第132話 羅刹との戦い part5
文字数 2,096文字
くノ一戦士ポピノヒーが離脱した後も、炎の魔人フレイム豚の助は、羅刹と壮絶な戦いを続けていた。
凄まじい炎を出す羅刹に対し、暑がりのフレイム豚の助は大量の冷気を出して応戦している。
2人の周囲は、火と冷気がぶつかり合い、大量の蒸気が吹き出し、視界の悪い異様な空間となっていた。
「お嬢ちゃんの話によると。あの中では、羅刹と炎の魔人が対決してるって事ッスね」
武蔵がポピノヒーに確認して来たので
「そうでござる。拙者が召喚したのは、炎の魔人なのに暑がりのフレイム豚の助でござる」
と、ポピノヒーが説明していると
「ちょっと待て。今、フレイム豚の助と言ったか?」
緊張した表情で加藤が聞いて来た。
「言ったでござる。フレイム豚の助が、どうかしたのでござるか」
「フレイム豚の助は、史上最強の氷の魔人で、10万年前に起きた氷河期も奴の仕業だと言われている、とんでもない魔人だぞ」
意外にもフレイム豚の助は、恐ろしい魔人であった。
「姉さん。そんな奴を召喚したらダメですやん」
小太郎は、腕組みしながらポピノヒーを、上から目線で咎めた。
「フルチンの奴に、説教されたくないでござる」
ポピノヒーは、少し不機嫌になった。
「それって、本当にぃ〜。加藤さん、なんか話を盛ってないスカ?」
武蔵は加藤の話を、あまり信用していない。
「残念ながら、それは本当のことです」
いつの間にか、戻って来ていた邪妖精ケヴィンが会話に入って来た。
「また、フルチンの男が増えたでござる」
「フルチンで、すいません。服を取りに帰る時間がなくて。でも、その加藤さんの言うことは事実です」
ケヴィンが説明する。
「なんで、お主は、そんな事を知っているのでござるか?」
「それは、いずれ僕の敵なると思って調べてみたんです。彼は普段は冥王星に住んでいるのですが、10万年に一度、地球にやって来ては氷河期を起こす、凶悪な魔人なのです」
ケヴィンは、フレイム豚の助について詳しく語った。
「それは、それで良いとして。なんでお主は、裸なのでござるか?」
「それはそれで良くは無いですが。僕が裸なのは、アナタがぶつかって来たからですよ」
ケヴィンは虎之助の顔を見ながら応える。
「ぶつかっただけで裸になるって、おかしいでござる」
「確かに変な話ですけど、事実なんです。なぜか服が脱げたんです」
「たぶん、お前が露出の趣味がある変態やからや」
小太郎が、鋭い指摘をして来た。
「君だって、裸じゃないか」
「俺が裸なワケないやろ、アホかお前は」
「いや、お前は裸だろ」
加藤に指摘されて、小太郎は自分の体を見てみると、全裸であった。
「あっ、そうやった。忘れてた。俺は裸やったんや」
「小太郎はアホでござる」
大笑いするポピノヒー。
ビキーン!!
その時、巨大な殺気がポピノヒーたちを襲った。
今までに経験したことが無いほどの鋭い殺気であった。
殺気が発せられた方向を見てみると、2人の屈強そうな男が歩いて来る。鬼神の山椒鬼と燕鬼である。
羅刹なら、大阪DSPのメンバーなど瞬殺するものと思っていたのだが、意外に手こずっているのを見て、加勢しに来たのであった。
「なんだ、お前らは」
真っ先にケヴィンが、男たちに近づいて行く。
「ケヴィン!そいつらから離れるんだ!」
危険を感じて、ボルデ本山が注意するが、山椒鬼が素早く手刀をケヴィンに向けて突き出した。
「危ない!ケヴィン」
ズバッ!
「ぐはっ!」
手刀は、ケヴィンを庇ったボルデ本山の背中から腹部を貫く。
「旦那様!」
倒れたボルデ本山を抱きかかえながら叫ぶケヴィン。
「ケヴィン気をつけろ、奴らは鬼神だ」
そう言いながらもボルデ本山は、今にも息絶えようとしていた。
「まだ恩返しも出来ていないのに、死んだらダメだ旦那様」
「吾輩はもう良いんだ、一度は死んだ身だ。だが、復活してからの人生も悪くは無かったぞ」
鬼塚やDSPのメンバーたちとの想い出が、走馬燈のように蘇る。
「旦那様!」
ボルデ本山の身体が灰となり、風に吹かれて無くなっていく。
「おのれ貴様ら。許さんぞ!」
怒りと哀しみが溢れ出し、ケヴィンは山椒鬼に向かって行く。
「ふん、雑魚どもが。くさい三文芝居を見せやがって」
山椒鬼は、向かって来るケヴィンを蹴飛ばすと「ペッ」と、ツバを吐いた。
「三文芝居だと。旦那様を馬鹿にしやがって、取り消せクソ鬼!」
倒れながら泣き叫ぶケヴィン。
「そうでござる、取消すでござる。三文芝居っていうのは、こうやるのでござる」
何故か、ポピノヒーが一人で芝居を始めだした。
「許しておくんなはれ貫一さん」
そこで、女性を蹴飛ばす演技をしてから
「ええい、金に目が眩みやがってこの女。来年の今月今夜のこの月を拙者の涙で曇らしてみせる」
と、金色夜叉の名場面を熱演したが、特に誰も見ていなかった。
ーーしまった。芝居が古すぎたでござるーー
ポピノヒー痛恨のミスであった。
「本山はん」
小太郎も、ボルデ本山が殺されたことにショックを受けて、座り込んでしまった。
「小太郎、気持ちはわかるが奴らは鬼神だ、殺らなければ殺られるぞ」
加藤は小太郎を立たせると、山椒鬼に向かって刀を構えた。
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