第99話 舞妓さんVSチェルノボーグ

文字数 2,544文字

 鬼塚(おにずか)とボルデ本山(もとやま)が、レストランでウォッカを飲みながら楽しく食事をしていると、ロシアン美女に付き()われた血まみれのポリヤコフがやって来た。
「ここに居たのか。(さが)したぞ鬼塚」
「なんや見たことがあるロシア人やな、誰やったっけ?」
「俺だ、ポリヤコフだ。夜叉(やしゃ)さんに、お前のガードを(たの)まれて来た」
「俺のガードって、アンタ血まみれで死にかけとるがな」
「さっき舞妓(まいこ)さんに()されたんだが、俺の治癒(ちゆ)能力で傷はふさがったから大丈夫と思う」
「ロシアで、舞妓(まいこ)さんに()される事なんかあるんか?」
「俺も聞いたことが無いけど、ラスプーチンが連れている舞妓(まいこ)さんが、やたら強くて殺されかけた」
「ほんで、その美女はお前の彼女か?」
「いや、この女性(ひと)舞妓(まいこ)さんに召喚(しょうかん)されたそうだ」
 ポリヤコフは席につくと、鬼塚のウォッカを一気に飲み()した。
「ラスプーチンが連れている舞妓(まいこ)さんって、たぶんDSPの小娘やな。その小娘を夜叉(やしゃ)さんの所に連れて行かなアカンねん」
 鬼塚は、今までの経緯(けいい)をポリヤコフに説明した。
「いや、指令(しれい)が変わった。お前はチェルノボーグと対決するんだ」
 ポリヤコフが指示(しじ)の変更を伝える。
「なんだと。今、チェルノボーグと言ったか?」
 ボルデ本山が(おどろ)いて聞きなおす。
「言ったけど」
「チェルノボーグって黒い神と呼ばれる、ロシアの破壊神(はかいしん)じゃないか。(ふう)じ込められたと聞いているが、まさか(よみがえ)ったのか?」
(よみがえ)ったけど」
「それは大変だ。チェルノボーグが相手では、鬼塚に勝ち目は無いぞ」
「無いけど」
バタンッ!
 ポリヤコフが椅子(いす)ごと倒れた。
「大丈夫?ポリヤコフ」
 心配してロシアン美女が()き起こす。
「ううっ、どうやら出血が多すぎたようだ」
 ポリヤコフは出血多量で、死にかけている。
「そんなんじゃ、俺のガードどころじゃないで」
吾輩(わがはい)が鬼塚のガードをするから、お前は病院へ行け」
 さすがに、鬼塚とボルデ本山は心配して、病院に行くことを(すす)めた。
「すまねえ。とりあえず、お前はラスプーチンたちと協力して、チェルノボーグから身を守るんだぞ」
「わかった。それで、ラスプーチンは、どこに居るんだ?」
「この先にある『おかめ食堂』だ。じゃ、俺は病院に行って来るから」
 よろめきながらポリヤコフが席を立つ。
「心配だわ、早く病院に行きましょう」
 と、元モットプールのロシアン美女に付き()われて、ポリヤコフは行ってしまった。
 

