第85話 ハリセン・ポッターとダンステリア
文字数 2,167文字
「着きましたよ。ここが魔法学校です」
ハリセン・ポッターに案内されて、虎之助は魔法界にある魔法学校に到着した。
古めかしいヨーロッパ調の大きな建物である。
「へえ、立派な学校でござるな」
虎之助が感心していると、向こうから学生が3人やって来た。
「よお、ポッター。女連れで良いご身分だな」
3人組のリーダ格っぽい少年が声をかけて来た。
「あっ、マカフォイだ。嫌な奴に会ったな」
ハリセン・ポッターは露骨に嫌な顔をしている。
「お前にしては美人を連れているな。どうせ汚れた血の人間だろう」
3人組は虎之助を囲んでジロジロ見ている。
「コイツら何でござるか?」
「マカフォイは、僕にいつも嫌味を言って来るんだ」
ハリセン・ポッターは、マカフォイを無視して虎之助と校舎に入ろうとした。
「待てよポッター。この女は汚れた血だ、校舎に入れるわけにはいかない、置いていけ」
マカフォイが虎之助の右手を、つかんで止めた。
「やめろよマカフォイ、その手を離せ」
「なんだ、やる気かポッター」
2人は険悪な雰囲気になった。
「くっくっくっ」
その時、とつぜん虎之助が笑い出した。
「この女、なにが可笑しい」
「お主らは、拙者の正体を知らないようでござるね」
虎之助は両手を前に組むと
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
と、唱えだした。
すると、虎之助は魔法セーラ戦士ポピリンに変身して
「じっちゃんの顔にかけて、お仕置きでござる」
と、魔法セーラー戦士ポピリンの決め台詞を叫んだ。
「まさか、この女が魔法界のスーパーアイドル、魔法セーラー戦士ポピリンだったのか」
魔法セーラー戦士ポピリンを間近に見て、驚愕する3人組。
「ポピリンさん、サインちょうだい」
「僕は握手して欲しいな」
マカフォイの子分2人は、態度を変えてポピリンにサインと握手をねだりはじめた。
「こらっ、お前らどっちの味方なんだ!」
マカフォイは子分たちを怒るが、2人は興奮して聞いていない。
「じゃ、一人づつ握手とサインするでござる」
「ワーイ、ヤッター」
喜ぶ2人を見てマカフォイはブチ切れて
「くそっ。お父上に言いつけてやる」
と、捨て台詞をはいて、走り去って行った。
「なんか、あの子、走って行ったけど大丈夫でござるか」
心配してポピリンが聞くと
「マカフォイのお父さんは、金持ちで魔法界の有力者なんだ」
ハリセン・ポッターも気になっている様子である。
「まあ、気にしてもしょうが無い。さっさとダンスパーティーに行くでござる」
その日のダンスパーティーは、ハリセン・ポッターにとって夢のように楽しいパーティーとなった。
ポピリンをダンスパートナーに連れて来た事で、みんなから羨ましがられて、幸せいっぱいであった。
ただ、料理に関してはポピリンから大いに不満がられたが、近所の王将で餃子を買って食べさせると機嫌が治まったので、ハリセン・ポッターはホッとしたのであった。
翌日、安倍康晴は再び加藤の自宅を訪問していた。
「なんだ、また君か」
加藤は呆れ気味で安倍を見ている。
「今日こそは、ハッキリと決めたいと思いまして」
昨日の交渉では、加藤が自業自得でブチ切れて、ウヤムヤになってしまっていたのである。
「なるほどな、まあ良いわ。ちょうど昼食用のオデンを作っていたところだ、入りたまえ」
「では、おじゃまします」
居間に入ると机に土鍋が置いてある、おそらくオデンが入っているのであろう。
「君はオデンは好きかね?」
「嫌いでは無いですね」
「じゃあ、熱あつオデン対決じゃ」
なんだか加藤は嬉しそうである。
「お互いの器にアツアツの大根と餅巾着、厚揚げを入れて、早く食べ終わった方が勝ちじゃ」
器にオデンを入れながら、加藤が説明する。
「私が勝ったら、顧問になってくれるんですか?」
安倍は目的であるDSPの顧問の件を確認した。
「なに言ってんだ、ワシが勝ったら顧問になってやるんだ」
楽しそうに加藤が言う。
ーーそれじゃ私がワザと負ければ良いのか。簡単な賭けじゃないかーー
安倍は安心した、これで加藤の顧問就任は確実である。
「柚子胡椒と練カラシがあるから、好きな方を使え」
「では、私はコッチを」
安倍は柚子胡椒を少量、自分の器に入れる。
「ほう、柚子胡椒を選ぶとは通だな。こりゃ油断できんわ」
と、言いながら加藤は大根を口に入れた。
「アツアツ、この熱さが美味いんだよな。いや何やこれ、あかん、これは」
加藤の口が止まる。
「はうっ!」
バタッと加藤は倒れた。
「大丈夫ですか加藤さん!」
「大丈夫な事あるかい!あり得ない量のカラシが入っとるがな!」
加藤は倒れながらもキレている。オデンの器には練カラシのチューブが3本分も入っていた。
「あり得ない量って、入れたのはアンタでしょ」
安倍が突っ込む。
「そんなん関係あるかい!この、ミスター慶應のチャラ男が!」
「いや、私はミスター慶應じゃないというか、慶應大学にも行ってませんけど」
「うるせえ!この生きてる価値も無い豚人が!」
「ムチャクチャ言いますね」
安倍は呆れながら加藤を見ている。
「もう君とは、やってられんわ」
またしても、加藤は勝手に、ふてくされ出した。
ーーまた、こんな結果になってしまった。しかもアツアツ対決の要素が全く無かったしーー
あいかわらず、加藤の顧問への交渉は難航しているのであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)