第105話 ゴリラ理論
文字数 2,007文字
「ドスンとニャンコ、ドスンとニャンコ、空からニャンコが降ってくる〜」
虎之助が、前回から引き続き『ドスンとニャンコ』のテーマソングを歌いながらダンスを踊っていると
「姉さん、一人で何してまんのや?」
不思議そうに小太郎が聞いてきた。
「一人じゃ無いでござる、ニャン平太も一緒でござる」
「ニャン平太って誰ですの?」
「ニャン平太は、そこに居るでござる」
「誰もいまへんで、姉さん一人ですやん」
見てみると小太郎の言うとおり、ニャン平太は居なくなっていた。
ボルデ本山が、スマホにかけた魔法を解いたからである。
「あれっ、本当でござる」
「それで、加藤はどうなりました?」
小太郎は、自分が一番気になっている事を聞いた。
「加藤は空に登って行って、消えたでござる」
「消えたんでっか?」
「消えたでござる。ドスンとニャンコ、ドスンとニャンコ、ニャンコを集めて明日も日本晴れ〜」
再び、虎之助は歌いなが踊り出した。
加藤が消えたことを確認した小太郎は
「ちょっと、その歌と踊りウザいんで、止めてもらえまっか」
意外に冷たい台詞を残して立ち去って行った。
ーー小太郎に頼まれて加藤をやっつけたのに、あの態度はムカつくでござるーー
と、虎之助が踊りながら憤慨していると。
「おい、虎之助。加藤は、どうなった?」
今度は狂四郎が聞いてきた。
「空に消えたでござる」
「消えたのか」
「消えたでござる。ドスンとニャンコ、ニャンコを倒すと地獄行き〜」
再び、虎之助が歌いなが踊り出す。
「その歌と踊り、ウザいから止めろ!」
狂四郎にも、キツい口調で言われた。
ーームカッ!ーー
「『ドスンとニャンコ』の踊りをバカにする奴は、殺すでござる」
怒った虎之助が、狂四郎の首を締め出した。
「ううっ、苦しい。死ぬ」
「死にたくなければ、拙者と一緒に踊るでござる」
「ううっ、嫌だ」
「ならば、ここで死ぬでござる」
さらに、強く首を締め上げる虎之助。
その頃、魔界では、チェルノボーグとゴリラ博士が対決していた。
「ゴリラ神拳奥義『ゴリラ右ストレート』」
ドカッ!
ゴリラ博士の右ストレートが、チェルノボーグの顔面ヒットする。
「おのれ、燃え尽きろゴリラ野郎!」
チェルノボーグは両手から灼熱の炎を出して、ゴリラ博士を焼き尽くす。
「なんの、ゴリラ神拳『ミドルキック』」
ドカッ!
ゴリラ博士のミドルキックが、チェルノボーグの右わきにヒットする。
「死ね、ゴリラ」
チェルノボーグは口から絶対零度の冷気を出して、ゴリラ博士を凍りつかせる。
「ゴリラ神拳『空手チョップ』」
ドスン!
ゴリラ博士の空手チョップが、チェルノボーグの胸にヒットする。
「ちょっと待て、何かおかしくないか?俺が、お前を焼き尽くしたり凍らせたりしてるのに、どうして普通にキックやチョップで反撃して来れるんだ?」
チェルノボーグは疑問に思った。
「ゴリラ神拳の伝承者に対して、そんな攻撃は児戯に等しい。ゴリラ神拳の修行はブラックホールの中で行うのだ」
「ええっ!それ本当?」
あまりにもゴリラ神拳の修行の厳しさに、チェルノボーグは驚いた。
「そんな事は、ゴリラの間では常識だ」
ゴリラの間では常識と言われても、当然の事ながらチェルノボーグはゴリラでは無い、破壊神である。
「いや、俺はゴリラじゃないから知らなかった」
「ゴリラじゃない事を恥じることはない。全宇宙でもゴリラに成る事ができるのは、ごくわずかの選ばれた者のみ」
「くっ、そうだったのか」
「だが、ゴリラでなくとも幸せに生きる事はできる。私の助手のマーは、チンパンジーだが幸福である。なぜなら、ゴリラの助手だからである」
「ちょっと、なに言ってるのかわからないが。どうやら、このゴリラは俺の勝てる相手では無かったようだ」
チェルノボーグは自身の敗北を悟った。
ーーゴリラ博士には敵わぬ。なぜなら、俺はゴリラじゃ無いからだーー
よくわからないゴリラ理論によって、チェルノボーグは敗北した。
魔界でチェルノボーグと宇宙猿人ゴリラ博士との決着がついた頃、大阪DSPの宿舎の庭では、虎之助と狂四郎が一緒に『ドスンとニャンコ』テーマソングを歌いながら踊り続けていた。
「ドスンとニャンコ、ドスンとニャンコ、ニャンコのエサは生サンマ〜」
ーークソっ、なんで俺がこんなアホな事を、しなくちゃいけないんだーー
結局、狂四郎は虎之助に脅されて、むりやり踊らされていたのである。
いやいや踊っている狂四郎に比べ、虎之助は楽しそうに踊っている。
ーーコイツはバカだから楽しいかもしれないが、俺は早く止めたいーー
そこへ、岩法師と左近が買い物から帰って来た。
「虎之助、お前の好きな『柿の葉寿司』を買って来たから、昼飯にしよう」
という岩法師の声が聞こえると
「すぐに行くでござる」
虎之助は踊っている狂四郎を放置して、食堂に走って行った。
ーーよかった。やっと、この変な踊りを止められるーー
と、ホッとする狂四郎であった。
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