第40話 アキレスVS虎之助
文字数 3,568文字
ゼウスと別れたアキレスたちは、アメリカ村に向かっていた。
「アキレスさん。アメリカ村なんかに、何の用ですか?」
戦闘部隊の一人が尋ねると。
「全知全能のゼウス様が、アメリカ村の公園に国際電器保安協会のエージェントの溜まり場があると、おっしゃっていたのだ」
アキレスが経緯を説明する。
「なるほど、そいつらからDSPの情報を聞くのですね」
「そうだ。我われの目的は、リンゼイ老師を殺した転生者の抹殺だからな」
戦闘部隊の一人が指さしながら
「もしかして、アイツらじゃないですか」
と、公園にたむろしている、3人の白人を見つけた。
「たしか、あの男はアメリカ支部のライアンだな。一度、会ったことがある」
アキレスは、真っ直ぐにライアンに向かって行く。
「おい、変な奴らがコッチに向かって来るぞ」
アンドロポプが、アキレスに気付いた。
「あの男、見覚えがあるなぁ」
しかし、ライアンは誰なのかを、なかなか思い出せないでいる。
「不審な男だから、無視しましょう」
マーゴットは、近づいて来るアキレスを不気味がっている。
「いやぁ、まさか冥界が地獄と繋がってたなんで、おどきでんなぁ」
「拙者も、ビックリしたでござる」
「普通に考えたら、冥界も地獄も似たようなモンだからな」
マーゴットの目の前を、虎之助と小太郎、狂四郎の3人が湯気を出しながら歩いている。
「アンタら、また地獄の温泉に行って来たの?」
マーゴットは、あきれて聞いた。
「あそこの温泉は、サービスが最高でござるよ。特に食事が美味しいでござる」
火照った顔で、虎之助が答える。
「姉ちゃん、俺と同伴ネコ喫茶に行かへんか?」
また、小太郎がマーゴットを口説き出した。
「そんな変な所に、行くわけ無いでしょ!」
しかし、キッパリと断わられてしまった。
「また、お前たちか」
ライアンは嫌そうな顔をしている。
「なんや、お前。俺らが来たら迷惑なんか!」
小太郎が怒鳴った。
「そうだよ。迷惑だから、あっち行けよ!」
ライアンも、喧嘩ごしになっている
「アキレスさん。あいつら、変な若者に絡まれてますよ」
ライアンと小太郎が口論しているのを見て、戦闘部隊の一人が言った。
「情けない奴らだな。俺が追い払ってやる」
アキレスは小太郎の側まで行くと
「どけ!邪魔だ小僧」
と、大声で威嚇した。
「なんや、このオッサン。姉さん、コイツら、しばいてもエエでっか?」
「小太郎。その男は、ただ者じゃ無いでござる。気を付けるでござる」
虎之助は、アキレスの身体から、かもし出す闘気の巨大さを感じとった。
「死にたくなければ、今すぐに立ち去れ」
アキレスは小太郎に警告するが
「なに言うてるねん、コイツ阿呆ちゃうか。やるんやったら、いつでも、かかってこんかい」
と、小太郎は強気である。
「せっかく警告してやったのにバカな奴だ。みんな、コイツらを殺ってしまえ」
アキレスの号令と共に、6人の戦闘部隊が襲いかかった。
「俺に勝てると思うてるんか」
小太郎の両手が光り輝き、白い神気を放出した。
「グフッ!」
戦闘部隊の一人が、まともに神気を喰らい倒れこむ。
「実は、この前、リンゼイ老師っていうジジイと戦ってから、神気が出せる様になったんですわ」
リンゼイ老師を食って消化した小太郎は、リンゼイ老師の力の一部を受け継いでいたのであった。
「奇遇でござるな。実は拙者も、神気を出せる様になったでござる」
そう言うと、虎之助の両手が黒く変色して、ドス黑い闘気が放たれた。
「クフッ!」
また、戦闘部隊のメンバーが倒れて行く。
「お前のは、どう見ても暗黒闘気じゃねえか!それは悪者しか出しちゃダメだろ!」
だが、狂四郎に突っ込まれてしまった。
「言いがかりでござる。これは神に誓って神気でござる」
「そんなドス黒い神気があるか!」
虎之助と狂四郎は、アキレスを放ったらかして、口論をし出した。
「ほう、神気や暗黒闘気を出すとは、貴様ら転生者だな」
戦いを見ていたアキレスに、虎之助たちが転生者だと見抜かれてしまった。
「転生者だったら、どうするんや。お前も神気を喰らえ」
小太郎は、アキレスに向けて神気を放つ。
「ついでに、拙者の暗黒闘気も喰らうでござる」
虎之助も暗黒闘気を放った。
「自分でも暗黒闘気って言ってるじゃねえか!お前は魔物か!」
虎之助に、あきれる狂四郎。
シュバババ!!
