第33話 デビルスペシャルポリスVS阿倍仲麻呂 後編
文字数 3,094文字
「京八流の奥義を見せてやる」
と、息巻いて攻撃する鬼一であるが、阿倍仲麻呂は次々と大量の式神を出して襲いかかって来るので、防ぐだけで精一杯であった。
「このままでは、らちがあかんな」
安倍も同じく、大量の式神を相手にしており、さすがに疲れが出て来ている。
「拙者のピーグルアイで、あいつの弱点を見つけるでござる」
メイド少女戦士マリリンは再びピーグルアイを使った。
「こっ、これはっ!」
「どうした虎之助。なにか、わかったのか?」
「猫の式神が、うじゃうじゃ居るでござる。あいつらが大量の式神を呼び出すのを、手伝っていたのでござるな」
「なるほど。一人であれほど多くの式神が出せるのは、おかしいと思っていた」
と、納得した安倍であるが、大量の式神が襲って来ることには変わりない。
「拙者の手裏剣で、皆殺しにするでござる」
「猫まで、かなり距離があるが出来るのか?」
「確かに、ちょっと遠いでござるな」
そう思案していると、突然、式神が次々と消えて行った。
「なにが起こっているのだ」
良く見てみると、猫の式神たちが、何者かに炎で燃やされているではないか。
「なに奴じゃ!」
阿倍仲麻呂が叫ぶ。
「我らは、処刑鬼隊である」
川島と処刑鬼隊のメンバーが揃っており、阿久良王が口から炎を吐いて、猫たちを焼き払っている。
「鬼どもか」
「阿倍仲麻呂、死んでもらうぞ」
川島が合図すると、処刑鬼隊が一斉に襲いかかった。
「ちっ、邪魔しおってクズどもが!仕方が無い、今日のところは一旦引くか」
阿倍仲麻呂は宙に浮かぶと、飛び去って行く。
同時に闇の結界も解けて、周囲が明るくなって来た。
「逃さんでござる」
メイド少女戦士マリリンは魔法セーラー戦士ポピリンに変身すると、空飛ぶホウキにまたがり、阿倍仲麻呂を追って行く。
「ひつこい奴だな」
阿部仲麻呂は、ポピリンを迎え撃つ態勢に入った。
「じっちゃんの顔にかけて、お仕置きするでござる」
ーーじっちゃんの顔にかけて、ってどういう事だ?ーー
一瞬、阿倍仲麻呂に、スキができた。
「この毒饅頭を食べるでござる」
魔法セーラー戦士ポピリンは、阿倍仲麻呂の口に毒饅頭を突っ込んだ。
「うわっ!こいつ何しやがる!」
毒饅頭を食べさせられた阿倍仲麻呂は、そのまま地上まで落下して行く。
2人の様子を、見ていた安倍や処刑鬼隊は、落下地点まで駆け寄って来た。
「うわーん!左近さん!」
小太郎は倒れている阿倍仲麻呂を、泣きながら抱き起こそうとしている。
「大丈夫でござる。毒の量を少なく調節したので、まだ死んではござらん」
「ほんまでっか!良かった」
喜ぶ小太郎。
「でも、もうすぐ死ぬでござる」
時間が掛かるが結局は、毒がまわって死ぬようである。
「うわーん!左近さん!!」
小太郎が、また泣き出した。
「どうします、安倍さん」
鬼一が尋ねる。
「殺すつもりでいたが、こうなったら仕方がない」
安倍が気を込めて、みぞおちに掌底を打つと「ゲホッ!」と、阿部仲麻呂は饅頭を吐き出した。
「とりあえず、警察病院に搬送しよう。もしかしたら左近だけでも助かるかもしれん」
安倍は、スーツのポケットから、スマホを取り出しながら言った。
「姉さん、どうしはりました?」
魔法セーラー戦士ポピリンは、横になってぐったりしており、小太郎が心配している。
「朝ごはんの途中で出て来たから、お腹が空いて動けないでござる」
「大変や!姉さんは空腹に弱いでっからなあ。何か食べ物はないかなぁ?おや、こんな所に饅頭が。姉さん、この饅頭を食べるんや」
小太郎は饅頭を、ポピリンの口に押し込んだ。
バキッ!!
