第111話 ケルベロスと柴犬
文字数 2,049文字
加藤はヘスティアたちと、京都の愛宕山を捜索していた。
柴犬の姿をしたケルベロスに、白鬼の屋敷がある時空の歪を探させていたのだが
「これ、本当にケルベロスか?どう見ても、普通の柴犬にしか見えんが」
と、加藤は疑問を口にした。
確かに、本物の柴犬に見える。
「そうだな、最近は、ずっとこの姿だから、俺が見ても普通の柴犬にしか見えないな」
ハーデースは呑気に答える。
「もしかして、本物の柴犬に入れ替わってたりして」
笑いながらヘスティアが言った。
「まさか、入れ替わったとしたら、本物のケルベロスはドコに行ったと言うんだ?あんな目立つ犬はいないぞ」
「それもそうね、頭が3つあって巨大だものね」
「どっちでも良いが、探す気があるのか、この犬。ただ散歩してるだけに見えるが」
ポセイドンはケルベロスの能力を疑っている。
「大丈夫だ、これでも冥界の番犬ケルベロスだぞ」
ハーデースは笑顔で答えた。
その頃、火星では。
太陽系暗黒大魔王こと助清が、犬の散歩をしていると
「お父タマ、その犬どうしたの?」
娘のパクチーと銅鬼が駆け寄って来た。
「この前、冥界に遊びに行ったら強そうな犬が居たんで、持って帰って来たでヤンス」
なんと、助清が連れている犬は、本物のケルベロスであった。
「ダメよ、お父タマ、勝手に連れてきちゃ。飼い主さんが困っているハズですゥ」
「大丈夫でヤンス。代わりに、血統書付きの高級な柴犬を置いて来たッスから」
「なら、良いでスゥ」
パクチーは、あっさりと納得した。
ーー良いわけ無いだろ!どう見てもケルベロスだし。どんな高級な犬をもらっても、飼い主からすれば自分の犬じゃないと絶対にダメだからーー
と、口には出さないが、内心そう思う銅鬼であった。
「死ねやオッサン!」
小太郎の剣が夜叉を襲う。
「また、お前か」
パシッ!
うっとおしそうに、夜叉が小太郎を叩いた。
「うへ〜」
軽く叩かれただけで、もの凄い勢いで、遠くに吹っ飛ばされて行く小太郎。
「こりゃマズい」
ボルデ本山が、急いで大鷲に変身して小太郎の救助に向かった。
「やはり、この男、ただ者では無いッスよ。どうする、お嬢ちゃん?」
武蔵が虎之助に問うた。
「こうなったら、合体技を使うでござる」
「それは絶対に駄目ッス!」
今までDSPのメンバーで合体技が上手くいった例が無いので、強く拒否する武蔵。
「じゃ、僕と合体するニャン」
ニャン平太は虎之助の右手を掴むと
「合体ニャン!」
と、叫んだ。
すると、2人は光に包まれて合体して行く。
ーーどうせニャン平太と虎之助が合体したら、猫娘みたいなのが現れるッスーー
と思いながら武蔵が見ていると
「四神合体ロボ『ゴットニャン平太』参上!」
強い光の中から、3メートルほどのメカニャン平太が現れた。
「ええっ、なんでロボットなんっスか?それに、2人で合体したのに四神合体って!」
武蔵は死ぬほど驚いた。
「小太郎の仇ニャン、死ねオヤジ!」
ゴットニャン平太の両目から怪光線が発射される。
「そんなもの、この俺には通用しないわ」
両腕をクロスさせて、光線を防御する夜叉。
「それは、どうかニャア」
ゴッドニャン平太は怪光線を出したまま、夜叉に向かって走り出して
「ゴッドブーメラン」
と言いながら、背中に装着していたブーメランで、思いっきり夜叉を殴りつけた。
ボガッ!
「グフッ」
この攻撃は効いたようである。
しかし武蔵は
ーーブーメランって、殴るんじゃなくて投げるんッスよーー
と、思った。
「やってくれたな、お前ら皆殺しや!」
怒った夜叉は魔導波動砲を放つ。
ドガーッ!
「ウニャアー」
まともに喰らってしまったゴッドニャン平太は、遠くへ吹っ飛ばされて行く。
みんな吹っ飛ばされたので、武蔵が一人で夜叉の相手をする事になってしまった。
「勝てる気はしないが、僕も一応は日本最強の剣豪ッス。刺し違えても殺ってやるッス」
武蔵は死を覚悟して、夜叉との一騎打ちに挑む。
「二天一流を味わうッス、鬼野郎!」
二刀流で夜叉に向かって走り出す武蔵。
「ほう、いい度胸や。かかって来い若造」
待ち受ける夜叉。
夜叉に吹っ飛ばされた衝撃で、四神合体ゴッドニャン平太は合体が解けてニャン平太と虎之助に戻ってしまっていた。
「痛たいでござる、あの鬼は絶対に殺すでござる」
虎之助は打撲した腰をさすりながら、ニャン平太を探した。
「あれっ、ニャン平太が見当たらないでござる」
「お嬢ちゃん、僕はココだニャン」
上の方からニャン平太の声がした。
「あっ、ニャン平太」
見上げると、ニャン平太は空に登って行く。
「さよなら、お嬢ちゃん。今までありがとうニャン」
どうやら、ニャン平太は魔導波動砲のダメージが致命傷となり、天に召されたようである。
「ニャン平太!」
ニャン平太は、そのまま上空に登り見えなくなってしまった。
虎之助はニャン平太を見送ると
「あのオッサンをブッ殺して、化け猫の仇を取るでござる」
と、親友の復讐を誓うのであるが、ニャン平太の事を、化け猫呼ばわりする虎之助であった。
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