第62話 レムリアVS虎之助
文字数 2,171文字
高級住宅街の一画に、古風な広い屋敷があった。
屋敷は、玄関を入ると広い吹き抜けのフロアーがあり、20人程度であればパーティー等でくつろげるオシャレな空間となっている。
そのフロアーで、黒服の男が若い男に問詰められていた。
「それで、一人で逃げて来たのですか」
「申し訳ありません、レムリア様。あいつらムチャクチャで、みんな殺られてしまいました」
黒服の男は、仲間を虎之助たちに全員殺されてしまい、やっとの事でレムリアの屋敷に逃げ込んだのである。
「それは困りましたね」
黒服にレムリアと呼ばれた男は、高貴な雰囲気を漂わせており、上品なグレーのスーツを着こなしている。
部下が、ほとんど殺された割には落ち着いており、困ったと言いながら、さほど困った様子でもない。
ドガッ!
玄関の方から激しい音がした。
「付けられましたね」
そう言いながら、レムリアは、ゆっくりと玄関を見る。
「ここが黒服のアジトか。けっこう良いところやないか」
偉そうにしている小太郎を先頭に、虎之助と武蔵の3人が押し入って来た。
全員、武器を持っており、殺る気まんまんである。
「たった3人で、ここに乗り込んで来るとは、いい度胸ですね」
驚く様子もなく、レムリアは落ち着いている。
3人に怯えた黒服の男が、上着のポケットから万年筆のような器具を取り出そうとしたが
カキンッ
虎之助の投げた手裏剣で、器具を払い落とされてしまった。
「下手な動きをすると、殺すでござる」
虎之助が黒服を牽制する。
「嘘つけ、何もしなくても殺すクセに」
男は、かまわず器具を拾おうとしたが
ズバッ!
「動くなって、言ったじゃん」
目にも止まらぬ速さで、男は武蔵に斬り捨てられた。
「ほう、少しは出来るようですね。だが、私に挑むには100年早いですよ。悪いことは言いません、早くここから立ち去るのです。そうすれば、今のは無かった事にしてあげますから」
レムリアは、目の前で仲間が殺されても、まったく動揺していない。
気品のある堂々とした態度のまま、虎之助たちに立ち去るように勧めている。
圧倒的な、強者だけが持つ余裕が見受けられた。
「あっ、この男、知ってますわ」
レムリアを指さしながら、唐突に小太郎が言った。
「何者でござるか」
虎之助が聞く。
「近所で有名な、強姦魔ですわ」
小太郎は、変質者でも見るような目でレムリアを見ている。
「そう言えば、拙者も、この男に強姦された事がある様な気がするでござる」
虎之助は、適当に言った。
「ええっ!ちょっと待て、私はそんな事してないぞ。それに、お前のような小娘なんか相手にするか!」
いきなり、若い娘に強姦されたと言われて、さすがのレムリアも動揺し始めた。
「言い訳、無用。小太郎、武蔵。この男をブッ殺すでござる」
虎之助の号令と共に、3人がいっせいに襲いかかる。
ズバッ、ズバッ、ズバッ!
レムリアは、3人にメッタ斬りにされて倒れ込む。
「これで女性が安心して暮らせる、平和な世の中になりましたな」
倒れているレムリアを見下ろしながら、小太郎は満足そうである。
だが、斬り刻まれたレムリアの傷は、徐々に塞がって来ている。かなりの回復能力があるようだ。
「小太郎ッチ、気を付けるじゃん。コイツまだ生きてるッス」
武蔵が気付いて注意する。
「貴様ら、よくも高貴な私に」
回復して来たレムリアは、激怒しながら立ち上がった。
「強姦魔のクセに高貴とは、笑わせるやっちゃで」
小太郎は半笑いで、レムリアを馬鹿にしている。
「いい加減にしろ。この私がそんな事する訳ないだろ!」
顔を真っ赤にして、レムリアは怒っている。
「コッチには証人がいるんや、観念して罪を認めろや」
小太郎が詰めて来る。
「罪を認めた方が、楽になるんじゃなーい」
武蔵も詰めて来た。
「この男は、ドブ蛙みたいな臭いがするので、早く死んで欲しいでござる」
鼻を摘みながら、虎之助が嫌そうに言った。
「嘘つくな!私から、そんな臭いがする訳ないだろ」
プライドの高いレムリアは、当然のごとく激怒している。
「するでござる。お主からは、腐ったドブの臭いがするでござる」
「しねえよ!」
「小太郎、武蔵。この、ドブ人間をブチ殺すでござる」
虎之助の号令と共に、3人が襲いかかった。
「ドブ人間って言うな!」
レムリアは怒鳴りながら
ズバッ、ズバッ、ズバ!
と、メッタ斬りにされてしまった。
「復活しないように、拙者の神気で、とどめをさすでござる」
虎之助の両手から発せられた、ドス黒い闘気が倒れているレムリアを包み込んでいく。
「お嬢ちゃん。それって、どう見ても暗黒闘気じゃん」
武蔵に突っ込まれた。
「違うでござる。これは神気でござる」
「そうやで、武蔵。姉さんが暗黒闘気なんか出すはずないやろ。暗黒闘気っていうのは、邪悪な魔物が出すもんやで」
虎之助と小太郎は、そろって否定しているが、闘気を受けたレムリアはドス黒く変色して絶命した。どう見ても、邪悪な力で殺された姿である。
「さすが姉さん、この変態を見事に仕留めましたな」
「拙者の、暗黒闘いや、神気は世界イチーィでござるからなぁ」
2人はゲラゲラと笑い出した。
ーーこのお嬢ちゃん、さっき、自分でも暗黒闘気って言いかけたな。実は、スゲエやべぇ娘なんじゃない?ーー
と、虎之助の事を、疑惑の目で見始める武蔵であった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)