第51話 ポセイドン
文字数 2,787文字
「ここが国際電器保安協会のたまり場だな」
アポロンは一人で、アメリカ村に来ていた。
「あそこの公園に、知った顔のやつが居るな」
そこには、いつものように、ライアンとマーゴット、アンドロポプの3人がタコ焼きを食べながら談笑していた。
「おい、お前ら」
アポロンが3人に声を掛けると
「誰だお前。うっとおしいから、あっちへ行け」
いきなりアンドロポプに、邪険にされてしまった。
「アンドロポプ、この男はギリシャ本部のアポロンだぞ。かなりの強者だ、喧嘩を売るのはよせ」
ライアンはアポロンの事を知っているので、アンドロポプに忠告する。
「本部の奴だか何だか知らんが、俺に気安く話しかけるんじゃねえ」
ライアンの忠告など、おかまいなしに、アンドロポプはアポロンに対して高圧的である。
「いや、お前らに聞きたい事があってな。DSP[デビルスペシャルポリス]に高校生ぐらいのムッチャ強い女の子が居るんだが、知らないか?」
ーーそれは、あの虎之助という小娘のことじゃないか。俺は、もう関わりたく無いぞーー
「そないな女の子は、知りまへんな」
アンドロポプは、しらをきった。
「なんで、急に関西弁になるんだよ、お前なんだか怪しいぞ」
しかし、口調が不自然すぎて、アポロンに疑われてしまった。
「知りまへんって言うたら、知りまへんがな。ほな、ワテはこれで」
アンドロポプは、スタスタと歩き出して、そのまま去って行った。
「なんだアイツ。お前は何か知ってるだろ?」
今度は、ライアンに聞いて来た。
「知ってるけど、あの娘とは関わりたく無いな」
ライアンは正直に答える。
「そのタコ焼き、拙者も欲しいでござる」
「うわっ!」
いつの間にか、目の前にタヌキの式神を連れた虎之助が立っている。
「あっ、この娘だ!」
アポロンが叫んだ
「タコ焼き、よこすでござる」
虎之助が、ライアンのタコ焼きを奪い取った。
「おい、お前のタコ焼き、取られてるぞ」
その様子を見て、アポロンはライアンに注意するが
「いいんだよ、タコ焼きぐらい。命には替えられないからな」
と、別に構わないという態度である。
ーーなるほど、コイツら、この小娘の強さを知っていて、ビビってやがるな。まあ、俺も一人では勝てる気がしないから、応援を呼んでるんだがーー
「お主は、どこかで見た顔でござるな」
虎之助とタヌキが、タコ焼きを食べながらアポロンの顔をじっと見ている。
「会って無いですよ。他人の空似じゃないかな」
まだ、応援が来ていないので、アポロンは、ごまかす事にした。
ーーうわっ、ムッチャ見てる。ヤバいかなぁーー
虎之助は、まだ、アポロンの顔を見ている。
「ちょっと止めてよ!」
マーゴットの、嫌がる声がした。
「ええやん、ちょっとだけ手握らしてぇや」
いつの間にか小太郎も来ており、マーゴットにちょっかいをかけている。
「また、お前か。いい加減にしろよ」
毎度ながら、ライアンに怒られてしまった。
「あっ、姉さん。コイツは、この前やり損ねたアポロンや」
小太郎が、アポロンに向かって言った。
ーーヤバい、バレたーー
「なるほど。では、今すぐ殺すでござる」
虎之助は刀に手を掛ける。
ーーとりあえず、逃げようーー
急いでアポロンは、走って逃げ出した。が、しかし
ドン!
慌てて逃げたので、誰かにぶつかってしまった。
「そんなに慌てて、どこへ行くんだ、アポロン」
背の高い髭面の男が言った。
「お前たちは……」
ぶつかった相手は、ギリシャ本部から加勢に来たポセイドンであった。
ポセイドンは、2人の仲間を連れている。
細身で陰気な男性ハーデースと、美しく優しそうな女性ヘスティアーである。
「よかった、お前たちか」
ホッと気が緩んだ。
「ゼウスに言われて来てみたんだが、ゼウスは何処に居るんだ?」
ハーデースが、不機嫌そうに聞いて来る。
「ゼウス様は、君らと一緒じゃなかったのか。今、調べてみる」
アポロンはスマホに入れてもらった、ゼウス行動監視アプリで調べてみた
「ゼウス様は、現在、家電量販店で任天堂スイッチを買うために、並んでおられる」
「アイツは、やる気があるのか」
ハーデースは、あきれている。
「弟のクセに、私たちを呼び出しといて、なにしてんのよ」
ヘスティアーも不満そうである。
そこへ、式神のタヌキと一緒に、虎之助が追いかけて来た。
「とりあえず、あの娘が例のリンゼイ老師を殺ったDSPの転生者だ」
アポロンが虎之助を指さす。
「違うでアポロン。あのジジイを殺ったんは、この俺や」
小太郎も来ており、リンゼイ老師は自分が殺ったと言い出した。
「えっ、お前なの?」
「そうや、俺が真空飛び膝蹴りでKOした」
平然と、嘘をつく小太郎。
「どっちでも良いけど、こんな若造に殺られるとは、リンゼイ老師も大したこと無いな」
ハーデースは、小太郎と虎之助を見比べている
「まあ良いわ、ワシが2人とも、ひねり殺してやる」
巨体のポセイドンが、小太郎の正面に立つ。
「デカいおっさんやなぁ、まあ、俺の敵ではないけどな」
ズドーン!
余裕の小太郎に、ポセイドンの重厚なパンチが炸裂した。
「うへ〜」
小太郎は、ひとたまりもなく、遥か彼方へ吹っ飛ばされてしまった。
「なんだ、弱いじゃないか」
ポセイドンは顎髭を撫でながら、がっかりしている。
「よくも小太郎を、やってくれたでござるな」
刀を抜き、凄まじい殺気を出す虎之助。
「この娘は、なかなかやりそうだな」
「気を付けろポセイドン、その娘はムッチャ強いぞ」
アポロンが注意する。
「唐沢家忍術『髭男滅殺切り』」
虎之助の秘技が炸裂する、が
「髭男真剣白刃取り!」
ポセイドンは、虎之助の攻撃を真剣白羽取りで受け止める。
「やるでござるな髭男」
強者同士の戦いが、始まろうとしていた。
が、その時
「冥界波」
と、後方から、いきなりハーデースが虎之助に攻撃をしかけた。
空間に冥界への入り口が開き、虎之助を吸い込んでいく。
「冥界は、もう嫌でござる〜」
と、叫びながら、虎之助は冥界に引きずり込まれて行く。
「なにをするハーデース!俺の獲物だぞ」
ポセイドンは憤慨している。
「すまん。なぜか、あの娘から得体の知れない不気味なオーラを感じて、咄嗟に攻撃してしまった」
「お前は、神経質すぎるんだよ!」
ポセイドンが怒鳴った。
「兄に向かって、お前って言うな!」
ハーデースも怒鳴り返す。
「うるせえ!根暗モヤシっ子」
ポセイドンが悪口を言って来た。
「この髭マッチョ!」
「黙れ、ぼっち飯!」
2人は、お互いに罵り合っている。
「ちょっと止めなさい、2人とも。ひねり殺すわよ」
2人の姉であるヘスティアーに、怒られてしまった。
「そうだよ。せっかく敵を倒したんだから、仲良くやろうよ。いくら、あの娘でも冥界に落とされたら、お終いだろうから」
虎之助の脅威が去り、ホッとしながら、2人をなだめるアポロンであった。
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