!」
連合会のメンバーは、動揺している。
「さらに、弟の銀鬼が仇討ちに行って、逆に半殺しにされ田舎に逃げてしまった」
ザワザワ‥‥
会議室が、ザワついた。
「その小娘は、そんなに強いのですか?」
「金鬼ほどの鬼が、手も足も出なかったみたいやな」
ザワザワ‥‥
また、会議室が、ザワついた。
「良いニュースも、お願いします」
さきほどの若手が発言する。
「金鬼が消えたので、四天王がちょうど4人になった。もう名前を変える必要が無くなったから、今後は堂々と四天王を名のれるようになった」
「あのう、それが良いニュースですか?」
「そうや。前回はそれで揉めたやろ」
「確かに、四天王が5人になって揉めましたけど。どうも、それが良いニュースとは思えないのですが」
「そうかなぁ。四天王が4人になって、みんな安心したやろ」
「しかし、四天王級の強い鬼は、一人でも多い方が、よろしいのでは?」
「強い鬼はいるぞ。金鬼には、もう一人弟がいて、ドウ‥‥…なんとか言うたな」
「銅鬼ですよ、ドウまで言ったら、もう出るでしょう」
川島に、突っ込まれた。
「そう、その銅鬼が、四天王に入りたいって志願してるんやが」
「銅鬼は、四天王を名のれる程の器なんですか?」
「もう、4人いるんだから、無理でしょう」
「せっかく、四天王が4人になったトコなのに、そんなの却下しましょう」
「しかし、みずから四天王に入りたいとは、頼もしい奴では?」
メンバーの意見は、割れている。
「じゃ、牛鬼と試合させて、勝てれば牛鬼の替わりに四天王入りさせるっていうのは、どうでしょうか?」
川島が提案した。
「それや!」
鬼塚は手を打って賛成した。
寺子屋の初日が終わり、メンバーは宿舎の食堂で、くつろいでいた。
「いやぁ、今日の授業は為になったな」
狂四郎は授業に満足しているようだ。
「そやな、俺ら電車のマナーとか、全然知らへんかったしな」
小太郎も満足そうな様子である。
「拙者は、鴨がなぜアヒルになったかの授業を、したかったでござる」
虎之助だけは、不服そうであった。
「えっ、アヒルって元はカモやったんですか?」
小太郎は少し驚いた。
「そうでござるよ」
「へえ、姉さんは博識やなぁ」
「でも、それ知ってても役に立たないだろう」
狂四郎は、興味無さそうである。
「やくに立つでござる」
「立たない」
「立つでござる」
「じゃ、役に立つ方法を教えてくれ」
「わかったでござる。では、近所に新しくできた焼肉屋で説明してやるので、お前が奢るでござる」
「えっ、俺が奢るの?」
「なに言ってるんや、教えてもらうのに焼肉ぐらい奢るのは、現代では常識やろ」
「そうなのか」
世間知らずの狂四郎は、仕方なく虎之助と小太郎を焼肉屋に連れて行く事になってしまった。
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