第130話 羅刹との戦い part3
文字数 2,057文字
虎之助と小太郎を仲直りさせる事に失敗した加藤であったが
ーーこうなったら、とっておきの幻術を使ってやるーー
と、めげずに更に強力な幻術を使うことにした。
呪文を唱え『大恋愛の術』を2人に向かって放つ。
すると、今まで殺し合いをしていた虎之助と小太郎の動きが止まった。
ーーなんや急に姉さんがセクシー美女に見えて来たでーー
小太郎は戸惑っている。
ーー小太郎が、急に阪神タイガース時代の新庄なみのイケメンに見えて来たでござるーー
虎之助も戸惑い出した。
「ワシのとっておきの幻術だ、今回は大丈夫だろう」
加藤は安堵して、武蔵とボルデ本山が奮闘している羅刹との戦いに戻ろうとした。
ーーいや、なにかが変でござる。あの間抜けズラの小太郎がイケメンに見えるハズがない。これは幻術でござるなーー
虎之助は、自分が幻術にかけられている事に気がついた。
辺りを見回してみると、武蔵とボルデ本山が必死に羅刹と戦っている。
そこへ向かって、加藤が走って行くのがみえた。
虎之助は素早く加藤の後方へ走って行き
ポカッ!
と、後頭部を殴りつけた。
「痛っ」
頭を押さえる加藤。
「お前か!さっきから、拙者たちに妙な術をかけていたのは」
虎之助は怒っている。
「しょうがないだろ。お前ら羅刹との戦闘に加わらないで、仲間同士で勝手に殺し合いをしてるんだから」
バレてしまっては仕方がない。加藤は、もっともな言い訳をした。
「言い訳は聞かないでござる。とりあえず、お主を殺すでござる」
殺意を込めて虎之助が、加藤に斬りかかる。
「うわっ、こいつホンマに言い訳を聞かない!」
逃げる加藤。
「逃さんでござる」
加藤を追いかけようとした虎之助であるが
ガシッ
「姉さん!俺と結婚してくれや」
と、いきなり後ろから、小太郎に抱きつかれた。
「うわっ!なんだぁ、やめるでござる」
どうやら小太郎は、完全に加藤の幻術に、かかってしまっているようだ。
小太郎は虎之助を押し倒すと
「姉さんと子供を9人作って、野球チームを作るんや!」
血走った目で小太郎は、虎之助に襲いかかった。
「やめろ小太郎。お主は、加藤の幻術にかけられているでござる」
虎之助は、加藤の幻術のことを説明するが
「幻術とか、そんなんどうでも良いやないですか。とりあえず、姉さん、服脱いで下さい」
小太郎は気にせず、襲って来る。
「うわっ、コイツ、思ってたよりド助平でござる」
必死に小太郎を振りほどくと、虎之助は逃げだした。
「姉さんと子供を作るんや」
もの凄い勢いで小太郎が追いかけて来る。
「作って、たまるか〜」
逃げる虎之助。
再び自宅に帰って服を着直した邪妖精ケヴィンは、急いで現場に戻って来た。
ーー一時は、どうなる事かと思ったが、なんとか戻って来れたぞーー
目の前には、巨大化して恐ろしい姿になった羅刹がいる。
だが、ケヴィンは微塵にも恐れず
「覚悟しろ羅刹。貴様は、このケヴィンが始末する」
と、勇敢に羅刹に向かって行く。
ーー命に変えても羅刹を倒し、ボルデ本山の旦那に恩返しをするぞーー
ケヴィンの闘志は、凄まじく高まっていた。
しかし
ドガッ!
「どけっ!邪魔でござる」
いきなり後ろから虎之助にぶつかられて、吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされた勢いで、またしても服が脱げて、ケヴィンは全裸になってしまった。
ケヴィンを吹っ飛ばしてまで小太郎から逃げていた虎之助であるが、羅刹の目の前に来てしまった。
「デカくて恐ろしい鬼でござるな」
羅刹の巨大な悪魔のような姿にビビった虎之助であるが、後ろからは血走った小太郎が追いかけて来る。
「小太郎に襲われるよりマシでござる」
虎之助は、小太郎の相手をするより、羅刹と戦うことに決めて突っ込んで行った。
ーーあの鬼を倒すには、最強の変身をするしか無いでござるーー
走りながら虎之助は呪文を唱える
すると虎之助の服装が変化して行き『くノ一戦士ポピノヒー』へと変身した。
元々、忍者であった虎之助は、自分の力が最大限に発揮できる『くノ一』へと変身したのである。
さらにポピノヒーは、攻撃の呪文を唱える。
「忍法『南蛮漬け』」
忍法『南蛮漬け』とは、敵を酢に浸して柔らかくしてから、骨ごと食べるという荒業である。
大量の酢が羅刹の頭上から降り注ぐと、ポピノヒーが腕に喰いついた。
「オエッ、まっずーい」
ひと口、食べてみたが、やはり羅刹は不味かった。
「お主は、不味すぎるでござる!日頃から食生活には気をつけて、美味しく食べられる様にしておくでござる!」
ポピノヒーは羅刹に苦情を訴えた。
「なんだと、この小娘が!訳のわからんクレームを言うな。お前こそ、丸焼きにして喰ってやる」
羅刹はポピノヒーに向けて、口から灼熱の炎を吐き出した。
「丸焼きにされて食われるのは、お主の方でござる」
ポピノヒーも火遁の術で業火を出し、羅刹を焼こうとする。
お互いの炎がぶつかり合い、辺りは熱気に包まれた。
世にも恐ろしい、負けたほうが食われるという、羅刹とポピノヒーの、丸焼き喰い合い対決が始まろうとしていた。
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