第47話 虎之助は眠りたいでござる
文字数 2,598文字
「グッピーちゃんの仇だ!」
阿久良王は、両手から炎を出してヘラクレスを攻撃するが
「ほう、少しは骨のある奴がいるな」
ヘラクレスは炎をモノともせず、阿久良王に向かって平然と歩いて行くと
「ヘラクレスチョップ!」
ドスン!
「ゲフッ」
ヘラクレスの強烈なチョップを受けて、耐えきれず倒れ込んでしまった。
「クソっ。温羅は、どこだ」
阿久良王は、一対一では勝てぬとわかり、相棒である温羅を探す。
「俺はここだ」
少し離れた所に温羅が倒れている。
返事が出来るということは、意識はあるようだ。
「よし、デビルクロスだ」
「承知した」
阿久良王と温羅は手を繋ぎ
「デビルクロス!」
と、叫んだ。
すると2人は合体し、デビルソルジャーへと変身していく。
[デビルソルジャーとは、身長2メートル、体重160キロで、アメフトとアメリカンプロレスを極めた大型超鬼戦士である]
「なんだ、こいつら。合体しやがった」
これには、さすがのヘラクレスも驚いている。
「デビルソルジャータックル!」
巨体のデビルソルジャーが、全体重をかけてタックルを仕掛けて来た。
「負けるか!ヘラクレスタックル」
ヘラクレスも負けじとタックルで応戦する。
ドカッ!!
両者が、ぶつかり合って凄まじい音がした。
さすがにタックルでは、ヘラクレスの方が分が悪く、転倒してしまう。
「なかなかやるなぁ。だが、これで終わりだ」
ヘラクレスは、すぐに立ち上がると、体中に力を入れて闘気を溜め込む。
「あの闘気はヤバイ」
デビルソルジャーは、慌てて地面に身を伏せた。
その時
「死ね!阿呆マッチョ!」
いつの間にか、戻って来たグッピーちゃんが、背後からヘラクレスの首をスリーパーホールドで締め上げた。
「グッ、苦しい」
ヘラクレスの顔が青ざめて来た。いきなり後ろから首を締められて、苦しそうな表情をうかべる。
ーー今だ!ーー
ズバッ!
この好機を見逃さず、鬼一は刀でヘラクレスの胴体を、真横に切って落とした。
ボトリ
ヘラクレスの下半身が地面に落ちる。
「殺ったか」
鬼一は、ヘラクレスの顔を見た。
真っ二つにされてしまったヘラクレスは、息絶えている。
「やっと死んだわね、阿呆マッチョめ」
グッピーちゃんも、スリーパーホールドを解いて安堵の表情をうかべている。
強敵であったヘラクレスも、デビルソルジャーとグッピーちゃん・鬼一の連携プレーで、ついに倒すことが出来た。
「この人数で、やっと倒せたか。ヘラクレス、恐ろしい男であった」
戦いが終わり、デビルソルジャーは阿久良王と温羅へと戻っていく。
ーー意外だが、今回は、鬼どもの活躍で勝てたなーー
と、鬼一がホッとしていると。一人の男が、こちらに歩いて来るのが見えた。
ヘラクレスとはタイプが違い、スタイルの良いイケメンである。
その男は、真っ二つにされたヘラクレスを見ると
「あれっ?ヘラクレスの奴、負けちゃったのか」
と言いながら、周囲を見渡している。
「なんだ、お前は。俺たちに文句でもあるのか」
阿久良王は、その男に対し、ウザそうに威嚇した。
「俺の名は、国際電器保安協会のアポロン。ヘラクレスを殺ったのは、お前らか?」
男は、堂々と名のった。かなり腕に自信を持っている様である。
「だとしたら、どうなんだ」
凄みながら、阿久良王が聞く。
「ここに居る奴は、皆殺しだ!」
突然、強烈な殺気が、周囲に満たされる。
ーーこっ、こいつは、とんでもなく強い。ヘラクレスなど問題にならん程にーー
発せられた殺気の強さで、阿久良王はアポロンが、とてつもない強者だという事が理解できた。
やっとの事でヘラクレスを倒したところに、さらなる強敵が現れた為、阿久良王と温羅は少し怯んでしまっている。
「今度はマッチョじゃなく、イケメンが現れたわね」
グッピーちゃんが、不用意にアポロンに近づいていく。
「危ない!グッピーちゃん。そいつは危険だ!」
阿久良王は、グッピーちゃんを制止する。
しかし、間に合わず、アポロンは強烈な太陽エネルギーを全方向に発射して、容赦なく周囲を灼き尽くして行く。
「これは、まずい!」
鬼一は、急いで大鷲の式神を出すと、気を失っている岩法師と狂四郎を乗せるて、急いで上空へ退避する。
数秒のうちに周辺は焼けただれ焦土と化しており、中心にアポロンが一人で立っている。
「他愛もない。鬼や転生者は、この程度か」
全員、始末したと思い、立ち去ろうとするアポロンに
「待て」
と、背後から声がした。
大鷲から降り立った鬼一である。
「ほう、その鳥に乗って、俺の太陽エネルギーから逃れていたのか」
アポロンは、鬼一と大鷲を見て、面倒くさそうな顔をしている。
「お前の様なやつは、野放しには出来ん。ここで始末する」
鬼一は、刀を構える。
「ほう、威勢が良いな。だが、俺には勝てぬぞ」
アポロンは右手を鬼一に向け、太陽エネルギーを放出した。
「京八流『神鏡』」
鬼一の左手に、50センチ程の丸い鏡が現れ、アポロンの太陽エネルギーを吸収していく。
「無駄だ、この『神鏡』は全てのエネルギーを吸い取る」
鬼一は、左手で鏡を構えながら右手に持った刀でアポロンに斬りかかる。
アポロンも、ボクシングのようなフットワークを使かい、鬼一に向かって行く。
「マグナムパンチ!」
ドカッ!
アポロンの強烈な右ストレートが刀を砕き、そのまま鬼一の顔面にヒットする。
「ぐふッ」
モロに顔面にパンチを受けてしまい、鬼一は倒れた。
「やはり、この程度だな。悪いが、とどめを刺させてもらう」
アポロンは右手を手刀に変えて、鬼一の首を切り落とそうとした。
が、その時
「待たんかい!」
またもや、背後から声を掛けられた。
「なんだ、しつこい奴らだな。今度は誰だ」
振り向くと、若い男が女の子を担いで立っている。
若い男はなぜか、アポロンの足元に女の子を置くと一歩下がった。
「なんだ、この娘は?貢物か?」
不思議に思って、アポロンは尋ねた。
「アホなことを言うな!姉さんは最強の戦士や!姉さん頼んまっせ、そいつをブチ殺して下さい」
そう言われて、アポロンは改めて女の子を見た。可愛らしい娘だが、爆睡している。
「この娘、寝てるけど?」
小太郎も改めて虎之助を見てみた。パジャマ姿のままで、まだ眠っている。
「あっ、ホンマや」
ーーしもた!姉さんが、まだ寝てたとは。この俺とした事が、一生の不覚ーー
と、焦る小太郎であった。
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