第86話 ハリセン・ポッターと闇の帝王
文字数 2,064文字
ダンスパーティーも終わりに近づいて来たころ、ハリセン・ポッターに復讐するために、マカフォイが校舎に戻って来た。
「お父上、ハリセン・ポッターを懲らしめて下さい」
マカフォイは、お父上を連れて来ている。上品で威厳のある中年紳士だ。
「我が息子を侮辱した罪は重いぞポッター」
マカフォイのお父上が、威圧感のある声で言った。
「変なオッサンを連れて来たでござる」
嫌そうな顔をするポピリン。
「あれは変なオッサンじゃなく、魔法界の権力者であるルシウス・マカフォイです。いつも僕を殺そうとするんです」
ハリセン・ポッターが、非常識で物騒な設定を説明した。
「あっそう。じゃ、ダンスも終わったし拙者は帰るでござる」
あっさりと、魔法セーラー戦士ポピリンは帰ろうとする。
「ちょっと、帰らないで助けて下さいよ。僕が殺されてしまいます」
ハリセン・ポッターは、ポピリンに助けを求めた。
「助けたいのはヤマヤマでござるが、もう遅いから帰らないと」
ポピリンはハリセン・ポッターの懇願を却下して帰りかけている。
「惨めだなポッター。その貧乳魔女にも見捨てられたようだな」
マカフォイがあざ笑っている。
ブチッ!
貧乳と言われてポピリンがキレた。
「お前を殺すでござる」
ポピリンの魔法ステッキからマカフォイに向かって殺人ビームが放たれる。
バチバチ
しかし、バリヤのような物でビームは弾かれた。
「くっくっ、生きの良い娘だ」
気味が悪い声がして、スキンヘッドで青白い顔の不気味な男がルシウス・マカフォイの後ろから現れた。
どうやらバリヤを張ったのは、この男のようだ。
痩せ型であるが、異様な圧力感を持つ人物である。
「あっ、あいつは、ボルデ本山!」
ハリセン・ポッターは男を見て驚愕している。
「何者でござるか、あの貧相なオッサンは」
「ボルデ本山卿は、イギリス魔法界で史上最強の魔法使いだ。お父上に頼んで呼んでもらったんだよ」
マカフォイが自慢げに言った。
「ルシウス、良い獲物を紹介してくれたの。あとで褒美をとらすぞ」
ボルデ本山は満足そうに笑みを浮かべている。
「ありがたくぞんじます」
深々と頭を下げるルシウス。
その様子を見て
「あいつは偉い魔法使いなのでござるか?」
ポピリンはハリセン・ポッターにたずねた。
「ボルデ本山は強大な魔力を持っていて、イギリス魔法界の闇の帝王と呼ばれているんだ」
ハリセン・ポッターは、ひどく怯えており顔は青ざめている。
「なるほど。まったくイギリスっぽく無い名前でござるが、拙者の魔力と勝負するでござる」
ポピリンは魔法のステッキをかまえる。
「ほう、この小娘、愚かにも吾輩とやり合うつもりのようだな」
イギリス魔法界では刃向かう者がいないボルデ本山は、久しぶりに自分に挑んで来た娘に感心した。
「拙者の魔力の恐ろしさを味あうでござる」
ポピリンは自信まんまんである。
「お主は1966年に徳島県で産まれ育ち、本名は本山正造。高校卒業後は大阪市の九条にある呉服店で働き、2005年に独立して梅田に『ボルデ本山』という紳士服店を開業する。2010年にはイギリス魔法界に『ボルデ本山イギリス支店』を開店し順調に売上を伸ばしている、なかなかの商売上手でござるな」
「ううっ、何故それを知っている。魔法界では吾輩の素性を誰も知らんはず」
ボルデ本山は驚きを隠せない。
「拙者の魔法『マジカル履歴書』でござる」
「むむっ、小娘のクセに凄まじい魔力だ。だが吾輩も黙ってはいないぞ」
今度は、ボルデ本山の反撃である。
「お前は、長野県の農家で産まれ、本名は秋本美和。地元の短う大卒業後は愛知県の設計事務所で働き、高校時代の2つ先輩と結婚して2人の子供をもうける。しかし7年後に夫の浮気が原因で離婚、子供を育てながらも1級建築士として個人事務所を開き着実に売上を伸ばしておる、なかなかのやり手じゃな」
と、自信ありげに言った。
「全然ちがうだろ!このハゲ!」
ボゴッ!
間違った情報を言われて、怒ったポピリンがマジカルステッキでボルデ本山の頭部を殴りつけた。
プシュー
ボルデ本山の頭部から大量の血が吹き出す。
「ううっ、なんて破壊力のあるステッキじゃ」
「拙者のマジカルステッキの丸い部分は鉄球で出来ているので、お主程度の魔人なら一撃で撲殺できるでござる」
血まみれのマジカルステッキを持ったポピリンが解説する。
「吾輩とした事が、ぬかったわ、くふっ」
バタッ
そう言うと、ボルデ本山は倒れて動かなくなった。
「ボルデ本山卿!大丈夫ですか」
マカフォイ親子が介抱するが、ボルデ本山は倒れたままである。
「おのれ、ポッター。おぼえておけ」
捨て台詞を残して、マカフォイ親子は逃げて行った。
「魔力で拙者に挑もうとは、3週間ほど早いでござる」
魔法セーラー戦士ポピリンは、倒れているボルデ本山に近寄って何やら身体を調べている。
ーー魔力で勝ったというより、鈍器で撲殺したように見えたが。とりあえず闇の帝王であるボルデ本山を倒したようだーー
脅威が去り、ハリセン・ポッターはホッとするのであった。
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