 鬼塚とボルデ本山は『おかめ食堂』でラスプーチン達と合流した後、チェルノボーグが目撃(もくげき)されたというモスクワ郊外(こうがい)のホテルまで来ていた。
「どこにチェルノボーグが居るんや」
 ホテルの玄関で、鬼塚がラスプーチンに聞いた。
「政府からの情報だと、ここで間違(まちが)いないんだが」
 ラスプーチンは、あたりを見回している。
「あそこに居るどすえ」
 まめヤッコが言う方向から、若い男が歩いて来た。
 その男が首からかけている名札(なふだ)には『チェルノボーグ』と書いてあった。
「お前がチェルノボーグか?」
 男に近づいて、とりあえずラスプーチンが(たず)ねてみた。
「だったら何なんだ。あんたらに関係ないだろ」
 不機嫌(ふきげん)そうに男が答える。
 なぜ、名札(なふだ)を付けているのかは永遠(えいえん)(なぞ)であるが、チェルノボーグであることは間違(まちが)いないようだ。
「関係はある。政府の命令だ、死んでもらう」
 ラスプーチンは聖剣エクスカリバーを取り出すと、チェルノボーグに()りかかった。
 チェルノボーグは軽くかわすと、右ストレートをラスプーチンの顔面にたたき込む。
バコッ!
「クフッ」
 ラスプーチンは倒れ、そのまま気を失ってしまった。
 一撃(いちげき)でラスプーチンを倒すとは、かなりの戦闘能力(せんとうのうりょく)である。
「チェルノボーグ、やはり強いな。吾輩(わがはい)の魔力を(ため)してみるか」
 ボルデ本山が(つえ)を振りかざしながら呪文(じゅもん)(とな)えた。
「アブラ・アゲ・アブラクサイ」
 強烈(きょうれつ)な光の(かたまり)がチェルノボーグを(おそ)う。
ガシッ
 しかし、チェルノボーグは片手で光の(かたまり)を受け止めると、(にぎ)りつぶしてしまった。
「なんと、(すさ)まじい男だ」
 (おどろ)くボルデ本山。
舞妓(まいこ)はん、アイツをやっつけてくれへんか」
 ビビった鬼塚が、まめヤッコに(たの)んで来た。
「しょうがおまへんどすなぁ」
 まめヤッコは短刀(たんとう)を持ってチェルノボーグに向かって行く。
「次は日本の芸者(げいしゃ)さんか。短刀なんかで俺を倒すことは出来んぞ」
 チェルノボーグは、やれやれといった表情をした。
「そんな事は、ないどすえ」
「無理だって言ってるだろ」
「スキあり!」
 と、スキも無いのに、まめヤッコは短刀でチェルノボーグの心臓(しんぞう)突刺(つきさ)そうとした。
ガシッ
 当然のことながら、チェルノボーグに、(うで)(にぎ)られ止められてしまう。
「俺にスキなど無い」
「スキは、あるどすえ」
 (うで)(にぎ)られてもかまわず、まめヤッコは力ずくで心臓(しんぞう)突刺(つきさ)そうとして来る。
「うおっ、なんて力が強い(むすめ)だ」
 チェルノボーグの方が、力負(ちからま)けしているようだ。
拙者(せっしゃ)のパワーは1000万ボルトどすえ」
「うおっ!パワーの単位は間違(まちが)えてるが、とにかく(すご)い力だ」
 チェルノボーグの心臓(しんぞう)に、まめヤッコの短刀(たんとう)(せま)って来る。
ズボッ!
 ついに、チェルノボーグの心臓に短刀が()()さった。
「やったか」
 鬼塚は固唾(かたず)をのんで、2人の戦いを見ている。
 しかし
 (むね)に刺さった短刀を、チェルノボーグは何ごとも無かったように、スッと抜いて投げ捨てた。
「痛いなぁ、なにすんだよ」
 チェルノボーグには、まったくダメージが無さそうだ。
「パワーを使ったから、お(なか)()ったどすえ」
 まめヤッコは着物の(そで)から『不潔(ふけつ)ジジイのネチャネチャ焼き』と書いてあるお菓子(かし)(ふくろ)を取り出すと、ネチネチと食べ始めた。
「ちょっと舞妓(まいこ)はん、そんなん食べてんと、やっつけてや。アイツ全然こたえてへんで」
 鬼塚が(あせ)って言った。
「そない言うなら、アンタはんがやりなはれ」
「俺は無理や」
 (ことわ)る鬼塚。
「なんで、どすか?」
(こわ)いからや」
 鬼塚は、本当のことを正直に答えた。
「使えんどすなぁ。ほな、ウチの代わりに、お菓子(かし)でも食べときなはれ」
 まめヤッコは、お菓子(かし)の袋を鬼塚に渡すと、チェルノボーグに向かって行った。
 その姿を鬼塚は『不潔(ふけつ)ジジイのネチャネチャ焼き』を、ネチャネチャ食べながら
ーーなにこれ、ムッチャまずいし、ネチャネチャしてるやんーー
 と思いながらも、まめヤッコの戦いを見守るのであった。
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登場人物紹介

唐沢虎之助(からさわとらのすけ)


 自称、最強の忍者。

 なぜか、妹の千代(ちよ)の姿で転生した。

 千代とは違って、バストはAカップである。

左近(さこん)


大阪DSP(デビルスペシャルポリス)のリーダ

武士の生まれでプライドが高い。

正義感が強く真面目である為、虎之助とは相性が合わない。

岩法師(いわほうし)


大阪DSPの転生者。

元僧侶であり法力を使う大男である。

意外と優しい。

小太郎 


大阪DSPの転生者

自称、剣豪である。

武士の出であるが、ときどきプライドが低くなる

虎之助と行動する事が多い。

狂四郎


大阪DSPの転生者

仙道師であり、アホでもある。

不必要にイケメンである。

安倍顧問(あべここもん)


大阪府警のDSPの顧問。

安倍晴明を先祖に持つ、安倍一族の末裔《まつえい》である。

桜田刑事


大阪府警のDSP担当刑事

イケメンが好きである。

女性同士ということで、虎之助の面倒をみる事になるが、あまり気が合わない。

普段は自分の事を「あたい」と呼ぶが、本編では「あたし」と言うように、心がけているらしい。

鬼塚(おにずか)


大阪の鬼のトップであり、大会社の社長でもある。

真冬にセミ取りに行くほどの、強者である。

川島


鬼塚の腹心の部下

鬼族のエリートである。

ワサビ入りの寿司を食べるほどの、強者である。

黒瀬(くろせ)


鬼武者の中でも、トップクラスの戦闘力を持つ鬼。

いつも、虎之助におごらされている。

彼女が欲しいとの願望が強いが、悲しいかな、親しい女性は虎之助のみである。

バビエル


国際電器保安協会アメリカ支部のエージェント

非常に高い戦闘力を持ち、愛国者である。

明るく、誰からも好感の持てるナイスガイ。

ライアン


国際電器保安協会アメリカ支部のエージェント

優秀なエージェントで、相手の戦闘力を見極める能力がある。

マーゴット


国際電器保安協会アメリカ支部のエージェント

ライアンのパートナー

タコ焼きが好きである。

小太郎に付きまとわれて迷惑している。

ラスプーチン


国際電器保安協会ロシア支部の司令官

性格は残虐であり、生贄が大好き。

機械に強く、ハイテクロノジーを使いこなせる。

ジョイマンのファンである。

アンドロポプ


ラスプーチンの部下

凶暴・凶悪な性格の大男。

ハリウッドザコシショウのファンである。

宇宙人オーソン


たまに地球を訪れる宇宙人。

ハリソン・フォード


「スターウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「エアフォースワン」「ブレードランナー」等の大作映画に出演した、米国を代表する俳優である。

本編に登場する予定は無い。

レジナルド・スミス


全てが謎の男

英語がペラペラである。

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