第95話 闇の帝王の復活
文字数 2,381文字
「あーっ、よく寝た」
虎之助のクロクカウンターを受けて、失神していた鬼塚が、やっと目を覚ました。
「なんや、懐かしいムーヤンの夢を見ていたわ」
鬼塚が立ち上がると、川島と虎之助、ラスプーチンが何か揉めているようである。
「お前ら、なに揉めてんねん。喧嘩はやめい」
鬼塚が3人の中に割って入ると
「おのれは、まだ寝とれ」
バキッ!
いきなりラスプーチンに頭部を殴られた。
「いてっ、なにするんや、この野郎!」
怒った鬼塚はラスプーチンに殴り返す。
ボコッ!
「やったな、この負け犬が」
「負け犬やと、俺は誰にも負けたことは無いで」
「なんだと。さっき、この娘にKOされてたじゃないか」
ラスプーチンが虎之助を指さして言った。
「そんなん知りまへんな。確か、この娘にパンチを打ち込んだと思った直後から、しばらく記憶がないけど、まさか俺がこんな女の子にノックアウトされる訳ないやろ。アホかお前は」
虎之助に頭部を殴られたせいで、鬼塚は軽い記憶喪失になっている。
「いや、アホはどうみても、お前やろ」
ラスプーチンは呆れて言った。
「なんやと、このアホ阿呆ロシア野郎」
「やるか!駄目だめアホ鬼」
ラスプーチンと鬼塚は殴り合いを始めた。
ーーラスプーチンが社長に気を取られている。今がチャンスだーー
川島は虎之助を抱えると、全速力で走り出した。
ーー社長は、放っておいても勝手に帰って来るだろう。とりあえず、この娘を夜叉さんの所まで届けなければーー
「ああっ、モットプールが、もうすぐ復活するのに」
川島に連れ去られながらも、虎之助はモットプールのことが気になっている。
しかし、川島は無視して走り続けた。
「あっ、しまった。あの娘が、お前の部下にパクられた」
虎之助が川島に連れて行かれた事に気付いたラスプーチンは、追いかけようとするが
「待てや、俺との勝負がまだ着いていないぞ」
と、鬼塚に腕を掴まれてしまった。
「はなせ、カス鬼」
ラスプーチンは鬼塚を振り切ろうとする。
「離さへんでぇ、ロシア野郎」
ラスプーチンを引き止めるために、鬼塚は腕を離さない。
だが、その鬼塚も背後から何者かに腕を引っ張っられた。
「誰や」
鬼塚が振り向いてみると、モットプールであった。
「うわっ!なんやコイツ」
復活したモットプールであった。
「お前たち鬼は、皆殺しにしてやる」
モットプールは、虎之助の指示を忠実に守り、鬼である鬼塚に攻撃してきたのである。
「なんや、機械みたいで気持ち悪い奴やな」
鬼塚はモットプールを不気味がっている。
「鬼は殺す」
バキッ!
モットプールのハイキックが、鬼塚の頭部にクリーンヒットした。
「痛てっ!この機械野郎、ブチ殺す」
怒った鬼塚とモットプールが戦い出した。
「そいつは、あの娘が召喚したサイボーグのモットプールだ。お前はしばらく、そいつの相手でもしてろ」
ラスプーチンは、そう言うと川島を追いかけて行く。
「クソっ、ラスプーチンの奴。こいつを片付けたら必ず殺したる」
とは言ったものの、復活したモットプールは、なかなか手強い。
ハイキックとミドルキックを織り交ぜて、まるでキックボクサーのように攻撃して来る。
「キックボクシングなら負けへんで」
鬼塚は跳躍すると、膝をモットプールの顔面に打ち込んだ。
バギッ!
「みたか、俺の必殺、真空飛び膝蹴りや」
鬼塚は勝利を確信した。
「そんな攻撃、私には通用しない」
しかし、モットプールにダメージは全くなかった。
「機械の身体に蹴りは通用しないんか。ならば、こちらも召喚術を使わしてもらうで。冥府から、ムッチャ強い魔物を召喚したる」
鬼塚は呪文を唱えだした。
すると地面から大量の煙が吹き出し、中から一人の男が現れた。
男は青白く不気味な顔をしており、黒いマントを羽織っている。
「なんか強そうな魔人が召喚できたで」
鬼塚は召喚術が成功したので喜んでいる。
「お前が吾輩を蘇らせたのか?」
黒マントの男が尋ねてきた。
「そうやで。さっそく、あのサイボーグを殺ってくれや」
「吾輩に命令するとは、命知らずな男だ。吾輩は闇の帝王ボルデ本山であるぞ」
なんと鬼塚は、闇の帝王であるボルデ本山を蘇らせてしまったのである。
「そうでっか。ほな、本山はん、早いとこ、このサイボーグを殺ってんか」
「だから、吾輩に命令するなって言ってるだろ!」
ボルデ本山が怒りだした。
「そんなん、どうでも良いから、早くサイボーグを殺ってくれや。蘇らせてやったやろ」
「まあ、確かにお前には恩があるな。吾輩は紳士だから、きちんと恩は返す」
ボルデ本山は
「アブラアゲ・カタカッタ・アンマリ・オウシクナカッタ」
と唱えながら、モットプールに向かって杖を振りかざす。
すると、たちまちモットプールは一羽の白い鳩へと変化して、空高く飛び去って行った。
「うわっ、凄い手品やな。どんな仕掛けなんや?」
鬼塚はボルデ本山に駆け寄り、杖を調べている。
「これは手品じゃなくて魔法じゃ!タネも仕掛けもないわ、失礼な奴じゃな」
鬼塚は、ボルデ本山に叱られてしまった。
「そうでっか、えらいすんまへん。それにしても良い杖でんなぁ」
鬼塚は謝りながらも、杖をマジマジと見ている。
「これはコストリの杖といって、魔法界で最強の杖じゃ」
「へえ、ニトリで買ったんでっか?」
「バカを言うな、そんな既製品では無いわ、ドラゴンのヒゲで作られた物じゃぞ」
失礼な事を言われてボルデ本山が怒った。
「あっそうや、もう一人、あんたに殺って欲しい奴がいるんやけど」
ボルデ本山が怒っている事など、まったく気にしていない鬼塚はラスプーチンのことを思い出した。
「そいつは、どこにいるんじゃ」
「さっき、あっちの方へ走って行ったから、追いかければ、まだ間に合うハズや。行きまひょか」
という訳で、鬼塚はボルデ本山を連れて、ラスプーチンを追いかけるのであった。
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