第88話 妖精付き高級ホテル
文字数 2,358文字
「今日は疲れたでござる」
ポピリンが、ホテルに用意されていたパジャマに着替えようとしていた時、猫なで妖精のトッピーが、ジッとコチラを見ているのに気が付いた。
「着替え中は、あっちを向いているでござる」
ポピリンがトッピーに注意するが
「私めが、靴下を脱ぐお手伝いを、いたします」
と、逆にトッピーは近寄って来て、靴下を脱がそうとしてきた。
「お主は、猫を撫でるだけじゃないのでござるか?」
確かトッピーは、猫を連れていない客には何もしないと、魔法省大臣のパッション屋島から聞いている。
「本業はそうでございますが、好みの女性に対しては靴下の脱ぎはぎの、お手伝いもさせて頂いております」
「自分で出来るから、あっち向てて欲しいでござる」
「さようでございますか」
悲しそうな顔をしてトッピーは背を向けた。
「拙者が良いと言うまで、コッチ向くんじゃないでござるよ」
ポピリンが念を押して伝えると
トッピーは小声で「お前を一生許さねえ」と、繰り返し呟き始めた。
「なんか嫌な感じでござる」
ーーやっぱり泊まるんじゃなかったーー
と、ポピリンは激しく後悔するのであった。
着替えている途中で、下着姿になると
「お嬢様、そのペンダントは?」
ポピリンが付けているペンダントを見て、トッピーが驚いてガン見して来た。
「これはボルデ本山が持っていたペンダントでござる。って、まだ、コッチを見るんじゃない!」
着替えの途中で、トッピーがポピリンを見て来たので怒られてしまった。
「申し訳ございません。ですが、そのペンダントは」
「とりあえず、アッチ向いてて欲しいでござる」
「いえ、失礼ながら、妖精王ヤッピーが、お嬢様がお持ちのペンダントに封印されているのでございます」
「あっ、そう。そりゃ良かったでござるね」
ポピリンには、興味が無いようだ。
「妖精王ヤッピーは、闇の帝王ボルデ本山に封印されていたのでございます」
トッピーは、一生懸命に説明するが
「ふうん、良かったね」
まったく関心を示さないポピリン。
「妖精王ヤッピーは、AカップのバストをCカップにする能力があるんです」
「ホントでござるか!」
ポピリンが食い付いて来た。
「本当でございます」
と、答えるトッピーであるが、よく見ると目が笑っている。
「やっぱり嘘でござるな。お前を殺すでござる」
怒ったポピリンが、トッピーの首を強く締めた。
「申し訳ありません。実は、嘘でございます」
殺されそうになり、しぶしぶ嘘を認めるトッピー。
「ホントは、どんな能力を持っているのでござるか」
「妖精王ヤッピーは、お皿などの食器を洗うのが得意でございます」
「それなら役に立つでござる」
「でも、お皿を洗いながら『お前の脳味噌を吸わせろ』と永遠に言って来ます」
「そんな奴は、封印したままの方が良いでござる」
「そんな事おっしゃらないで、封印を解いて下さいませんか?」
「嫌でござる」
キッパリとポピリンは断った。
「お願いいたします、封印を解いて下さいませ」
と言いながらも、トッピーはポピリンの靴下を脱がそうとする
「こらっ!勝手に拙者の靴下を脱がせるんじゃない!」
「申し訳ございません。おや、お嬢様。その指輪は?」
トッピーは、ポピリンが右手にはめている指輪を見つけた。
「これは、ボルデ本山が付けていた指輪でござる」
「その指輪は、かつて魔法界を支配するほどの強力な魔力を秘めたニーベングの指輪でございます。どうか、私めに譲って下さいませんか?」
と、言いながら、またしてもトッピーは靴下を脱がそうとしている。
「とりあえず、靴下を脱がすのを止めるでござる」
「これは私めとした事が、申し訳ございません。おや、お嬢様。そのブラジャーは?」
謝りながらも、トッピーは細かくポピリンの下着姿を観察している。
「これはスーパーの下着売り場で買った、普通のスポーツブラでござる」
「そのブラジャーを、私めに譲って下さいませ」
「嫌でござる。この変態妖精が!」
「申し訳ございません。おや、お嬢様。そのパンティーは?」
「これもスーパーの下着売り場で買ったでござる」
「そのパンティーを、私めに譲って下さいませ」
「譲るワケ無いだろ!このハゲ!」
ポピリンがキレて、またトッピーの首を締め出した。
「苦しい!申し訳ございません、もう言いませんからお許して下さい」
「ホントでござるか?」
「本当でございます」
と言いながらも、トッピーの目の奥は笑っているのであった。
翌日、パッション屋島の主催により、ポピリンの歓迎会が壮大に行われた。
「闇の帝王を倒してくださって、本当に感謝します」
パッション屋島はご機嫌である。今までボルデ本山から、魔法省大臣の地位も脅かされていたので、嬉しくてたまらないといった様子であった。
豪華な料理が、テーブルに溢れるほど並んでいる。
ポピリンが機嫌よく料理を食べていると
「ポピリンさん、昨夜は良く眠れましたか」
と、パッション屋島が聞いて来た。
「あの妖精のせいで、あまり眠れなかったでござる」
「おや、トッピーは猫を撫でる以外は、何にもしないハズですが」
「拙者が寝てる間に足のツボを押したり、パジャマを脱がそうとするので、落ち着かなかったでござる」
「ええっ、それは申し訳ありませんでした。さっそく、あの糞野郎の首をハネて豚のエサにしますので、お許し下さい」
パッション屋島は、丁重に謝罪してくれたが、トッピーへの罰があまりにも重すぎた。
「首をハネるって、殺すのでござるか?」
「もちろんです、奴らに人権はありませんから。それに、今は豚のエサが不足してますので、ちょうどタイミングが良かったです。養豚場が喜びますよ」
なにやら物騒な話しになって来た。
「それは、ちょっと待って欲しいでござる」
あわてて、トッピーの処刑を止めるポピリンであった。
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