第46話 ギリシャ本部の逆襲でござる
文字数 2,824文字
国際電器保安協会ギリシャ本部にペガサスが帰って来た。
「よう、ペガサス首尾はどうだった?」
「転生者は、何人殺して来たんだね?」
諜報部長のアレクシオスと幹部のハルパトスが、さっそく聞いて来た。
「いえ、一人も殺ってません。奴らは僕の手に負える相手では無かったです」
「マジで?」
信じられないという顔で、ハルパトスは聞き返す。
「マジです」
「やはり、君一人では無理であったか」
いつの間にか、グリゴリオス局長もやって来ている。
「すいません局長。お役に立てなくて」
ペガサスは頭を下げた。
「まあ、しょうがない。だが、本部の掟はわかっているな?」
「はい。任務に失敗した者は、二ヶ月の減給処分でしたね」
ペガサスは、仕方なさそうに答える。
「それは先週までで、今週からは死刑だ」
グリゴリオスは、冷たく言い放つ。
「エエっ!死刑ですか!」
いきなり死刑と言われ、ペガサスは驚いた。
「そうです、死刑です。しかも、確実に殺す為にギロチンで行います」
グリゴリオスは冷静に答える。
「ギロチンって!じゃ、こんな職場もう辞めます」
ペガサスは、キレ気味に言い放った。
「えっ、辞めちゃうの?」
グリゴリオスは、なぜか残念そうである。
「死刑になるぐらいなら、辞めた方がマシです」
「なら仕方ない。退職届けを総務部に提出しておいてくれ。あと、健康保険証もなるべく早く返すように」
冷たく、事務的な態度をとるグリゴリオスに
「わかりました」
と、ペガサスは返答したものの
ーーあ~あ、今日から無職か。今は不景気だから、なかなか良い就職先が無いんだよなぁーー
テンションを下げながら、国際電器保安協会を退職する事となってしまった。
「まさか、ペガサスが退職するとは」
グリゴリオス局長は、残念そうに、つぶやいた。
「そりゃ、死刑って言われたら、ふつう辞めるでしょう」
近くで2人の会話を聞いていた、ハルパトスが突っ込む。
「しかし、最近の、ゆとり社員はやりにくいわ」
「いや、ゆとりは全く関係ないでしょう。ココは日本じゃなくてギリシャですし」
再度、ハルパトスが突っ込んだ。
「一応はギリシャなんだけど、食生活や日常の習慣は、日本式を取り入れてるからなぁ」
「それは本当ですか?」
「いや、嘘やけど」
「嘘でしたか、良かった。日頃から職場では日本食ばかり食べてるんで、一瞬、信じそうになりましたよ」
「しょうがない。こうなったら、ヘラクレスに行ってもらおう」
グリゴリオス局長は、しぶしぶ決断する。
「ヘラクレスは、ぶらり途中下車の旅から、帰って来ているんですか」
「まだなんだけどSNSをチェックしたら、今は東アジアに居るらしいんで、連絡して日本に行ってもらおうと思う」
「それは、良い考えですが、ぶらり途中下車で、東アジアまで行ってたんですね」
「変な奴やな」
グリゴリオスとハルパトスは、向き合って苦笑いした。
「姉さん、姉さん」
朝早くに、部屋で寝ていた虎之助を、小太郎が起こしに来た。
「どうしたのでござるか……ムニャムニャ」
虎之助は、まだ完全に覚醒していない様である。
「アキレスの仲間が、大阪に乗り込んで来たんですわ」
「そうなのでござるか……ムニャ」
「鬼一さんは、岩法師先生と狂四郎を連れて、先に行きはりましたよ」
「じゃ、小太郎も早く行って来るでござる……ムニャ」
虎之助は、眠そうである。
「姉さんも行くんでっせ」
「拙者は眠いし、まだ朝ごはんも食べてないでござる…ムニャ」
