第68話 ゼウスVS小太郎
文字数 2,604文字
ギリシャ本部に帰還したゼウスは、ひどく機嫌が悪かった。
大阪で夜叉に敗れ、逃げるように帰って来たので当然ではあるのだが、先ほどからずっとペドロスに悪態をついている。
「なんじゃ、このネギ塩玉子牛丼は、こんなモン、日本の安サラリーマンしか食わんわ」
「しかしゼウス様、それは以前まで大好物であったのでは?」
「そんな記憶はねえよ、バカかてめえ、早く死ねや」
もの世で、もっとも寛容な御方と言われたゼウスであったが、すっかり意地悪ジジイと化していた。
ーーゼウス様が日本から帰って来て数日たつが、ずっとこんな調子だーー
ペドロスが悩んでいると、部屋の扉が開いて
「ゼウス様、お客様です」
と、幹部のハルバトスが、ラスプーチンを連れて入って来た。
「お前は、ロシア支部の司令官ラスプーチンじゃないか。何のようだ?ワシは機嫌が悪いんじゃ、早く消え失せろ」
ラスプーチンにも悪態をつくゼウス。
「なんだと、この老いぼれが。俺はアポロンに用があるんだ、あの阿呆野郎は俺様を殴りやがったからな、どこにいるのか教えて、エロい人」
ラスプーチンはアポロンに復讐するため、大阪中を探したが見つからなかったので、ギリシャ本部で居所を聞くために飛んで来たのであった。
「アポロンなら、鬼神との戦いで重症を負って入院しておる、ココには居らん。お前は顔がウザいから今すぐ消えろ、このチョビ髭ウザ豚野郎」
「チョビ髭だと。このエロ髭ジジイが!」
ガブッ
怒ったラスプーチンは、ゼウスの後頭部に噛みついた。
「うおっ、頭がやられる、こら脳を食うんじゃない」
ラスプーチンに頭部を食べられて苦しむゼウス。
「これ以上、脳を食われたらヤバい。死ねラスプーチン『神の雷』」
ドシャーン!
ゼウスが雷を落とした。
「くふぅ」
雷の直撃を受けて、ラスプーチンは、そのまま息絶えてしまった。
「あっ、ラスプーチンが死んでしまった」
死んでいるラスプーチンに駆け寄るハルバトス。
バタッ
何かが倒れる音がした。
「あっ、ゼウス様も倒れた」
ゼウスもラスプーチンに頭を噛られ、重症を負っている。
ペドロスが、あわててゼウスに駆け寄る。
「ゼウス様、大丈夫ですか?」
「ううっ、頭が痛い。このままだと死んでしまう。メッチャ嫌じゃが一か八か、一族に伝わる、この伝説の技にかけるしかない」
ゼウスは後頭部から多量の血を流しながらも、ラスプーチンの死体まで這って行くと、ラスプーチンの手を握り
「ゼウスクロス!」
と、叫んだ。
すると、強烈な光を放ちながらゼウスとラスプーチンが合体して、スーパーゼウス人へと変化して行くではないか。
先ほどまで致命傷を負っていた身体が、光り輝き、頭部の傷も消え去っていく。
「おおっ、力がみなぎって来る。成功じゃ!」
スーパーゼウス人とは、10万年に一人、誕生すると言い伝えられている伝説の超戦士である。
かって、自称『宇宙の帝王』である英語講師レジナルド・スミスが、もっとも警戒したという噂が、あったかもしれないし、無かったかも知れない程の戦闘能力を持っている。
「まさか、ゼウス様が伝説のスーパーゼウス人に成れたなんて」
驚きを隠せないハルバトス。
「これでワシは無敵じゃ。ちょうど良い、今から鬼神をブチ殺しに行って来る」
ゼウスは自信にみなぎっている。
「トォー」
と、叫びながらゼウスは日本に向かって飛んで行った。
その頃、大阪ではグッピーちゃん率いる処刑鬼隊と、DSP(デビルスペシャルポリス)のメンバーが死闘を繰り広げていた。
「しつこい奴らだ、今日こそ一掃してやる」
鬼一を始めDSPの転生者たちは、しつこく何度も現れる処刑鬼隊に対して、全員で出動していた。
「行けっ、巨大武者軍団」
鬼一は、巨大武者の式神を大量に呼び出した。
「風鬼、アイツらを風で吹き飛ばすのよ」
グッピーちゃんの指示で、風鬼は竜巻を発生させて反撃する。
その時、スーパーゼウス人が空から現れた。
「うわぁ、竜巻だぁ」
竜巻に巻き込まれてスーパーゼウス人は、いったん上空に舞い上がってから落ちてきた。
「痛てっ」
「誰だ、お前?」
水鬼が近づいて来た。
「ワシはスーパーゼウス人じゃ。鬼神は、どこに居る」
「お前のような小汚いジジイに、鬼神様の居所を教える訳ないだろ」
バキッ
水鬼の右フックが、スーパーゼウス人にクリーンヒットした。
「効かぬなぁ」
しかし、スーパーゼウス人には、まったく効いていない。
「スーパーゼウス水平チョップ」
ドスン!
「るへ〜」
スーパーゼウスの攻撃で、水鬼は日本海まで吹っ飛ばされてしまった。
圧倒的なスーパーゼウス人のパワーを見て、先ほどまで争っていた処刑鬼隊とDPSのメンバーは戦いを中断して警戒し始めている。
「ほう、少しはやるみたいやな。だが、俺が相手ではどうかな」
まわりが注目する中、偉そうに小太郎が、スーパーゼウス人の前にやって来た。
「どけ、小僧。お前に構っているヒマはない」
「なんやと、このジジイ。くらえ必技『三点突きお徳用パック』」
三点突きお徳用パックとは、脳天・心臓・腎臓の3ヶ所を突いて、確実に相手を絶命させるという恐ろしい技である。
ズバズバズバ!
ーーやった、手応え有りーー
小太郎は勝利を確信した。
しかし、スーパーゼウス人は平然と立っている。
「効かぬのう」
伝説の超戦士であるスーパーゼウス人には、小太郎の剣技など蚊に刺された程にも感じない。
「アホな。俺の秘技が」
「スーパーゼウス脳天唐竹割り」
ズボッ!
スーパーゼウス人の頭上からのチョップで、小太郎は地中深くに埋まってしまった。
「みんな、まとめてかかるのよ」
グッピーちゃんの号令と共に、阿久良王・温羅・風鬼が、一斉に攻撃する。
「スーパーゼウス・悪鬼消滅波」
ズバーン!
スーパーゼウスの巨大なパワーで繰り出された衝撃波で、この場にいる全員が遥か遠くに吹っ飛ばされてしまった。
処刑鬼隊とDSPのメンバーが居なくなり、一人残ったスーパーゼウス人は
「しまった、やり過ぎた。鬼神の居所を聞く相手が居なくなってしまったわい」
と、まだ自分の巨大すぎる力を制御できていないでいる。
その時。
ピキッ!
スーパーゼウス人は、背後から鋭い殺気を感じた。
「まだ、残っている者が居たようじゃな」
振り向くと、真っ黒な闘気に包まれた虎之助が、刀を構えて立っている。
スーパーゼウス人と虎之助の、一騎討ちが始まろうとしていた。
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