第44話 火星戦記パート3
文字数 2,762文字
前回、パクチーと仲の良い銅鬼を殴り倒してしまった事で、アキレスはパクチーの怒りをかってしまった。
「社長のお嬢様が、お怒りでござる。失礼の無いように早く謝罪するでござる」
虎之助が謝罪を促すが、アキレスは
「なんで、俺が謝らなきゃいけないんだよ!」
と、逆ギレし出した。
「すいませんでござる。コイツは後で半殺しにしておきますので、許して欲しいでござる」
アキレスが謝らないので、虎之助が代わりにパクチーに謝罪する。
「しょうがないですねぇ。この娘に免じて、今回だけは許してあげるですぅ」
なんとか、パクチーは機嫌を治してくれた様である。
「コッチに来るでござる」
アキレスは、虎之助に耳を引っ張られながら、屋台の裏に連れて行かれた。
「お主は接客態度が全然なってないので、今から制裁するでござる」
「向こうが殴りかかって来たから、殴っただけだろ。それに、お前に説教される筋合いはねえ!いいから、かかって来いよ、小娘」
屋台裏では、虎之助とアキレスの死闘が、始まろうとしていた。
「生意気言うな!でござる」
バチン!
虎之助はアキレスにビンタした。
「いてーっ!あれっ?待てよ、お前のビンタは何で痛いんだ?俺には攻撃は効かないハズなのに」
アキレスは、虎之助のビンタが自分にダメージを与えた事に驚いている。
「お主の身体に直接攻撃しても効かないので、お主が居る空間に攻撃したでござる」
「ええっ、そんな事が出来るの?」
「出来るでござる。火星に来てから編み出した『次元打震』の術でござる。その空間に存在する物質は、防御力に関係なくダメージを受けるでござる」
「思ったよりやるな小娘。だが俺の攻撃をかわす事が出来るかな」
アキレスは渾身の力を込めて、虎之助の顔面にアキレスパンチを打ち込んだ。
ポスっ
虎之助は難なく、アキレスパンチを手の平で受け止める。
「そんな攻撃、拙者には通用しないでござる」
「なぜだ。どうしてお前は、こんな事が出来るんだ?」
アキレスは、虎之助の強さに驚愕した。
「言ったハズでござる。拙者には、三千年続く暗殺拳の血が流れていると」
「そんなの聞いて無いけど」
「言って無かったでござるか?」
「今、始めて聞いたな」
「これは、失礼したでござる」
虎之助は、頭を下げた。
「それで、お前に、暗殺拳の血が流れているって、本当なのか?」
「ハッタリでござる」
「やっぱり、そうか」
「拙者の成分の半分は、ハッタリで出来ているでござる」
「言っている意味が全然わかんねえけど、とりあえず死ねや!」
再びアキレスは、全力でパンチを打つ
「『次元打震』の術!」
虎之助も同時に攻撃する。
スカッ
アキレスパンチは空を切り、虎之助の『次元打震』がアキレスにクリティカルヒットした。
バキッ!ボキッ!バキッ!!
「はうっ」
次元打震の直撃を受けて、アキレスは倒れ込み、そのまま気を失ってしまった。
アキレスを倒すと、虎之助は屋台の表に戻り
「アホのアキレスは半殺しにしたので、拙者は、もう家に帰るでござる」
と、パクチーに告げて空港に向かって歩き出した。
「ちよっと、まって下さいぃ」
するとパクチーが、アキレスを引きずって追いかけて来た。
「何でござるか?」
虎之助がパクチーに尋ねると
「この男も、連れて行って欲しいですう」
「嫌でござる。コイツは元もと、拙者の敵でござる」
「でも、こんな男がいると、お父タマが、また闇の軍団を作ってしまうですう」
「しようが無いでござるね。じゃ、連れて行くでござる」
仕方なく虎之助は、アキレスを引きずって空港まで歩くことにした。
「待ってくれ、DSPのお嬢さん」
「今度は誰でござるか?拙者は早く帰りたいのでござる」
「私です、銅鬼です」
なんとか回復した銅鬼が追いかけて来ていた。
「お主では、拙者に勝てないでござるよ」
「いえ、もう仇討ちは諦めました。それより、私も地球に連れて行って下さい」
「お金は、持ってるのでござるか?」
銅鬼は困った顔をして
「火星の通貨ならありますが、これで関空行きの便に乗れるでしょうか?」
火星の金貨を、何枚か虎之助に見せた。
「金貨なら大丈夫だと思うでござる」
「よかった。じゃ、一緒に行きましょう」
と、3人で空港に向かおうとした時
「ダメよ銅鬼」
いつの間にか、パクチーが銅鬼の後ろに立っている。
「すいませんパクチーさん。私は、どうしても地球に帰りたいのです」
「銅鬼。この数カ月、一緒に居て、私の気持ちがまだ分からないのぉ?」
「確かに、パクチーさんは私の大切な友人です。しかし、また関空から火星に会いに来れますから」
「やっぱり、全然わかってないわぁ」
「わかってますよ」
「わかってない!私は貴方の事を愛しているのよぉ」
「えっ………」
銅鬼は言葉に詰まった。
パクチーは美少女ではあるが、どう見ても12〜3歳である。正直、銅鬼はパクチーの事を恋愛対象としては見ていなかった。
「しかし、パクチーさん。貴方は、まだ子供ではありませんか」
「こう見えても私は、もう千歳よ。銅鬼よりずっと年上なのよぉ。ちなみに、お父タマは百万歳ですぅ」
どうやら、太陽系暗黒大魔王の一族は、人類とは歳のとり方が全く違うらしい。
「ええっ!そうなんですか」
「それに、外見も変えれるのよぉ。ジャンジャジャーン!」
そう言うと、パクチーは大人のセクシー美女へと変化した。
「普段は子供の姿で太陽神を油断させてるんだけど、この姿が本当の私なのぉ」
「なんと美しい」
パクチーの容姿に、思わず銅鬼は見惚れてしまった。
「お父タマも、今の姿で油断させているけど、本来の姿は金色で巨大なドラゴンなのよぉ、羽もあって海王星まで飛んで行けるのぉ」
パクチーの言葉で銅鬼は、ふと我に返った。
「でも、お父様が何と言うか」
銅鬼は、太陽系暗黒大魔王のことが気になった。
しかも、パクチーの話によると、本来の姿がまるでキングギドラのように恐ろしいではないか。
「ワスの事なら大丈夫でヤンス」
いつの間にか、背後に太陽系暗黒大魔王こと助清が来ていた。
「助清さん」
驚いた銅鬼は、振り返って助清を見た。
「誠実な君なら、ワスの娘を任せても良いと思っていたでヤンス」
「ありがとうございます。しかし、私にその資格が有るのでしょうか?」
「君は、暗黒大魔王の後継者になるのでヤンス」
「私は、そんな大それた者ではありません」
「いや、ワスは初めて会った時から、君の瞳の中に暗黒神を見ていたのでヤンス」
「私の中に暗黒神が……」
太陽系暗黒大魔王にそう言われ、銅鬼はパクチーと一緒になり火星に残ることを決心したのであった。
そんな熱い3人を、驚くほど冷めた目で見ていた虎之助は
「安い三文芝居を見せられて、時間を無駄にしたでござる」
と、まだ気を失ったままのアキレスを引きずりながら、空港まで歩き出すのであった。
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