第137話 虎之助VS山椒鬼
文字数 2,134文字
武蔵と小太郎が、戦いの場に戻ってみると、コールド猫座右衛門が相変わらず燕鬼から激しい攻撃を受けていた。
「フギャー」
と、聞き慣れた、コールド猫座右衛門の叫び声が聞こえる。
「大丈夫ッスか?言われた通り、ビールを買って来たッスよ」
武蔵が、ふらふらのコールド猫座右衛門にビールを渡すと
「おおっ、これこれニャ」
うれしそうに、ビールを飲み始める。
「じゃ、武蔵。ここは任したで。俺は姉さんの加勢をして来るわ」
と言い、小太郎は虎之助の方へ駆けていった。
グビグビ
「汗をかいた後のビールは最高だニャ」
美味そうにビールを飲むコールド猫座右衛門。
「おい。ちょっとそいつ、おかしいぞ。俺の攻撃が全く効いてないじゃないか」
さすがに燕鬼も不審がっている。
「確かに、おかしいッスね。アンタいったい何者なんスか。ただの魔人じゃ無いッスね?」
武蔵も疑問に思って尋ねてみた。
「僕は普通の猫人だニャ。グビグビ」
コールド猫座右衛門は、平然とビールを飲み続けている。
「姉さん、戻って来たで」
小太郎が、山椒鬼との戦いの場に戻ってみると、虎之助は道路に寝そべって、ダラダラとお菓子を食べていた。
「姉さん。俺が、あのバカ鬼を倒して来ますわ」
「頑張れでござる」
お菓子を食べ続けている虎之助に、一声かけると、小太郎は全速力で山椒鬼に向かって行く。
「おい、やむくもに突っ込んで行くと危ないぞ」
心配して加藤が止めるが
「大丈夫や。俺には必殺の武器があるんや」
呪文を唱えると、小太郎の手に輝く剣が現れた。
「この、どんな物質でも切り裂くオリハルコン剣で、オノレをブッタ斬ってやるわ」
小太郎は、全力で山椒鬼に斬りつけた。
「なんだ、うっとおしい」
パシ
ウザそうに山椒鬼は、軽く小太郎を叩く。
「るへ〜」
小太郎は吹っ飛ばされて、もの凄いスピードで虎之助に向かって飛んで行った。
「うわっ!危ないでござる」
間一髪で避ける虎之助。
ドガッ!
小太郎は、そのまま地面に激突すると、地中深くまで突っ込んで行く。
ズブズブッ
「わわっ、大丈夫でござるか?」
虎之助は恐る恐る、地面に開いた穴に向かって声をかけてみる。
「大丈夫じゃ、ありまへん〜、俺はもう駄目です〜。なんか赤いマグマのような物が見えてきました〜。姉さん、仇をとってくんなはれ〜」
地中から、なんとか返事が返って来たが、どうやらマントルの近くまで行ってしまったようだ。
「承知したでござる、鬼神をブチ殺すでござる」
虎之助は立ち上がると、山椒鬼に向かう。
「おっ、虎之助。やっと、やる気になったか」
加藤は、山椒鬼と対峙している。
「小太郎の仇でござる。バカ鬼神を斬り刻んで殺すでござる」
虎之助は右手に刀を持ち、山椒鬼に飛びかかった。
「ふん、先ほどの小娘か。返り討ちにしてくてれるわ」
山椒鬼も迎撃体制をとる。
「喰らえ、暗黒闘気」
虎之助の左手から大量の暗黒闘気が放出されて、山椒鬼を包み込んで行く。
「えっ、刀で攻撃するんじゃ無いんかい!それに暗黒闘気って、お前は魔物か!」
思わず加藤が突っ込む。
「間違えた。神気でござった」
と、虎之助が訂正するが
「どんな間違え方だ。あれは、どう見ても暗黒闘気だろ」
キッパリと加藤に否定されてしまった。
「拙者の神気は、たまに黒くなるのでござる」
「そんな神気は、ねえよ」
「あるでござる!」
「無いね」
虎之助と加藤が言い合いしていると
「お前ら、いい加減にしろ!」
暗黒闘気で異常に黒く変色した山椒鬼に怒鳴られてしまった。
「うわっ。真っ黒でござる」
山椒鬼の姿を見て、驚く虎之助。
「お前が、やったんだろ!」
怒りながら山椒鬼は、手刀で虎之助を攻撃する。
「そんな遅い手刀では、拙者を倒せないでござる」
暗黒闘気の影響で、山椒鬼の動きが鈍い。
サッと山椒鬼の手刀を避けると、虎之助は再び大量の暗黒闘気を放つ。
「ぐわっ!」
暗黒闘気を浴び過ぎた山椒鬼の身体に、異変が起こった。
漆黒に変化した山椒鬼は、うずくまって動かなくなってしまった。
「おい、なんだか様子がおかしいぞ」
加藤は、用心しながら山椒鬼に近づいて行く。
「拙者のせいじゃ無いでござる」
なぜか責任のがれをする虎之助。
「いや、どう考えても、お前のせいだろ」
指で突いても、山椒鬼はピクリともしない。
「拙者は知らないでござる、お主の顔面を直視したから恐怖で石になったのでござる」
「人をメドゥーサみたいに言うな!」
2人が責任を押し付けあっていると
パカッ!
と山椒鬼の背中が割れて、中から羽が生えた黒い人型の生物が出て来た。
「何か出て来たな」
「出て来たでござるな」
「悪魔みたいに見えるな」
「悪魔でござるな」
バサッ
その悪魔がコウモリの様な羽を広げて、飛び立たうとした時。
パシッ
突然、現れた西王母が飛びかかって、その悪魔を捕まえた。
「これは邪気が暗黒闘気を大量に吸収して悪魔化した者よ。放っておくと人間に乗り移って邪悪な悪魔になるから、とても危険なのよ」
と言いながら、西王母は持っていた小さな壺に器用に悪魔を詰め込んだ。
「あっ、あなたは西王母様」
加藤は西王母と面識があるが、虎之助は、急に自分とそっくりな者が現れたので、ひっくり返って驚いている。
「あわわっ、千代が現れたでござる!」
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