空腹時の虎之助は、戦闘力が70%ダウンするのである。
「俺がサンドイッチを作ったんで、食べながら行きましょう」
「ピーナッツバターサンドイッチでござるか?」
「そんな、アメリカンなヤツちゃいます、普通のレタスとハムが入ったサンドイッチでっせ。玉子やキュウリも入れてますので美味いと思いますよ」
「ZZZ……」
小太郎がサンドイッチの説明をしている間に、虎之助は再び寝てしまっている。
「姉さん!ZZZ…って、そんなアメリカンコミックみたいな寝方せんといて下さいよ」
小太郎は虎之助を揺すってみるが、まったく起きる様子が無い。
ーーもうしゃない、このまま連れて行こうーー
小太郎は起こすことを諦めると、パジャマ姿の虎之助を担いでタクシーに乗り込んだ。
その頃、鬼一たちはヘラクレス率いる国際電器保安協会の精鋭と、激しい戦いを繰りひろげていた。
ヘラクレスの強さは凄まじく、アキレスが残していった戦闘部隊6名を従えて、DSP[デビルスペシャルポリス]のメンバーを圧倒している。
「あのヘラクレスっていうマッチョマン、強すぎですよ」
狂四郎は、早くも弱音を吐き出した。
「マッチョには、マッチョで対抗するしかないな」
そう言うと岩法師は、袈裟を脱いで上半身をむき出しになった。
ヘラクレスには劣るものの、かなりの筋肉質である。
「法力『剛力男』」
岩法師の身体が法力で膨れ、ヘラクレスと同等のマッチョマンになった。
「凄えや、岩法師さん」
狂四郎は感心している。
「いくぞ、ヘラクレス!」
バキッ!ボキッ!
岩法師とヘラクレスの殴り合いが始まった。
「やるな、坊さん」
「お前もな、ヘラクレス」
敵対してはいるが、マッチョマン同志、2人はお互いを認めあった。
「今のうちに、他の奴らを始末するぞ」
「了解です」
鬼一と狂四郎は、残りの戦闘部隊に突っ込んで行く。
その時、現場に新たな部隊が駆けつけた。
「みなさん、国際電器保安協会の阿呆どもを始末するのよ」
グッピーちゃん率いる処刑鬼隊である。
阿久良王に温羅・風鬼・水鬼が、なだれ込んで来たため、たちまち国際電器保安協会が劣勢になってしまった。
ヘラクレスは、敵側に加勢が来たのを見ると
「これはマズいな。坊さんと殴り合ってる場合じゃない。悪いが終わらせてもらうぞ」
と言うと、身体全体に力を込め、エネルギーを貯め込むと、一気に周囲に大量の闘気を解き放った。
ヘラクレスの闘気の威力は凄まじく、敵も味方もパタパタと倒れ出していく。
岩法師と狂四郎や風鬼・水鬼も倒され、気を失ってしまった。
「クッ、なんて強烈な闘気だ」
かろうじて立っている鬼一も、意識が朦朧としている。
「みんなぁ、何やってるんですか。敵を倒すんですよ!」
グッピーちゃんは、一人で怒っている。アンドロイドだからなのか、あまりダメージを受けていない様だ。
処刑鬼隊は、なんとか阿久良王が立っているのを除き、全滅状態となってしまっている。
「では、残った者を始末するか」
ヘラクレスは、余裕の表情で、ゆっくりと鬼一に向かって来た。
「なんて事してくれんのよ、この阿呆マッチョ!」
バキッ!
グッピーちゃんが後から、ヘラクレスを頭部を殴りつける。
「痛っ!なにすんだ、この女」
ヘラクレスは、おもいっきり殴り返す。
ドカッ!
モロに、グッピーちゃんのボデイにヒットする。
「覚えておきなさいぃ、阿呆マッチョ〜ォ」
グッピーちゃんは叫びながら、遠くへ吹っ飛ばされて行った。
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