第78話 闇の死闘パート2
文字数 2,169文字
大阪府警での仕事を終えて、鬼一が帰りじたくをしていると
「大変です、鬼一さん。寝屋川に闇の結界が現れました」
と、対鬼部署の職員が、急いで駆け寄って来た
「寝屋川か、大阪の中でも京都寄りだな」
「我われは、今から調査に向かいますが、鬼一さんはどうします?」
ーー虎之助には早く帰ると約束したが、結界の位置がどうも気になるーー
「私も同行する、案内してくれ」
ーー仕方ない、今日は遅くなるなーー
鬼一は調査班に加わり、寝屋川に向かうことにした。
闇の結界内では、鬼とロシア支部が激しい戦いを繰り広げていた。
最初に襲って来た鬼たちの半数近くを倒したところで、ついに鬼神の白鬼が姿を現した。
「貴様が、国際電気保安協会で最強と言われているスヴェントヴィトか」
白鬼の全身からは、ただならぬ妖気が立ち込めている。
鬼神の出現で辺りは、いっきに冷気に包み込まれた。
アンドロポプは、すでに多数の傷を負っており、ラスプーチンにも疲労が出てきている。
そんな中、ロマノフ議員だけは
「やっと出てきたか白鬼。お前ら鬼どもに殺されたゼウスの仇を討たせてもらうぞ」
と、穏やかな表情で言った。
「たった3人で、乗り込んで来るとは良い度胸ではあるが、死んでもらう」
白鬼は両手をロマノフ議員に向けて『時空魔導波』を放つ。
ーーこれがゼウスたちをガニメデに送った技か。だが、時空を操れるのは貴様だけでは無いぞーー
『空間防御壁』
ロマノフ議員は空間ごと防御する障壁を張って備える。
ドスーン!!
轟音を出しながら『時空魔導波』が『空間防御壁』にぶつかった。
巨大な衝撃が起きる。
周囲にも衝撃波が広がり、闇の結界が弱まってきた。
ーーこれが神と鬼神の戦いか。凄まじいものだなーー
ロマノフと白鬼の戦いを感じながら、アンドロポプは他の鬼と戦っている。
その頃、結界の外にいる鬼一と調査班にも爆音が届いていた。
「今、物凄い音がしましたね」
「巨大なエネルギー同士が、ぶつかった様だな。結界が弱まって来ている」
鬼一は少し考えてから
「私は式神の大鷲に乗って、なにが起こっているのか偵察して来るので、君はDSPの転生者を呼んでおいてくれないか」
と、調査班の一人に頼んだ。
「わかりました。どの転生者を呼びますか?」
「全員だ」
そう言うと、大鷲を呼び出し鬼一は行ってしまった。
虎之助が宿舎に戻ると、岩法師や小太郎たちが出動の準備をしているところであった。
「虎之助、帰って来たか。今から出動だ、寝屋川に闇の結界が出現した」
岩法師が手短に説明する。
「闇の結界でござるか」
ーー拙者は、できれば鬼一が帰って来るのを待ちたいでござるーー
「鬼一さん達は先に行っているようだ」
「えっ、鬼一は、もう現場に行っているのでござるか?」
「そうだ。お前も準備しろ、全員で出動だ」
ーー鬼一が先に行っているのであれば、待っていてもしょうが無いでござるーー
「了解でござる」
急いで虎之助は武器の準備をすませると、迎えに来た桜田刑事の車に乗り込んだ。
「闇の結界を張れると言うことは、今回の敵は大物だな」
岩法師は用心して言った。
「そんなもん、俺の剣技でブチ殺してやりますわ」
自信家である小太郎は息巻いている。
「俺も特訓して編み出した、新しい必殺技を試してみよう」
珍しく狂四郎も、やる気を出しているようだ。
「拙者は敵を全員、悩殺するでござる」
虎之助は、なぜか敵を悩殺するつもりである
「いや、悩殺はダメだろ、退治しないと」
おもわず虎之助に注意する岩法師。
「敵も味方もまとめて、拙者のダイナマイトボディで悩殺するでござる〜!」
ムキになった虎之助は大声で言い張っている。
「お前の貧乳では、無理だ」
しかし、狂四郎からも冷めた口調でダメ出しされた。
ブチッ!
貧乳のことを言われ、虎之助がキレた。
「とりあえず、お前から殺すでござる!」
キレた虎之助が、狂四郎の首を、おもいっきり締める。
「ぐわっ、苦しい、死ぬ!」
「こらっ、やめろ虎之助。今から戦いに行くんだぞ」
岩法師が止めに入るが
「敵より先に、コイツを殺すでござる」
さらに強く首を締める虎之助。
という具合いで、いつもの事ではあるが、仲間内で殺し合いをしていると
「僕も練習した剣技を試してみるよ」
と、左近がボソっと言った。
一瞬、間が開いて
「エーッ!なんで左近が乗ってんだ!」
全員が驚いて叫んだ。
まだ、小学生である左近は宿舎で留守番をしているとハズである。
虎之助も思わず、狂四郎の首から手を離して驚いている。
「もう、そろそろ僕も実戦に出ようかと思って」
しっかりと刀も持って来ており、本気で戦いに参加するつもりの様である。
「いつの間に乗ってたの?まだ、左近君には早すぎるわ」
運転中の桜田刑事が、あせって注意する。
「そうだぞ左近、おとなしく留守番しておくんだ」
岩法師にも止められてしまった。
「そうでっせ、左近さん」
「左近は、まだ子供でござる」
「桜田刑事、現場に着いたら、そのまま左近を送ってもらえませんか」
先程まで締められていた首を摩りながら、狂四郎が桜田刑事に頼んでいる。
「そうするわ。左近君、みんなを現場に送ったら、そのまま宿舎に帰るわよ」
結局、左近の初陣は、メンバー全員に反対され無くなってしまった。
「残念だなぁ」
さみしそうに左近は、窓の外を眺めた。
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