第131話 羅刹との戦い part4
文字数 2,661文字
虎之助と羅刹の丸焼き喰い合い対決で、周囲は炎に包まれていた。
しかし小太郎は、めげずに
「姉さんと子作りするんや!」
と、炎の中に突っ込んで行ってしまった。
「あれ、マズいんじゃないスカ」
見ていた武蔵が、心配そうにしている。
「確かに。あの炎に突っ込んで行けば、確実に死ぬだろう」
ボルデ本山は断言した。
ーーワシの幻術が効きすぎたか。仕方ない、助けに行ってやるかーー
小太郎に幻術をかけた加藤は、責任を感じて助けに行くことにした。
「忍法『風鎧』」
加藤は自分の身体を風で鎧のように包み込むと、小太郎の後を追った。
炎の中に入って行くと、お互いに凄まじい業火を出し合い、羅刹と虎之助が戦っている。
その手前に、小太郎が黒焦げになって倒れているのを見つけた。
「おい、小太郎。大丈夫か?」
返事が無い。
服が燃えて、ほとんど裸になっている。
しかも髪の毛もチリチリに焼け、アフロヘアーになっていた。
「これは、マズい」
加藤は急いで小太郎を担ぐと、炎の中から脱出した。
「小太郎、しっかりしろ」
加藤が頬を叩くと、ゆっくりと目を開けて
「ううっ、俺はどないしたんや」
よろめきながら立ち上がる小太郎。
「大丈夫か、小太郎?」
という加藤の声かけに
「大丈夫やけど、なぜかフルチンや」
と、自分の姿に驚いている。
「フルチンどころか、頭がアフロヘアーになってるじゃん」
武蔵が心配して近づいて来た。
「フルチンでアフロヘアーって、なんかテンションが上がりまんな。ところで、あの悪魔じゃなくて、姉さんは?」
「虎之助なら、そこで羅刹と炎で対決してるところだ」
加藤が説明する。
「ムッチャ凄い炎でんなぁ。あんな所に行ったら、一瞬で死んでまいまんな」
自分がそこへ突っ込んで行ったことを、小太郎は完全に忘れているようだ。
「さっき、小太郎っちは、突っ込んで行ったッスよ」
「そんなアホな!そんな事したら、服が燃えてフルチンになって、頭もアフロヘアーになってまいまんがな」
小太郎は笑い飛ばしたが
「そう、なってるじゃん」
と、武蔵に指摘された。
「あっ、ほんまや」
やっと、小太郎は自分が裸でアフロヘアーになった原因が理解できた。
「しかし、姉さんは、あんな炎の中でようやりまんなぁ」
しばらく炎を見ていた小太郎は、突然ひらめいた。
「そうや、今、加勢しに行ったら、あの悪魔のような姉さんも、さすがに許してくれるんちゃうやろか」
「許すもなにも、さっきまで小太郎っちは、お嬢ちゃんを襲ってたじゃん」
「えっ、俺が姉さんを襲ってたって?そんなアホな。それやったら、まるで幻術にでも、かけられてるみたいやんか」
またしても小太郎は、信じようとせず笑い飛ばすが
「小太郎っちは、加藤さんに幻術にかけられてたッスよ」
と、武蔵に教えられた。
「なんやて。こらっ加藤、どういうこっちゃ!」
自分が幻術にかけられていた事を知って、怒った小太郎は加藤に詰め寄る。
「仕方ないだろう、お前ら羅刹を放って味方同士で殺し合いするんだから。それに、炎の中から助けてやっただろ」
加藤は、もっともな理由を言った。
「ほな、しゃないでんな」
あっさりと納得する小太郎。
小太郎と加藤が会話をしている間も、ポピノヒーと羅刹は炎による死闘を繰り広げていた。
ーーコイツ思ったより頑丈で、なかなか焼けないでござる。このままだと拙者が丸焼きにされて食われてしまうでござるーー
戦いが長引くにつれて、耐久力に劣るポピノヒーが劣勢になって来た。
ーーこうなったら、火の魔人を召喚して、羅刹を丸焼きにしてもらうでござるーー
ポピノヒーは、呪文を唱えると火の魔人を召喚した。
「僕を呼びましたか?」
現れた火の魔人は『フレイム豚の助』というポッチャリ型の大男であった。
フレイム豚の助は、すでに大量の汗をかいている。
「火の魔人よ、あの鬼を丸焼きにするでござる」
ポピノヒーが、フレイム豚の助に指示を出した。
「ここは暑苦しいですね」
フレイム豚の助は、タオルで汗を拭きながら、暑がっている。
「早くするでござる」
ポピノヒーが急かすが
「ちょっと待って下さい、ここは暑くて。そうだ、もう少し涼しくしましょう」
と言い、大量の冷気を放出し始めた。
「冷気を出しちゃ駄目でござる。あの鬼を丸焼きにするでござる」
慌ててポピノヒーが止めるが
「すいません、僕は暑がりで汗っかきなもんで」
汗を拭きながら、フレイム豚の助が説明する。
「なんで火の魔人が、暑がりなのでござるか」
「元々は氷の魔人だったのですが、魔人仲間から、お前と一緒に居ると暑苦しいと言われ、火の魔人に転向したんですよ」
「なに言ってるか、意味がわからないけど。とにかく、火を出すでござる」
ポピノヒーは、キレかけている。
「出せるけど、暑いから嫌です」
キッパリと拒否して、冷気を出し続けるフレイム豚の助。
「ゴチャゴチャ言ってないで火を出さんか!このブタ魔人」
ボコッ!
ブチ切れたポピノヒーが、フレイム豚の助に強烈なボディブローを打ち込んだ。
「はうっ」
腹部を押さえながら、うずくまるフレイム豚の助。
「よくもやったな。こうなったら貴様ら全員、凍らせてやる」
フレイム豚の助は口から、ありえないほど大量の冷気を出した。
先ほどまで、炎の熱気に包まれていた辺りが、たちまち凍りついて行く。
「炎が弱まり、なぜか冷気が出てきたな」
加藤とボルデ本山が不思議がって見ていると
ゴロゴロッ
ポピノヒーが転がりながら脱出して来た。
「大丈夫か、虎之助?」
加藤が駆け寄って行く。
「大丈夫じゃ無いでござる。あのブタ魔人のせいで、丸焼き対決が台無しでござる」
ポピノヒーは、火の魔人に対して怒っているようだ。
「ブタ魔人って、なんでんねん?」
小太郎がブタ魔人のことを聞いてきた。
「ブタ魔人っていうのは、って。お主は誰でござる?フルチンのアフロヘアーに、知り合いは居ないでござる」
アフロヘアーのせいで、ポピノヒーには小太郎が誰だかわからなかった。
「小太郎でんがな。こんなイケメン忘れたら困りまんなぁ」
「イケメンは、フルチンでレディに話しかけないでござる」
「イケメンでも、炎に焼かれたらフルチンになりまんのや。それで、ブタ魔人って、なんでんねん?」
「炎の魔人を召喚したら、ブタ魔人が出てきて、冷気を出し始めたでござる」
「なんや、むちゃくちゃな話でんなぁ」
小太郎は、率直な意見を言った。
「そう言う小太郎の姿も、むちゃくちゃでござる」
ポピノヒーも、率直な意見を伝える。
お互い、むちゃくちゃな2人であった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)