第129話 羅刹との戦い part2
文字数 2,240文字
「ヤバいッスね。鬼神は、やっぱり一筋縄ではいかないス」
武蔵は二刀流で、巨大化した羅刹に挑んで行くが、全くダメージを与える事ができない。
「天才剣士の俺が居るから大丈夫や、任せといて」
小太郎は強気であるが、なぜか後ろから、自分に刀を向けている虎之助が気になる。
「あのう、姉さん。俺に刀をむけんといて、もらえますか」
止めてもらうように言ってみたが
「言い掛かりでござる。拙者は羅刹に刀を向けているでござる」
と言いながら、虎之助は、ジリジリと小太郎の背中に近づいて来る。
ーークソっ、羅刹を倒すと見せかけて、俺を斬るつもりやなーー
小太郎は、羅刹よりも強い殺気を背後から感じ、くるっと反転しすると、虎之助に刀を向けた。
「小太郎。なぜ拙者に刀を向ける。殺り合うつもりでござるか」
虎之助の目が鋭く光った。
「殺らいでか!」
刀を向けたまま、虎之助に突っ込んで行く小太郎。
強大な敵である羅刹に背を向けて、何故か小太郎と虎之助の死闘が始まるのであった。
武蔵や加藤が、羅刹との死闘を繰り広げている時、邪妖精ケヴィンは、まだ裸で飛んでいた。
羅刹に全力で投げられて、そのまま吹っ飛び続けているのである。
ーーしかし、鬼神の力というのは凄いものだな。俺様をこんな所まで投げるとはーー
飛んでいるうちに、太平洋の海上まで来てしまった。
ーーいつも間にか全裸になってるし。しかし、裸で海の上を飛ぶのは気持ちが良いな、少し股間がスースーするがーーーー
と、気持ちよく飛んでいたが、下を見ると海中には鮫が大量に泳いでいた。
ーー海に落ちたらヤバそうだなーー
あまり泳ぎが得意でないケヴィンは、移動魔法を使って一旦、家に帰ることにした。
ガラッ
「ただいま」
玄関の扉を開けて中に入ると
「あら、早かったのね」
母親のマリンが、洗濯物のアイロンがけをしていた。
「まだ、仕事の途中だけど、服を取りに帰っただけなんだ」
「あなた素っ裸じゃない!どうしたの?」
マリンはケヴィンの姿を見て驚いた。
「ちょっと手強い敵がいて、戦闘中に脱げたんだ」
「戦闘中に、服が脱げる事なんてあるの?」
「普通なら、ありえないんだけど」
ケヴィンは、タンスから自分の服を取り出そうとしたが
「あれっ、母さん。僕のお気に入りの赤いシャツはどうしたの?」
着ようと思っていたシャツが無かった。
「ああ、あのシャツは汚れが酷かったから、クリーニングに出したわよ」
ーーなら仕方ない、この青いチェックのシャツにしようーー
ケヴィンがシャツを着ようとしていると
「アンタ、先にパンツから履きなさいよ」
と、マリンに注意された。
ーー確かにそうだ。フルチンの状態で、パンツより先にシャツから着る奴は、とんでもない馬鹿だーー
ケヴィンはパンツを探して、お気に入りのボクサーパンツを履いた。
服を着終わると
「じゃ、ボルデ本山の旦那から召喚されてるんで、頑張ってくるよ」
マリンに声をかける。
「ボルデ本山さんには、裁判の時にお世話になったからしっかりやるのよ」
かってケヴィンが魔法界の軍隊に破れ、国家反逆罪で死刑が確定しかけたときに、ボルデ本山が裁判所に圧力をかけてくれたおかげで、罰金2千円で済んだのだ。
ケヴィンにとって、ボルデ本山は命の恩人であった。
「わかってるよ」
と言うと、ケヴィンは玄関を出て道路へと出ていく。
ギギッ!
ドカーン!
しかし、家を出るなり、大型トラックに衝突されて吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされた勢いで、ケヴィンの服が全部脱げてしまい、またもや裸になってしまった。
全裸で飛ばされながらケヴィンは
ーーボルデ本山の旦那への恩返しのチャンスだったが、今回の任務は無理かもしれないーー
と思った。
加藤と武蔵、ボルデ本山の3人が羅刹と死闘を繰り広げている側で、小太郎と虎之助が殺し合い行っていた。
「おい、お前ら。いい加減にしろよ、羅刹を倒すのが先だろ」
呆れた加藤が、小太郎と虎之助の戦いを止めようとした。
「やかましい、老いぼれが!羅刹なんかよりも、こっちの悪魔の方がヤバいんや」
「コヤツをこの世から抹殺しないと、目覚めが悪くなるでござる」
2人とも、全く止める気配がない。
ーーしょうがない。ワシの秘術で仲直りさせるかーー
加藤は呪文を唱えると、虎之助と小太郎に向けて『大親友の術』を行った。
すると、とたんに2人から殺意が消えた。
「良く考えると、今まで、姉さんには助けてもろた事が何度かありましたな」
「小太郎こそ、いろいろ拙者の世話をしてくれたでござる」
2人は、ハグしあいながら仲良くなっている。
ーーちょっとウザいが、成功したなーー
満足そうに2人を眺める加藤であったが。
パコーン!
急に虎之助が小太郎を殴った。
「痛っ!」
殴られた頬を押さえる小太郎。
「急に、どうしたんだ虎之助?」
驚いて加藤が尋ねる。
「小太郎が拙者の、お尻を触ったでござる」
虎之助は、プリプリ怒っている。
「偶然、手が触れただけでんがな、姉さんの貧相な尻なんか、誰も触りまへんで」
小太郎は弁明するが
「言い訳は聞かないでござる。拙者の、けしからんボディに触った奴は、誰であろうと殺すでござる」
虎之助は刀を抜いて、小太郎に斬りかかって行く。
「姉さんは、けしからんボディと言うより、お子様ボディや。こっちも、黙って殺られる訳にはいきまへんな」
と、小太郎も刀を振りかざして応戦する。
ーーヤバい。コイツら、また殺し合いを始めよったーー
2人の様子を見て、呆れながらも焦る加藤であった。
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