第94話 ロシアに行こう
文字数 2,130文字
DSPの宿舎では、加藤と小太郎、狂四郎の戦いが続いていた。
「クソっ、なかなかしぶといジジイだ」
加藤の素早い動きに、なかなか攻撃が当たらず、小太郎と狂四郎に疲れが出はじめていた。
「ふん、2人がかりでも、この程度か。そんな腕では強い鬼には勝てんぞ」
加藤は2人を見下しながら言った。
「仕方あらへん、こうなったら合体技を出すぞ」
小太郎が狂四郎の手を握った。
「合体技は、よすんだ小太郎!前回、失敗しただろ」
「今回は大丈夫や、まかせとけ」
「まかせられん」
きっぱりと拒否する狂四郎。
「うるせえ、いくぞ友情合体魔竜」
小太郎は、強引に合体技をかけた。
すると大量の煙が2人を包み込み、中から合体超獣『サル喰い猿』が現れた。
今度は以前のように小さくなく、人間と同じサイズである。
「やったー。成功や、ウッキー」
よろこぶ小太郎。
「いや、ちょっと違うんじゃないか。本来は合体魔竜『夜刀神』になるハズだろ」
狂四郎は不満そうである。
「前の小さいトカゲよりマシや、ウッキー」
小太郎は狂四郎の不満を無視して大喜びしている。
「まさか、これは全宇宙でも非常に珍しい珍獣『サル喰い猿』ではないか。こんな所でお目にかかろうとは」
なぜか加藤は『サル喰い猿』の事を知っており、珍しがっている。
「死ねや加藤!」
珍獣『サル喰い猿』が加藤に襲いかかる。
しかし
ボグッ!
加藤の喧嘩キックが珍獣『サル喰い猿』のみぞおちにヒットする。
「うげっ」
珍獣『サル喰い猿』は、蹴り一発でKOされてしまった。
すると、合体技が解除され、倒れている小太郎と狂四郎の姿に戻っていく。
「ううっ、なんでや、まさか俺の合体技が敗れるとは」
苦しそうに小太郎が言った。
「いや、お前の合体技で勝った事は無いけどな」
狂四郎に、するどく突っ込まれた。
「未熟者どもが。サル喰い猿は確かに珍しいが、最弱の超獣だ」
加藤が説明する。
「そうだったんや」
と呟いて、小太郎は気を失った。
「さあ、一緒にロシアに行こうか」
ラスプーチンが虎之助の右手をつかんだ。
「ロシアは遠いでござる」
ロシアと聞いて、さすがに虎之助は、ためらっている。
「頼むよ、俺はロシア政府で一番偉くなりたいんだ」
ラスプーチンが腰を低くして頼んできた。
「一番偉くなって、どうするのでござるか」
「気に入らねえ奴を、片っ端から処刑するのだ」
ラスプーチンが威張りながら自慢する。
「うわっ、このオッサン、怖いでござる」
虎之助は怯えて、少しラスプーチンから離れた。
「大丈夫だよ、気に入らねえ国も片っ端から攻撃してやるから」
「絶対に偉くなったらダメな奴でござる」
「そんな事を言うなよ。俺は独裁者になりたいんだ、頼むよ協力してくれ」
動機はムチャクチャだが、ラスプーチンは低姿勢で頼んでくる。
「それで、肝心の報酬は何でござるか」
「10億円ぐらいはする金貨だ。こないだ、ロシア政府の金庫からパクって来たんだ」
自慢げにラスプーチンが言った。
「お主、悪でござるな」
「まあ、自慢じゃないけど、生まれてこのかた、俺より悪い奴は見たこと無いなぁ」
と、ラスプーチンが胸を張って言っているのを見て
「本当に自慢にならないでござる」
虎之助は、呆れてしまった。
ラスプーチンが虎之助と交渉している間も、川島はモットプールと戦っていた。
「こいつ、復活してから強くなりやがった」
川島は、パワーアップしたモットプールに手を焼いている。
虎之助に修理され、なぜか強くなったモットプールは、魔剣の魔力が通用しないのである。
「魔剣が通用しないとなると、力で勝負するか」
川島は魔剣を術で金棒に変化させて、モットプールに殴りかかる。
「死ね、機械野郎」
バキッ!
ボトッ
金棒で殴られた衝撃で、モットプールの首が取れて落ちた。
プシュー
モットプールは倒れ、胴体から煙が吹き出して来る。
「やっと倒せたか」
川島は汗を拭いながら、モットプールの首を蹴とばした。
ーーとにかく、小娘を確保しないとーー
虎之助のいる方を見てみると、すでにラスプーチンに手を引かれて歩き出している。
「待てまて、ちょっと待て」
慌てて川島は走り出し、虎之助の空いている方の手を引っ張った。
「コラ、なにすんだ。この娘は俺が連れて行くんだ」
ウザそうにラスプーチンが言う。
「あっ、またモットプールを殺したでござるな。このサイコパスが!」
虎之助からは、酷い暴言を吐かれてしまった。
「違う、俺はサイコパスじゃない」
おもわず川島が釈明をしていると、虎之助はモットプールに駆けよって、再び修理を始め出した。
「止めろ、もう修理するんじゃ無い」
ーーまた生き返ったら、面倒だーー
川島が虎之助を止めに入るが
「修理させてやれよ、可哀想じゃないか」
ラスプーチンが同情するような口調で言いながら、川島の肩をつかむ。
「そんな言い方するな、俺が悪者みたいじゃないか」
悪者あつかいされたので、気を悪くした川島であるが
「いや、お前ら鬼は、元もと悪者だろ」
と、ラスプーチンに正論で突っ込まれてしまった。
ーーそうだった、俺は大阪鬼連合団体の幹部で悪者だったんだーー
モットプールを修理している虎之助を止めながらも、テンションが下がっていく川島であった。
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