「うへーっ!」
小太郎はポピリンに殴られて、ぶっ飛んだ。
「これは、拙者の毒饅頭でござる!またしても、小太郎に毒殺されかけたでござる」
ポピリンは、フラフラになりながらも激怒している。
「あの2人、また何かやってますけど?」
鬼一は、小太郎とポピリンが気になるようだ。
「あいつらは、しばらく放っておこう。それよりも、あの鬼ども、どうやら我々と戦う気は無さそうに見えるが」
安倍は鬼たちの様子を、うかがっている。
「そういえば、処刑鬼隊と名のる奴ら、こちらに向かって来ませんね」
「いや、一人やって来るぞ」
川島が、一人で近づいて来て
「君たちに提案がある」
ち、安倍に話しかけて来た。
「なんだと」
ーー鬼からの提案だと。こいつらは狡猾だから、気を付けないとーー
一応、安倍は警戒を解ずに聞くことにした。
「我われ、大阪鬼連合団体は『国際電器保安協会』を倒すまで、君たちと休戦したいのだが、どうだろうか?」
と、意外にも休戦を持ちかけて来た。
「そういう事か。状況を考えると悪くない話だが、俺の一存では決められない。一度、上司と相談したいのだが」
安倍は即答を避けた。
「君は、わかって無いな。上司が了承する訳ないだろ、俺も上司には言っていない、京都の鬼神が休戦など許すはずないからな。『国際電器保安協会』を倒すまで、俺と君だけの休戦だ」
ーー実は休戦の発案者は、上司の鬼塚なのだが、ここはこういう事にしておこうーー
「なるほど、大阪限定の一時的な休戦か。わかった、良いだろう」
「安倍さん、鬼の言う事など信用して良いんですか?」
鬼一は、川島のことを信用していない。
「仕方あるまい。今の我われでは、ブラフマーを倒す事すら難しい、鬼まで相手をする余裕は無い」
「それに、君の部下の2人は、そこで倒れているぞ」
川島が指さす方向には、ポピリンに殴られて失神している小太郎と、空腹で倒れているポピリンがいた。
ーー2人は倒れているし、自分と安倍さんは、かなり疲労している。仕方がない、今日のところは和睦するかーー
しぶしぶ、鬼一も同意した。
川島は会社に戻ると、DSPと休戦した事を社長の鬼塚に報告した。
「よくやった、これでやっと本業の会社経営に専念できるな」
鬼塚は満足げである。
「DSPの連中は良いとして『国際電器保安協会』への対応は、どうします?」
「そんなん、DSPに任せとこや」
「そういう訳には、いかないでしょう」
「でも、俺も忙しいし。ゴルフや家族と温泉旅行にも行かなアカンしぃ」
「そういえば、私も以前から妻に、ヨーロッパ旅行に連れて行く約束してましたわ」
「そやろ。俺らも、給料分は働いたんやから、少し休養しようや」
「そうですね」
という具合に、大阪鬼連合団体の幹部は、のんびりと休養に入ることにした。
鬼たちが呑気に休養の話をしている頃、警察病院では安倍と鬼一が深刻な話をしていた。
「左近だけ助ける方法が、あるのですか?」
鬼一は、出来ることなら左近の命は助けたい。
「それが出来るのは、芹沢さんだけだな」
「あの、京都DSP[デビルスペシャルポリス]の芹沢さんですか!」
鬼一は驚いた。
京都DSPには、新選組の初代局長を努めた芹沢鴨がいる。
しかし、芹沢鴨の性格は凶暴・凶悪であり、あまり関わりたく無い人物である。
「京都に居る兄の話では、芹沢さんが治癒やお祓いの達人らしい」
「では、左近を京都で治療するのですか?」
「それしか無いだろう。わざわざ芹沢さんが大阪まで来ることなど考えられん」
「それもそうですね」
結局、他に選択肢が無いため、左近は京都DSPで治療を受ける事となる。
大阪市内の高級ホテルの一室では、リンゼイ老師とアーナブ、マニッシュの3名は完全に復活していた。
「創造主に逆らうと、どうなるか思い知らせてやるわ」
「あの小娘だけは、絶対に許せません!必ず殺します」
「ライアンとマーゴットにも連絡して、一気にDSPを殲滅しましょう」
3人は、DSPへの復讐に燃えていた。
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