第57話 アポロン
文字数 2,308文字
虎之助と小太郎は、武蔵を連れて心斎橋に来ていた。
何故かというと、武蔵が大阪の繁華街の様子を見ておきたいと言いだしたので、鬼一から案内を頼まれたのである。
「ギャルがたくさん居て、テンション上がりまくりっス〜」
武蔵は初めて大阪の繁華街に来て興奮している。
「ここが若者のファッション最先端の街、アメリカ村や」
「やっぱり、そうなっちゃうワケね」
武蔵は、変な口調で感激している。
「今日は、ライアンが居ないでござるな」
いつもの公園にライアンが見当たらないので、タコ焼きを奢って貰うつもりであった虎之助は、当てが外れてしまった。
「ほんまでんなぁ。でも、あそこにライアンの友達のロシア人がいまっせ」
小太郎がアンドロポプを見つけた。
「ホントでござる。一緒に居る男も、関空で会った事があるでござる」
アンドロポプと一緒に、ペガサスも居る。
「敵なら、この僕が殺っちゃいます」
そう言いながら、武蔵は刀を抜く。
「待つんや武蔵。あのロシア人は敵やけど、知り合いや」
小太郎が制止する。
「オー、ハピネス〜。お友達でしたかぁ」
「いや、友達では無い」
「なら、殺っちゃう?」
「今はダメでござる。いつもと違って動きが怪しいので、付けてみるでござる」
「そうでんな、なんか企んでるかも知れまへんな」
「やっぱり、そうなっちゃうワケ」
武蔵は不服そうであるが、3人でアンドロポプを付ける事にした。
「ここは、どこじやろう?」
「クロノスの奴、よくわからない所に飛ばしやがって」
ゼウスとハーデースが、自分たちが送られた場所の確認をしていると
「おーい、ゼウス」
と、大声を出しながら、ポセイドンとヘスティアーがやって来た。
「なんじや、お前らも、ここに飛ばされて来ていたのか」
「いやぁ、いきなり飛ばされて参ったよ」
頭を掻きながら、ポセイドンが近づいて来る。
「ワシらも同じじゃ、戦う間もなく飛ばされてしまった」
「いったい、ここはどこなんだ」
ハーデースは、場所を確認するため、両目を閉じて額にある神眼を使った。
「おおっ、ハーデースが3つ目に」
「ゼウス。アンタいちいち、うるさいよ。少し黙ってな」
ゼウスは、ヘスティアーに怒られてしまった。
「だんだん見えてきたぞ。近くに木星が見える、おそらくココはガニメデだ」
「ガニメデですって」
マーゴットが驚いて声をあげた。
「そんな所から、地球に戻れるのか?」
ポセイドンも不安そうである。
「ガニメデといえば、確か木星の衛星ですよね。ハーデースさん、何とかなりませんか?」
ライアンは、一番、頼りになりそうなハーデースに尋ねた。
「俺一人では無理だが、ゼウスとポセイドンの力を合わせれば、どうにかなるかも知れんが」
「やっとワシの、かめはめ波の出番じゃな」
ゼウスが腰を低く落とし、かめはめ波の体制をとった。
ボカッ!
「だから、お前は、かめはめ波なんて出せないだろ」
また、ハーデースに殴られた。
「やってみないと、わからんじゃろ」
「もし出たとしても、今は役に立たねえんだよ」
ハーデースはキレそうになっている。
「ハーデースの『冥界波』で冥界に行けないかしら」
と、ヘスティアーが提案する。
「それが、遠すぎて『冥界波』が出ないんだ。クロノスの野郎は、そのことも計算済みで、ここに送りやがったんだ」
「そういえば、アポロンはどこだ。姿が見えないが」
「俺と一緒で、黒服たちから、うまく逃げたんだと思いますよ」
ライアンが答える。
「なるほど。では、ワシの神波通信で、連絡が取れるかも知れん。地球に居るアポロンと連携すれば、帰る手立てが見つかるかもな」
ポセイドンが目を閉じて、額の神眼を使った。
「おおっ、ポセイドンが3つ目に」
「うるさい!ゼウス。いちいち言わなくて良いのよ」
またゼウスは、ヘスティアーに怒られてしまった。
その頃、ペガサスとアンドロポプは、木の枝に引っかかっているアポロンを見つけた。
「あれは、アポロンさんですよ」
「全然、動かないけど、死んでるんじゃないか?」
「アポロンさんは、ギリシャ本部でもトップクラスの回復能力の持ち主です。そう簡単には死にませんよ」
「じゃ、気を失ってるのかな」
アンドロポプは石を拾って、アポロンに投げてみた。
「いてっ」
石は、アポロンの頭に直撃した。
「アポロンさん」
と、ペガサスは声をかけてみる。
「なんだ、ペガサスじゃないか。隣の男は誰だ?」
アポロンは、気が付いたようだ
「ロシア支部のアンドロポプさんです。一緒にゼウス様を探していたんですよ」
「ゼウス様も居なくなったのか?」
「ハーデース様もヘスティアー様も行方不明なんです」
「ライアンとマーゴットも居ないんだが、アンタなにか知らないか?」
アンドロポプは、ライアンたちの事を心配している。
「みんな、居なくなったんだな。ちょっと待ってろ、そっちに行くから」
ドスン!
アポロンは木から降りようとして、地面に落ちた。
「いててっ。ケツが痛い」
痛そうに、お尻を擦るアポロン。
「お尻から、落ちるからですよ」
「尻から落ちるのが、俺のスタイルだ」
アポロンは強がっているが、ペガサスとアンドロポプに笑われてしまった。
「ところで、なんでアンタ、あんな所に、ぶら下がってたんだ?」
最初から気になっていた事を、アンドロポプが聞いた。
「ポセイドンたちと一緒に居るところを、黒服の男に囲まれたんで、ヤバいと思って、おもいっきり跳躍したら高く飛びすぎてしまい、この木の枝に落下したようだ」
アポロンは胸を張りながら自慢げに答える。
ーーなんだ、こいつ、跳躍の凄さを自慢しているようだが。自分の間抜けさに気付いていないのかよーー
と、あきれるアンドロポプであった。
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