第61話 黒服と下着泥棒
文字数 2,647文字
アメリカ村では、虎之助とアキレスが、タコ焼きの奪いあいを続けていた。
「あれっ、今日は綺麗なお姉さんが居れへんやん。ムサい男ばっかりやなぁ」
小太郎と武蔵もやって来たが、マーゴットが居ないので残念そうにしている。
「ムサ苦しくて悪かったな」
アンドロポプは少しムッとした。
「ホンマに、けったくそ悪い奴らやで。お前ら、こんな所に溜まるなや、邪魔やねん」
小太郎は吐き捨てるように、言い放った。
「おい、お前。それは言い過ぎだろ」
虎之助が近くに居るので、あまり関わりたく無いと思っていたアンドロポプも、さすがにキレかけている。
「なんやと、このデカ物」
美女に会えず、機嫌が悪い小太郎は喧嘩腰である。
「小太郎ッチ、こいつ僕が殺っちゃっても良い?」
誰かと戦いたくて仕方がない武蔵は、すでに刀を抜いており、完全に殺る気である。
「おい、待て。お前ら喧嘩するんじゃない、今、俺たちは忙しんんだ」
アンドロポプが小太郎と揉めているのを見て、慌ててアポロンが止に入って来たが
「なんや、お前は、姉さんにヤラれたクセに、偉そうにするなや」
と、アポロンが一番、言われたくない事を言われてしまった。
「なんだと、このクソ餓鬼が、太陽パワーで焼き殺すぞ」
止に入ったはずのアポロンであるが、さすがに小太郎の悪態にはムカついてキレてしまった
「ちょっとアポロンさん、こんな連中は、相手にしたらダメですよ」
そんな様子を見てペガサスが、アポロンとアンドロポプをなだめるが、2人の怒りは治まりそうに無い。
小太郎と武蔵も、こちらを睨みつけている
ーー困ったな。今はゼウス様の救出が最優先で、DSPの連中と、もめている場合じゃ無いんだけどーー
ペガサスは、困り果ててしまった。
「なんじゃ、思ったよりもバカそうな奴らじゃの」
少し離れた所で、ぬらりひょんと黒服の男たちが虎之助たちの様子を見ていた。
「奴らを侮ってはいけませんよ、ぬらりひょんさん。特にあの小娘は、数々の強者を葬って来た曲者です」
黒服の一人が説明する。
「ワシには、そうは見えんがのう。だが、国際電器保安協会の奴らには死んでもらわんとな。レムリア殿との約束じゃからのう」
「DSP[デビルスペシャルポリス]の転生者どもは、どうします?」
「アイツらは、どっちでも良いんじゃが。邪魔だてするなら、一緒に死んでもらおうかの」
「わかりました。では、参りましょう」
ぬらりひょんと黒服の男たちは、アポロンたちに向かって歩きだした。
「アポロンさん、変な奴らが近づいて来ますよ」
真っ先に、ペガサスが黒服たちに気付いて、アポロンに知らせた。
「うるさい。俺は、いま忙しいんだ」
しかし、アポロンは小太郎と睨み合っており、今にも掴みかかろうとしている。
「でも、アイツら、ポセイドン達を連れ去った黒服グループですよ」
「なんだと!」
と、アポロンが気づいた時には、既に周りを囲まれていた。
「国際電器保安協会の諸君、今から死んでもらうかの」
いつの間にか、ぬらりひょんを中心とした黒服の男たちに、しっかり包囲されてしまっている。
ーーいきなり大人数で囲まれて状況は不利であるが、ゼウス様を連れ去った奴らだ、逃げる訳にはいかないーー
「ふざけるな!返り討ちにしてやる。アキレス、ペガサスぬかるなよ」
アポロンたち3人は、小太郎と武蔵はとりあえず置いといて、黒服たちに対して戦闘体制に入った。
双方に緊張が走る。
だが、その時。
「あっ、あの爺さん、見た事ありますわ」
なぜか、小太郎が、ぬらりひょんを指さして言った。どうやら、見覚えがあるようだ。
「あのジジイは、何者でござるか?」
虎之助が、アキレスから奪ったタコ焼きを食べながら聞いた。
「確か、ウチの宿舎の近隣で有名な、下着泥棒ですわ」
「そう言えば、拙者も、Aカップのブラジャーを盗まれた事があるでござる」
虎之助が、思い出したように言った。
「待て、お主ら。人違いじゃ、ワシはそんな事しとらんぞ。それに、Aカップのブラジャーなんぞに興味ないわ」
いきなり、身に覚えのない下着ドロボウ呼ばわりされて、ぬらりひょんは焦っている。
「小太郎、武蔵。このジジイをブッ殺すでござる」
虎之助の号令と共に、3人は一斉に、ぬらりひょんに斬りかかった。
「馬鹿、やめるんじゃ。ワシは、国際電器保安協会のエージェントを殺りに来たんじゃ。お主らに用は無い」
「問答無用、死ねジジイ」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
ぬらりひょんは、必死に止めるが、3人にメッタ斬りにされて絶命した。
「なんだぁ、こいつら、メチャクチャだ」
黒服たちは一瞬で、ぬらりひょんが殺られたのを見て、怯んでしまっている。
「あの男も、見た事ありますわ」
黒服の一人を指さしながら、小太郎が言った。
「何者でござるか」
虎之助が聞く。
「宿舎の周辺で有名な、覗き魔ですわ」
「そういえば、拙者も、お風呂を覗かれた事があるでござる」
虎之助は、思い出した風に言った。
「待て、人違いだ。俺はそんなこと知らん。それに、君のような貧相な身体を覗きたいとは思わんわ」
いきなり、覗き魔あつかいされ、黒服の男は焦った。
「武蔵、コイツを殺ってまえ!」
「了解ッチ」
ズバッ!
小太郎の号令と共に武蔵が黒服の男を、一瞬でメッタ斬りにした。
バタッ
黒服の男が倒れると、他の黒服たちも動揺して、後退りを始めた。
「あれっ。あの男も、見た事ありますわ」
小太郎が、別の黒服を指さした。
「何者でござるか」
「宿舎の近所で有名な、痴漢ですわ」
「そう言えば、拙者も、あの男に何度か痴漢されたでござる」
虎之助は適当な事を言った。
「ちょっと待て。俺は痴漢なんかした事ないし、お前とは初対面だ!」
とんでもない、濡れ衣を着せられて、黒服の男は焦り出した。
「言い訳は聞かないでござる、小太郎、武蔵。コイツを殺すでござる」
虎之助の号令と共に3人は、黒服に襲いかかる。
黒服の男は、あっという間にメッタ斬りにされて倒れた。
「コイツら言動がメチャクチャだ。相手にしてたらヤバい、みんな、いったん退却だ」
変質者扱いされたうえに殺されたのでは、たまったもんじゃない。黒服たちは、一目散に逃げ出した。
「待つでござる、変態ども!」
それを追いかけて行く、DSPの3人。
残ったアポロンとアンドロポプ、ペガサスの3人は顔を見合わせて
「DSPの宿舎の近所って、変態だらけですね」
「いや、ぜんぶ冤罪だろ」
「でも、アホ3人組のお陰で、俺たちは助かったな」
と、ホッとするのであった。
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