アキレスに神気と暗黒闘気が直撃する。が、しかし、アキレスは、かすり傷ひとつ負っていない。
「残念だが、俺には効かぬな」
平然と立っているアキレス。
「なんやコイツ。ぜんぜん効いてないやんけ」
「狂四郎も、なにか出すでござる」
「なにかって言われても……とりあえず、やってみるか」
狂四郎が構えると両手から、ピューと、お湯が出た。
「あれっ。お湯しか出ねえ」
「やっぱり、狂四郎は阿呆でござる」
大笑いする虎之助。
「もうええわ。下がっとれ、このヘタレが」
小太郎が狂四郎を押しのけて前に出た。
「なんだと、この関西弁野郎」
小太郎にヘタレと言われて、怒る狂四郎。
「もう、お前らの力は分かった。そろそろ死んでもらおうか」
アキレスは凄まじく巨大な闘気を3人に向けて放った。
「うへ〜」
強烈な闘気を受けて、虎之助たち3人は吹っ飛んでしまった。
「ううっ。これは純粋な戦闘闘気でござる。こんな闘気を出せる男がいたとは驚きでござる」
飛ばされながらも、虎之助は分析している。
「あっ!思い出した。アイツはギリシャ本部のアキレスだ!」
戦いを見ていたライアンは、やっとアキレスの事を思い出した。
「誰だそれ?俺はしらないな」
「なに言ってんだアンドロポプ。あの無敵のアキレスじゃないか」
「いや、そう言われても、知らんけど」
アンドロポプは、本当に知らない様である。
「あいつの能力は、戦闘に特化していて、あらゆる攻撃が効かないそうだ」
「そんな凄い奴だったのか」
「こうなったら、毒入りクロワッサンを、食わすでござる」
いつの間にか、メイド少女戦士マリリンに変身していた虎之助は、ダイレクトにアキレスの口に毒入りクロワッサンを突っ込む。
しかし。
「ムシャムシャ」
アキレスは、普通に毒入りクロワッサンを食べてしまった。
「美味い!メイドさん、もうないの?」
意外に美味しかった様である。
「ひぃー!拙者が調合した猛毒が効かないでござる。コイツはバケモノでござる!」
メイド少女戦士マリリンは逃げ出してしまった。
「唐沢家忍術『地獄門』」
逃げながら『どこでも地獄ドア』を出して
「みんな、地獄に逃げるでござる!」
と、叫びながら『どこでも地獄ドア』に入って行った。
「姉さん、待って下さい」
「俺も逃げるぞ」
小太郎と狂四郎も続いて『どこでも地獄ドア』に逃げ込んで行く。
バタン!
3人が入ると『どこでも地獄ドア』は、フッと消えた。
「クソっ!悪魔どもめ、地獄に逃げやがったな」
悔しがるアキレスに
「いや、アイツらは悪魔じゃなくてDSPの転生者だぞ」
と、ライアンは訂正するが。
「暗黒闘気を使いこなして、地獄に逃げる奴らは、どう考えても悪魔だろ」
「まあ、そう言われてみれば、そうだけど」
アキレスの説明に納得してしまった。
「ところで、お前らも『国際電器保安協会』のエージェントだろ?俺たちはリンゼイ老師を殺した転生者を探しているんだが」
「それなら、さっきアンタに、毒入りクロワッサンを食べさせたメイドの少女だ」
「あんな、小娘にリンゼイ老師が殺られたのか。信じられんな」
「俺は、毒入りクロワッサンを食べても平気な、アンタの方が信じられんけどな」
「毒など平気だ、俺はアキレス腱を攻撃されない限り無敵だからな。それより、あのメイドに逃げられてしまったな」
「大丈夫。ここに居れば、また会えるハズだ。アイツら頻繁にココに来るからな」
「いい湯でだったでござる」
虎之助が浴衣姿で温泉から出て来た。
「いい湯は、わかったけど、これからどうすんだよ?」
虎之助たちは、3人で地獄の温泉に来て、くつろいでいた。
「狂四郎は、口うるさいでござるな」
「でも、あのアキレスっていうオッサンを、何とかしないと」
「はいはい、何とかするでござるよ」
コーヒー牛乳を飲みながら、虎之助は適当に返事をしている。
「お前は、ずっと、そればっかり言ってるじゃん」
「ここの温泉は最高でんなぁ」
小太郎も、温泉から出て来た。
「まったく、お前らは緊張感ゼロだな」
「狂四郎。お前こそ、せっかく地獄の温泉に来たんや、のんびりしようや」
「小太郎、拙者と卓球するでござる」
虎之助は笑顔で、卓球台を指さしている。
「エエでんなぁ、やりまひょ」
「拙者のサーブは、強烈でござるよ」
「俺のスマッシュの方が凄いでっせ」
2人は楽しそうに、卓球を始め出した。
「ダメだコイツら」
そんな2人を見て、失望する狂四郎であった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)